私が私として出来ること
「これで、良かったんですかね……」
美香さんの背中を見送った後、お店の中に戻る前にそんな言葉がふと溢れた。
「どういうこと?」
私の言葉を聞き取った黒がふり帰りながら問いかけてくる。
「すでに亡くなってしまった人の言葉を届けるってなんだか、正しかったのかなって思って。それってなんだか……」
「神様みたいだ~って?」
「そう、ですね」
そう、まるで神様みたいだって思った。そんなことをするのは人の身には余るんじゃないか、もしかしたら私はとても傲慢なことをしているんじゃないか。この力は本当に私が使っていても良いものなんだろうか。そんな事をどうしても考えてしまう。
「ん~、そうだねぇ。その心配は杞憂なんじゃないかな~って僕は思うよ?」
「どうしてですか?」
「だってそもそも本当に亡くなった人の言葉を届けているわけじゃないからね~。あくまでもヒナがやったことは思い出の中の彼の言葉を届けただけなんだよ。それにその思い出は美香さんの思い出なわけで。あれは美香さんがイメージする自分が弱っている時に彼が言ってきそうな言葉。なんだよ~」
「それって、あれはあくまでも美香さんの想像の産物で、私はそれのお手伝いをしただけだーってことですか?」
「まぁ、そうなるかな~。それに、彼岸の住人の言葉を本当に届けるなんて、それこそ僕たち神様にだって迂闊にできることじゃないからね~」
迂闊に出来ないだけで、やろうと思ったら出来ると暗に言われているようで私が一緒にいるのは本当に神様なんだと改めて認識すると同時に、少しだけだけれど人との感覚の違いを感じてしまった。
「あくまでも想像に過ぎない、かぁ」
「どうかしたの?」
「いえ、なんでもないですよ。そろそろ中に戻りましょうか」
「ん? そうだね~」
心の奥に芽生えた不安の影を見ないようにして、黒を連れてお店の中に戻るとミントちゃんとタイムくんが出迎えてくれて。
「主、お疲れさまでしたー」
「おつかれ」
「ありがとー!」
こちらを労ってくれる二人に抱きつくとその頭をもふもふと撫で回すと、もやもやとした心が穏やかになっていく。きっと、考えすぎても良くないだろうし、なによりも感覚が違ったとしてもそれは当然のことだと思う。それに、私がそばにいる間は変だなって感じたら私が都度その違和感を修正していけばいいんだ。私と黒はパートナーなんだから。
「さてと~。僕はちょっと主のところに行ってくるけれどお留守番をお願いしててもいいかな~?」
私がこれからのことを考えていると、唐突に黒がそんなことを言い出した。
「希望郷にですか? また突然ですね」
「ん~? ヒナの階梯が上がったから報告にね~。まぁ挨拶に行ってからすぐに階梯が上がるとは思ってなかったから主も驚くかもだけど~。まぁ、それだけヒナの適正が高かったってことで、僕の見る目があったってことだよね~?」
「私は私のことしかわかりませんけど、これって早いほうなんですか?」
「ん~、そうだねぇ。あんまり言うとヒナは調子に乗っちゃいそうだからあれだけど……。多分歴代で2番目に早かったんじゃないかなぁ」
「え」
「いや~。本当なんだよね~。だからこそ普段なら報告しないことだけど、報告に行かなくちゃいけないんだ~」
調子に乗りやすい自覚はあるけれど、そこまでだとは思ってなかったので正直面食らってしまって調子に乗る以前に反応が出来ませんでした。
「じゃあ、行ってくるね~」
「「お師匠行ってらっしゃーい」」
ミントちゃんとタイムくんに見送られて黒が扉を潜ってから、遥が作ってくれた夕食を四人で食べてた後は自室に戻って今日あったことを思い出しては思考をぐるぐると空転させる。
「あ~……。もうこれ一人で考えてても碌なことにならない気がするー!」
ベッドから勢いよく体を起こすと、ヘッドボードで充電されているスマホを手に取ると、メッセージアプリを起動して一件のメッセージを送信する。
「まぁ、真っ先に思いつく連絡先がこれってのもなんだかなぁーって感じですけどねー」
そんな私のつぶやきは誰に拾われることもなく枕に沈んでいった。
更新遅れましたごめんなさい! 寝てました!!!!




