私と、先代と、マスターのお仕事(6)
扉を抜けると視界いっぱいに空が広がっていて、私達の足元にも空が広がっていました。そう、足元にも、です。
「え、落ちっ――ない……?」
私は自分が潰れたトマトのようになるさまを想像しましたが、幸いにもその未来は回避できたようで。私の足元には空が広がっているのに、見えない板に乗っているように確かに足場があるのがわかりました。
「これは……?」
私が思わずそういうと、霞さんはくすくすと笑いながら。
「ヒナちゃん、ヒナちゃん。よく見て? 足元にうすーく道があるでしょう? だから落ちたりしないから大丈夫よ?」
「本当、ですか……?」
私は恐る恐る、足元を確認すると確かに薄く色づいた道のようなものが見えました。私はこれでも順応能力が高い方なはずなんですけどなんだか不思議な感覚に慣れずにてしてしと何度も足を踏みしめてみました。
「なるほど、強度も大丈夫なんですね」
その言葉を聞いていた黒が横で呆れながら。
「ヒナ……。それもしも足元が抜けてたらどうしたのさ?」
なんて言うものだから私はきょとんとしながら。
「その時はたぶん黒がなんとかしてくれたでしょう?」
なんてやりとりが出来るのも私が黒のことを信頼していて、黒も私のことを大切にしてくれていると分かっているからで。そんな信頼関係がどこか心地よくてくすぐったくて。私は今のこの関係がとても好きだなぁと思うわけで。
「そういえばこれ、薄く見える道の外に足を出したらどうなるんですかね?」
なんて、足を道の外に出そうとしたら……。
「「危ない!!」」
霞さんと黒の双方からものすごい勢いで止められました。どうやら、見えている道の外は本当に空中になっているようです。
「ね? なんとかなったでしょ?」
「ヒナ、足がものすごく震えてるけど?」
「これは、あれですよ、武者震い?」
「何と戦うの……」
そんなこんなで薄い道をしばらく進んでいくと、草原が見えてきました。
「さぁ、着いたわよ。ここが猫神の国。規模的には里って感じだけれどね。ようこそヒナちゃん。全ての希望が集まる場所、希望郷へ」
「希望郷……」
目の前に広がった色とりどりの花と、その花々がそのまま大きくなったような建物が並ぶその光景に私は見とれてしまいました。幼い頃に夢想したことがあるような光景が、現実として目の前にあると、感動よりも先に驚きが来るのだと知りました。
「さぁヒナ、行こう。主の住まいは向こうだよ」
「猫神の主、ですか。どんな人なんでしょう?」
黒に手を引かれて進む先には私の知らないことや物だらけで、私は心がわくわくに満たされていくのを感じるのでした。
今回は短い内容になってしまって申し訳ないです。
どうしてもここが区切りがよかったもので……。
今回もご覧下さりありがとうございました!




