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私と、先代と、マスターのお仕事(4)

私は短い回想を終えて、黒に一言。


「理由については聞いてましたけど、挨拶をする人がいるとかは聞いてないですね」


「あっ……」


 私がそう言うと黒も伝えていないことを思い出したのか、気まずそうな顔になって先代さんの方に振り向きました。振り向く動きがまるで錆で動きが悪くなったロボットのようで血の気が引い顔もその印象を強めました。


「黒……。どういうことかしら? 貴女もしかして猫神の主に一度は挨拶に行かなくちゃいけないことを伝えてないなぁんてことはないわよね?」


 先代さんの笑ってない顔も見慣れてきた気がします。私は他人事のようにそう考えながら、私はこの人を怒らせないように気をつけようと思いました。それはさておき。


「あの、先代さん。猫神の主に挨拶に行かないといけないってどういうことなんでしょうか? それに挨拶にいくとしてどちらに行けばお会いできるのでしょう?」


 私がそう問いかけると、それを聞いた黒はしまった、という表情になり部屋の窓から逃げようとしましたが、先代さんがそれを許さず捕まえながら説明してくれました。


「黒は説明してくれなかったみたいだから私が説明するわねー。猫神の主にかけらをあげてその呪いを解くってところまでは聞いたことがあるみたいだから省略するとして、主は呪いの影響でちょっと人の好き嫌いが激しくてね。負の感情が強いマスターの精製したかけらだと逆にのろいが進行してしまうの。だからまぁ所謂最終審査みたいなものね。で、猫神の主は猫神の国にいるわよ」


「なるほど、それで挨拶に行かないといけないのですね」


 そう言いながら私は少しだけ心配なことがあった。私は過去ことに向き合ったとはいえ、負の感情が無いわけでは無い気がするのだ。その私が精製したかけらで果たして猫神あの主の呪いに効き目があるのだろうか。

 私がそんなことを考えていると先程まで折檻を受けていた黒がやっと開放されて私の眼を見ながら話しかけてくる。


「大丈夫だよヒナ~。君はもう負の感情に向き合った。だから君はもう前みたいに負の感情に飲まれたりはしないよ。僕たちはもう独りじゃない。僕にそう言ってくれたのを覚えてるでしょう?」


 私が黒にいった言葉を引用されてなにやら照れくさくて頬をぽりぽりとかく。


「まぁ、それなら良いのですが。でも猫神の主に会うっていってもどこにいるんですか? 私海外とかだと持ち合わせがあまり無いので厳しいのですが……」


 私がそう言うと先代さんはくすくすと笑って。


「大丈夫海外というか世界ごと違うから。マスターなら誰でもどこからでも入れる世界。旅費の心配はいらないわよ。あぁ、それと、私のことは先代さんじゃなくて霞さんって呼んで頂戴ね。なんだか先代だと他人行儀で寂しいわ?」


「あ、すみませんでした。では、霞さん。私達マスターならどこからでも入れるって言うのはどういうことでしょうか? 記憶の原野に入るときみたいになにか手順があったりするのですか?」


 私がそう霞さんに聞くと、霞さんは首を振りながら応えてくれました。


「ちょっと違うか知らね。マスターになって最初の仕事をこなすと、契約している猫神から鍵が渡されるんだけれど、その鍵を右に回すと猫神の世界に行けるの。それで、帰ってくる時は左に回すと帰って来れるわ。ヒナちゃんはもういくつかお仕事をこなしているみたいだし、鍵はもらっていても不思議じゃないんだけれど……?」


 私と霞さんがそろって黒の方を振り向くと、黒が頭を下げて両手を差し出している状態で固まっていました。その手の上には鍵が乗っていて……。


「あのね、違うの聞いてほしいの。忘れてたとかじゃなくて、ヒナはとても感受性の強い子で、人からの悪意に対してトラウマを抱えていたからもう少し仕事をこなしてもらって、それでもしも途中で嫌になっちゃったら、あまり深く事情を教えてしまうのも戻れなくなって可愛そうだと思って渡してなかったの。これは本当だし、今でもそう思ってる。でも、ここまで話しちゃったから選んでほしいんだ。この先も続けてくれるなら、僕と一緒にお仕事をしてくれるならこの鍵を受け取って欲しい。もしも、無理なら……」


 私は黒が言い切る前に鍵を差し出された手のひらから受け取ると、笑って言ってやりました。


「私達はもう友達で、家族じゃないですか。今更独りになんてしませんよ。それともなんですか? 私のことをそこまでん信用してくれていなかったんですか? いやぁ、悲しいですね。なんて。黒が心配してくれていたのもわかりますけど、私ももう子供じゃないんですから、大丈夫ですよ。もしも私が迷った時は黒が一緒に歩いてくれるんでしょう?」


 にししと笑って締めくくると、黒が珍しくほうけた表情になって、かと思ったら涙目になって私に抱きついてきました。


「ヒナー! やっぱり僕が選んだだけあって最高のマスターだったよー! 大好き! そうだよね、もう家族みたいなものだもんね。私もヒナが困っている時は必ず助けるから。悩んでる時は一緒に考えるからね!」


 私達が二人で盛り上がっていると、咳払いが一つ聞こえて。


「こほん、元ここのマスターの私もいるんですけれど?」


 私と黒は一瞬視線を交差させると霞さんにも抱きつきにかかるのでした。

更新ちょっと遅くなっちゃいましたすみません!

今回も読んでくださったことに感謝します!

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