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学校へ行こう3

「きららさん大丈夫ですか?」

きららはこける事は避けたが、吹き飛ばされてしまった。

トイレから出てきたのは同じクラスの弐頃武士ナイトと、その連れの数名。

「なに?転校早々、隠れてイチャついてたのやるね。」

きららは睨みつけるが、武士は嫌味な笑顔をし、おちょくるように周りはそれに合わせる様に下品なヤジを飛ばす。

「いやー、見られちゃいました。すみません、モテるんで。」

「ちょっと!」

その嫌味を全く意に介さず、勇騎は笑顔で嫌味感なく、嫌味を言い返す。

「否定しているよ。引きこもりの根暗が。」

「そうなんですよ、登校拒否だったんですけど、俺が来るからって出てきてくれてまさに愛。っていう奴ですか。」

「あんた、いい加減にしなさいよ、マジで殺すわよ。」

「ほら、こうやって照れ隠しして、すみません。どなたか分かりませんが、彼女恥ずかしがり屋さんなんで皆には黙っておいてもらえますか。」

誰だかわからない。その言葉に武士の琴線に触れたようで。勇騎に近寄る。

「お前と同じクラスの武士ナイトだ、覚えとけよ。転校生だからって調子に乗んなよ。」

弐頃武士。父親がこの地域の土地成金の小権力者の一人息子。親がPTAの会長をしていることもあり、また、曲がりなりにも地域限定で好き勝手をする父親の悪影響をもろに受け、性根が捻じ曲がり育った。

上級生でも、先生であっても。自分のいう事を聞かない相手は許さない。

「調子には乗ってないでしょ。そうだギブアンドテイクでどうです?俺たちの逢引を見逃してくれれば、タバコの事黙っておきますよ。においますよ。ガムいります?」

そういうとくしゃくしゃになった板ガムをポケットから取り出す。

「いらねぇよ。俺がタバコ吸ってるからってなんだよ。文句あるのか?」

「俺タバコ嫌いなんですよ。ダダでさえくさいあなたの息がさらに臭くなる」

勇騎は笑顔で喧嘩を売る。

取り巻きを含め、その言葉にオラつき出し、首元を持ち上げようとするが、持ち上げるどころか、勇騎はびくともせず、前に引っ張られる事すらない。

「まぁまぁ、落ち着いて、ね。」

そういうと勇騎は武士の手を掴み、血流が止まる程の握力でいとも簡単に払いのける

力が違う。勇騎は全力など出してはいない。この程度の事を当たり前にできるのだ、武士はこの転校生が身体的能力では自分のある価格上だという事を否応なく理解させられた。

「やんのかこら」

とおら着く取り巻きにも勇騎は少しも動じない。むしろ、この懐かしい不良感がいまでも生きているという事に思わず、笑いがこぼれてくる。

元々勇騎は身体能力に恵まれ、その上で体を鍛え、相手を屈服させる技を持っている。

勇騎は不良ではないが、喧嘩が大好きだ。殴るのも、殴られるのも大好きだ。

もちろん自分から手を出すことはないが、相手に手を出させたいという衝動を抑えられない。だからこの状況もきららからすれば戦々恐々の怖い状況だが、

勇騎にしてみれば臨んだ状況であり、これから彼らの愚行に期待をしている。しかし、

「やんのかこら、」

「おい、なめんなよ。あ」

口ばかりでいつまでたっても手を出してこない。彼らに勇騎のテンションはダダ下がり、

「きららさん。行きましょうか。」

手を出してこないと諦め、彼らを完全に無視し、勇騎は教室へと戻っていく。

そしてその去り際、きららの目に見えないように、

勇騎は完全に馬鹿にしたアホ顔でかかって来いよと手招きをする。

その事で武士は完全に頭に来たのか、大声を上げるが、勇騎は全く聞こえないかのように挑発を続けながら無視して進んでいく。

「あんたが嫌いだと思った理由。やっとわかったわ。」

「何ですかそれ?性格が悪いとか」

「あんた、烈火と真反対。普段はうるさくて暑苦しいふりしているくせに、あっちが本当の顔でしょ。冷たくて暗くて、それがあなた。」

「そうですか、人は誰だっていくつも顔を持っていますよ。僕はいつだってきららさんの前では今の僕のままですよ。」

「そうかもね。あんたはそれでうまくやれるでしょうね。」

「きららさんも、使い分けた方がいいですよ。まじめすぎます。」

「なんで私が他人に合わせないといけないの、私が合わせるのは烈火だけ」

「ホント烈火さんの事ばかりですね。僕の目はないですか?」

「ない、絶対に、そもそもあんた私の事好きじゃないでしょ。」

「……僕は優しい女の子はみんな好きですよ。だからきららさんも好きですよ。」

「まったく、あいつ面倒なんだから、あんまり関わり合いにならないように注意して、」

「ほらそういうところ、やっさしー」

「こっちに火の粉が飛ばないようにして欲しいだけ。」

「はいはい、姫様の言うとおりに、」

「……あんた、そういうところが人をイラッとさせて分かってる?」


転校初日に、武士に目をつけられ、その日の放課後に、呼び出されるものの、武士を含め6人相手に拳を使わず、外傷を追わせず、完璧なまでに心を負った。

彼的には順風満帆、平常運転の『学園生活』だ。

通常武器を手にした6人を相手に勝てるはずなどない、しかもそれを、相手を気遣い怪我させぬようになどという事は土台無理だ。しかし、それを可能にしたのは

たった一撃で相手の呼吸を奪うだけの攻撃力(フィジカル!)

相手の攻撃を意にも介さない体力(フィジカル!!)

10分間全力で動き続けられるだけのスタミナ(フィジカル!!!)

武器を持った相手を前に揺らがぬ肉体(フィジカル!!!!)に裏付けられた精神。

全ては圧倒的な身体能力によるものの差だ。勝てる相手ではない。

武士たちは、勇騎にまるでアメリカの軍人でも相手にしている可能な絶望を感じた。

腕も足も、首も胸も、まるで別の生き物。触れられた時の圧が違う。

久々の趣味を全うし満足げな勇騎だが、その本人の知らぬところで転校初日に学校一の危険人物として、問題児としてSNSで広まった。


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