学校へ行こう2
昼休み プールへの階段
「10分休みもすぐにいなくなっていましたが、今回は見つけましたよ。」
階段に座り、携帯を打つきららに、烈火が購買部で買ってきた焼きそばパンを投げて渡す。
きららはそれをキャッチしようともせず、パンは一番下まで転げ落ちる
「焼きそばパン、本当に売っているんですね、前は学食に行ったことなかったから、」
「……何しに来たの」
「今日来たばかりの僕が、美森さんよりクラスに馴染んでいる件に関して、です。」
「関係ないでしょ。」
「そのご機嫌斜めなご様子は、学校に連れてこられたことの不満ですか?それとも、烈火さんに不登校を知られたと、思い込んでいるからですか?」
「!」
「ご心配なく、烈火さんは何も知りません。森川先生も、校長先生も、あなたの不登校を話すことはないですよ。」
「……余計なお世話。」
「ここ数日見ていて感じる僕への敵意はある意味嫉妬似たものを感じました。大丈夫ですよ、取ったりしませんよ。そんなに好きなんですか烈火さんの事」
きららは、目に分かるように一瞬で顔を赤くし、拾ったパンを勇騎に投げ返す。
勇騎はいらないのかと再確認すると、ポケットからもう一つのクリームパンを、きららの横に置くと投げ返された、焼きそばパンを食べだす。
「初めて食べましたけどこれおいしいですね。カレーパンの方が好きですけど。」
「……」
「ちなみに何が一番おいしいんですか学食って」
「知らない、行ったことないから、そんなに気になるんなら行って来れば」
「きららさん。俺の監視頼まれてるのにそんなんでいいんですか?」
「……」
「ホント烈火さんの事になると、そんな感じですよね。」
「烈火は私にとってすべてなの、あなたには分からないわ。この身も、心も、魂も、全て烈火の物、そして、あの家は私と烈火だけの特別な世界。あなたは邪魔者」
「きららさんが残っていいって口添えしてくれたって聞いてますけど。」
「出て行ってほしい、でも、政府の施設に入れられるのは違う。
答えて、あなたは境界世界の住民なの、市井勇騎になった目的は何?」
「自分が何かは分かりません、それは僕がなんであれ、僕は僕だと答えますから、
自己の証明は不可能です。ですが、僕はきららさんや烈火さんには感謝しています。
そしてできればきららさんと仲良くしたいとも思っています。
どうすれば仲良くしてくれますか?
庭で寝ればいいですか?家から出て行けばいいですか?」
悪意はない、特に邪魔をしている罪悪感もないように、ただ建設的な意見を求めている。
その態度にきららもふっと、諦めがついた。
こいつに何を言っても無駄だ、こいつはこういう奴なんだ、と
「いい、そんなことしなくて、学校に行ってない事黙ってくれててありがとう。」
どういたしまして、勇騎は小さな声でそういうと、その後は一言もしゃべらず、昼休みが終わるまでその場所できららを見ていた。
「さて、そろそろ戻るわよ。」
「ん、あ、はい、」
「寝てたの?そんな熱い場所で?」
「寝てないっす、少しか、」
「意味のない嘘つかない、珍しく、静かにしていると思ったら、普段からそうしてれば、静かでいいのに、」
「えー、俺は、きららさんの心のサプリ、ムードメーカー何ですから。」
無視するきららを追いかけ、勇騎は教室に戻っていく。
勇騎が追いかけてくるため、きららはついつい早歩きになり、勇騎を警戒するあまり、前方への注意が散漫になってしまった。その結果、ドンッ。
体育館のトイレの前でぶつかって弾き飛ばされたのはきららの方だった。