狂と凶と興と今日4
「見えはしませんが、あれはあなたを守るために俺との間に現れる。
後は頭と喉を雑誌で守れば、次は心臓を狙ってくる、可能性は高かった。」
それは血染めのお守り、血染めのお守りが刀に貫かれている。
「そうじゃなくて、それをいつ!」
「俺が本当に胸を揉みたいと思ったとでも、あれは意識をずらすため、ポケット気づかなかったでしょ。とは言え、あなたに対する侮辱的な行為は謝罪いたします。
後から好きなだけ殴っていただいて構いません。」
「その時から、私が持っていると」
「あなたの事です。家に置いているとは考えにくかった、自分の身に着けるそれが最良。
力の原因がこれであるなら、なおの事、いってー」
勇騎は手から溢れてくる血を抑えるため、慌てて服で傷口を抑える。
「まともに戦っても勝てはしない、でも、お守りを壊してはいけない、呪いの禁を破ったものが呪い自身であれば、その結末はいかに、という訳です。
これは賭けです。姫瑠さん。本当であればあなたに呪いを解いてほしかった。
あなたに説得が無理だという事は分かっていた。だからこそ敗北を認めさせて事を終わらせたかった。でも、あなたは俺が思うよりもずっと強情だ。
だから、これは俺も、きららさんも、姫瑠さんも、救うための賭けの一手です。
だからです、もしこれで打つ手なくあなたが死ぬのなら、俺はあなたの墓を一生見舞うつもりです。」
「死者への祈りは生者の救い。それで私が満足するとでも!」
「姫瑠さん。」
「って言いたいところだけど、負けたわ。」
言葉ではなく、理屈ではなく、その空白の心で、自分の運命を理解した。
姫瑠は動かなくなった蛇に姿を変えた下半身を力づくで動かし仰向けに倒れこむ。
それ程きれいではない、澄んでもいない星明かりの夜空を見上げている。
寝転がってみる星空、下ばかり見て生きてきた、見上げることなどなかった。
でも悪くない。どこまで遠く遠く、届かない場所の星の光を見上げる。
あの星を手に入れようそうは思わない。でも綺麗だと思える。
これで終わり次はない。そう思うと初めて心の底から楽になった。
「あなたには、この状況で私も助けるつもりだったわけ、まったく呆れるわね。」
「差し出がましい物言いにきこえるかもしれませんが、姫瑠さんも悪いですが、ここまでさせたのはこいつです。少なからず、こいつに飲まれ、そうさせた。言いましたよね。
私の半分は彼女だって、それはあなたが感じる様に事実なのでしょう、芯なき者に憎悪が集まり形作られた。魂なき憎悪が心を蝕む。ならばその点においてあなたは被害者です。
本来であればこんな形で終わらせたくはなかった。あなたは僕の知る限り、最も才ある悪意です。正面から言葉で勝ってみたかった。」
「……何よそれ、いいわ、あなたの勝ち。その精神力、まるで勝てる気はしないわ。」
「姫瑠先輩」
「いいわよ、別に気を使って先輩って言ってくれなくても、意外に気持ちいいものね、
負けを認めるのも、なんだか全部がどうでもよく感じてきたわ。今まで何をイライラしてたんだろうって感じ。」
「それじゃ、早く、皆の毒を解いてください!彼らは俺と違って専門家です。この状況を何とかする術を持っているかも、」
「私が何かをしなくてももう力はない、すぐにでも目をさま、」
その時だ、赤く染まったそのお守りは突然光だし、彼女を飲み込み勇騎を弾き飛ばした。