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時をかけるヤンキー3

「言ってくれるね。まぁ、結局何が言いたいかというと、都市伝説は君が生きた時代よりもはるかに多くが存在し、遥かに洗練されているという事さ、少しずつ色々な人の経験と感性を経て今や『誰でもない、誰か』によって作られた物語さ。」

「その噂の元を探る研究という訳ですか?」

「そういう平和の物であれば警察は絡んではきませんわ、トケンが曲がりなりにも政府の信頼を得ている理由それが実社会の実害を排除できているという事にあります。」

「実害の排除」

「一つは噂話や声なき声に紛れ潜む、本当の事件をあぶりだすこと、主にサイコ野郎による殺人、監禁、暴行事件の摘発。

警察にもサイバー犯罪対策専門の部署もありますが、きららのおかげもあって私たちの方が一日の長があります。広域の情報網、そしてそういう同種の異常性を見逃さない感性があってこそ」

この自分よりも年下見えるあの子がそんなに凄いのかと、きららを見つめる。

きららは人から見られる耐性がない為、すぐさま烈火の影に隠れる

「そしてもう一つが、本物の裏世界の者に対抗できる力を持っているからです。」

「裏世界の者?DQ6のデスタムーアのいる世界みたいなものですか」

「死後の世界と異なるものの、死後の世界にも似た世界を私たちは裏世界と呼んでいますわ。人の憎悪や人の怨嗟を元にして、形を成した魂なき存在。」

冗談で言ったが、遠からず自分の発言が的を射ていたようで勇騎は少し嬉しい。

「境界世界、彼女が裏世界と呼ぶ世界を俺はあえてこの名で呼ばせてもらうよ。この世とあの世その狭間の世界、言うなればここもそういう場所に近い、どちらでもありどちらでもない、不確定が二つの世界に干渉しうる世界、生きたままでは踏み込むことはできず、死ねば止まることのできない狭間の世界だ。

俺たちはそこの世界からの影響に対処できる知識と力を持っている。」

勇騎は少しも怯えることなく、目を輝かせて、相手の返答を予測し効率的に筋道を立てて一問一答で興味深く話に入りこんでいく。

「君は変わっているね。普通君の置かれた状況の不安や、こんな突拍子もない話を信じるものかね。」

「そういう話が好きだから、ゲームが好きなんですよ。それにこういう状況になったものはしょうがない、それでも何とかしようとここにきているわけです。

驚いてはいますよ。想定はしている話の系統ですが、正直それは僕の願望、妄想に近い回答でした。ですがそれを他者の言葉で示してくれた。突拍子がない話のように聞こえると言えばそうかもしれませんが、自分の置かれた状況を理論的に解するため、あなたを頼ってここに来た、そこであなたを否定することは合理的でしょうか。」

「非合理的だな、ふふ、意外だな、不良は人の話を聞かないものだろ。」

「ですから、俺ヤンキーじゃないですから、それに僕はゲームの世界は好きですけど、

実は幽霊や宇宙人、こういう話はかけらも信じていません。そんな事はありえないと。」

勇騎はこの幽霊屋敷をさっと見回し、何も感じ取れない事を再度認識すると話を続ける。

「ただ、ないと思っていますが、幽霊が絶対にいないと否定するという事は幽霊が絶対にいると盲信すると等しい。自分が知らないことは存在しないのではなく、『分からない』だけです。

分からないのなら、自分で結論が出るまでは他者の意見を聞き入れ、できる限りの検証をする。つまりは『保留』です。

俺は今ある状況を観察し、考察し、自分が納得できる結論を得る。」

「納得?元いた世界に戻る方法を知るんじゃなくて、」

「あぁ、そうでしたね。」

そう言って勇騎は笑った。その表情には緊張感も、恐怖もない。

ただ純粋に興味深げに他人事であるかのように、この『物語』を楽しんでいる。

だからこそ彼らは勇騎に不信感を抱いていた。彼が彼である保証はなく、彼が自分たちの『対応すべき事象』であるかを、

勇騎を残し、4人は2階の烈火の部屋の前で小会議を始めた。

「率直にどう思う?彼が境界世界の住民か、それとも元々あぁいうポジティブな人間か」

烈火の視線を向けられ、きららが最初に口を開く。

「私は向うの人だとは思えない。でもここに住むのはダメ、ここは私たちの家。」

「裏世界の住民ではない保証は何だい、きららちゃん。保田刑事の資料は見ただろ、監視カメラの映像が乱れて、突然動いているエレベータの中に彼は現れた。ドッペルゲンガー、影人、君の分野でも色々な可能性はある。それを排除する理由は?」

「……あの人は、そうじゃない、そういう気がする。あの人は嫌いだけど、嫌な感じはしない。うまく言えないけど、怖い人だけど、怖くないっていうか」

「そういう気がするね。女の勘かい?君の男を見る目は私はあまり信用したくないね。

私は、彼は裏の住民だと思うよ。

状況証拠もそうだけど、きららちゃんと同じ私の勘がそう言っている。

怪しい気は感じないが、裏の住民の方が、納得がいく。」

灯は視線を麗華に移す。

「裏、それだけ。証拠はこれから見つければいい。こちらで対応するより、施設で監視すべき、私が引き取る。」

「見つけるじゃなく、作るの間違いじゃないですか?それに彼がもしそうじゃなかったら、何らかの境界の自称に巻き込まれた被害者だとしたら?」

「男でしょ、それくらいぎゃあぎゃあいうなというな。彼の人権の為に、より多くの人間を危険には晒せない。」

「都合のいい時だけ男を持ち出さないでください。」

「また、私が感情的だと?」

「いいませんよ。喧嘩になります。」

「で、あなたはどっちなの、って聞くまでもないわね。」

烈火はポケットから10円玉を取り出す。

「2対2。表ならうちで預かります。いいですね。」

「このコウモリ野郎、あなただって本当は疑っているんでしょ」

「烈火先輩、もう少し自分を主張した方がいいですよ。私たち3人が満場一致じゃない限り、常に意見は2対2。弱い方の味方をする。だからいつだって大変な目に合う。」

「烈火、私。」

「意見を変えなくていいよ。それは美森の悪い癖だ。自分を大切に。」

「どの口が言っているんですか。」

烈火は天高く10円玉を放ると、仰々しくキャッチし、自分の手の平に乗せた。

「それじゃ、どっちが出ても恨みっこなしで、いいね。」

「烈火先輩、前から言おうと思っていたんですが、硬貨は製造年が書いてある方が裏です」

「え、そうなの?参ったな。」

「参ったってどういう事!前々から思っていましたが、あなたイカサマを!」

麗華が烈火の覆いかぶさった手を力づくで除ける。

「という事で、決まり。異論はなし、いいね」


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