退魔(物理)師 ブレイブ ワン!8
5時間後、深夜2時
「姫瑠、起きてる」
「何、こんな時間に?」
「あなたに合わせろって、変な人が来てるって、一応、学校の制服を着てるけど、どうする警察に連絡する?」
「うちの学校の制服?誰?」
「名前は分からないけど、男の子で、あなたの事を評しに来た司馬懿だと、言えば伝わるって。目つきの悪い子らしくて不良じゃないかって、あなたそういう人に何か関係が」
「あるわけないでしょ、お母さん、心配しないで、」
「でも、」
「うるさい。黙ってろ。私に命令するな。ただの飼い猫が」
「ハイ。」
彼女に命令されるがまま、母親は感情なく返事をしその場に崩れ落ちた。
京月宅、庭園にて
「何してるの?」
「鯉を見ながら、池に映る月に思いをはせていました。」
「今日は新月よ。」
「だから思いをはせていた、と、凄いですね。この家会長の家だったんですね。昔から有名だったんですよ。ここ、俺のいたころはヤクザの親分が住んでる家だって言われていたんですよ。」
「何の用かしら、というより、今まで何をしてたの?」
「意外にかわいい寝巻を期待したんですが、こんな時にもしっかりと身なりを整えるなんて、流石ですね。」
「何なら、ネグリジェ姿がよかったのかしら、変態。」
「……冗談だってんですが、ちょっとマジの言い方の変態って、俺そういうキャラだと思われています?」
「こんな時間に来る非常識は変態でしょ、しかも自分の事を司馬懿だなんて、同じ三国志でも普通諸葛孔明じゃないの?」
「俺の趣味じゃないんですかしているのは、先輩も嫌いでしょ人徳だとかそういうの、」
「それは三国志演義史観?それとも司馬史観?」
「横山の光っちゃん、いや、三國無双ですね。知ってます?ゲームの」
「ごめんなさい。ゲームなんて子供じみたものには興味がないの」
「だったら何にだったら興味があります?俺とか?」
「何を、」
「興味はあるでしょ、悪い意味で、だからこうして会いに出てきてくれた。
いるんですよね。現実にしか興味がないって、ドラマとか演劇だとか芸能界だとかそういう作られたものは受け入れるのにアニメ・ゲームになると受け入れなれないとか、想像力と感性の乏しい人が、どっちも作り物で、どっちも人が作ったものなのに、最適な表現方法で判断できずに既成概念、他人の作った共通の価値観だけで判断して本質を見抜けない節穴の目の持ち主が、」
「心配してくれてありがとう、でも、私は両方とも興味がないから。」
「興味がるのは、目の前の現実だけ、ですか、目の前にあるものだけが現実をありのままに受け入れるのではなく自分に都合のいいものだけを選別し、現実と空想の区別もつかずに現実を思い通りにしようとする。他人の心の痛みも関わらず、人をおもちゃにする、まだ懲りていないんですかあなたは?」
「懲りる?何の話かしら。また妄想の説教?」
勇騎は立ち上がり、見下す目で石橋の上から橋の下の彼女を見つめる
「違いますよ。言ったでしょ。あなたを評しに来たと。所詮はあなたは俺の手の内、俺の想像を超える事のない人だ。つまりはあなたから学ぶことはもう何もない。
だからこの敬語は侮蔑の敬語です。」
「ふふ、言ってくれるわね。どこからその自信が出てくるのかしら」
「その余裕。本物ですね。前はその余裕はなかった。笑っていない目で、僕をはぐらかした。だからこそ俺はあなたを哀れに思いつつも恐ろしいと思った。
だから引いた、俺の手に余ると、ですが、今のあなたは恐るるに足りません。
力を手にし、力に溺れる。哀れな大人、そのものです。」
そう言ってあの時と同じ目で彼女を見つめる。
「……ホント、むかつくガキね。だから不良は嫌いなのよ。
好き勝手に粗暴で、傲慢。消えなさい。」
「……今のその眼、まぁ、いいでしょう。それじゃまずは、ジャブ程度にさっきの話から」
「……(効いていないなんで、)」
「さっき、言いましたよね。ゲームだけじゃなく、芸能界にも興味がないって。
じゃあなんで、オーディションを受けたんですか?」
「!」
「知っていますよ。五十嵐凜。芸名はLINでしたかあなたの『お友達』で、唯一あなたの思い通りにならなくて、あなたに勝った人」