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時をかけるヤンキー1

「覚えている限りの事をありのままに話します。

2月15日、俺はいつもの様に両親と喧嘩していました。喧嘩の内容はいつもと同じ、父親の事です。いつもの様に約束を破り、酒を飲み、年齢と両親という事だけを傘に着て、俺に感情で説教を、っと、ありのままでしたね。感情論は置いておいて、すみません。

兎に角そういう訳で俺はいつもの様に父親と喧嘩をした、ただいつもと違っていたのはお互いに虫の居所が悪かったそれだけです。

だから父親は俺に出て行けと、そして俺はそれを買い言葉で家を出ていった。

男が一回言った言葉です。いまさら戻す訳にはいかず、俺は本気で戻るつもりはなかった。

だから俺は街中を彷徨って、すみません、あまり良く覚えていないんです。

ただ覚えているのは着物を着た女の子と、夜だったはずなのに見た事のないほどきれいな夕焼けと郷愁を誘うような十字路。そして気がつくと」

「自動販売機のジュースが130円になっていて、PS4が発売していた、と」

「ドラクエなら追えますよ、7,8,9,10をやればいいんですから、問題はFFの方ですよ、15って何ですか!なんでそこまで差がついているんですか!つれえわ、」

「可哀想に、そんなに落ち込まないで。20年の歳月の経過はとても受け入られないもの」

「いや、違いますから、早くやらせろってことです。」

「ひどいゲーム依存症だな。ほら、俺のスマホ貸してやろうか、」

「何ですかスマホって、卑猥なアダルトグッツみたいな略称みんな恥ずかしげもなく言えますね。大体ゲームは大画面でやるもんですよ。携帯はポケモンがあれば、十分です。

単三電池の替えありますか」

クラッシック音楽が鳴り、吹き抜け天井に値打ち物の送風機が回る大きなリビングルームで、少年は大声を上げる。

「ドラクエ8ならこれでできるから、それにほら、ポケモンGo。これでもポケモン出来るから、」

「ポケモンがここまでの大ヒットになるとは思っていませんでしたよ。俺のやっていたのってGBですからね。見ますか?裏ワザでミュウも持っているんですよ。」

「こいつが見つかった時、持っていたのは夏目漱石の千円札3枚と旧500円玉、それにゲームボーイだけ。」

「あと、自転車の鍵も持っていたでしょ」

「自転車はなかったけどな。高校生の持ち物かよ。俺の甥っ子がお前と同い年だったが、

もっと大人びてたぞ」

保田刑事はタバコに火をつけようとするがこの家の主である二堂烈火からタバコをすっと取り上げられる。

「で、刑事さん。俺たちにどうしろっていうんですか?」

「都市伝説研究所、通称トケン、民間団体ではあるがお前たちの能力は買っている。

20年前に行方不明になったガキが、20年後何食わぬ顔で現れたとなりゃ、俺らの範疇じゃねぇ、こいつを精神病院にも送らず、マスコミにも晒さず、お前らの所に連れてくる俺の苦労も買って協力してもらえないか?」

「彼がその行方不明者である証明は?」

「こいつの弟、昔のクラスメイト、そのほか2名の面談の結果、市井勇騎本人であると判断した。」

「今が2016年、俺がいたのは1996年、ノストラダムスの終末を乗り越え、ポケモン、ゴジラがヒット中、大して変わりませんね。」

「いまいち危機感がないな。不安じゃないのか、知らない未来に来て、」

「こっちに来てから1週間ですから、まだ楽しいことの方が多いですよ。まぁ、お金がないわけですし、色々困ってはいますが、」

勇騎は話半分に、借りたスマホのゲームを理解し、熱中する。

「……まぁ、うちの範疇かもしれませんが、」

「まぁそういう訳だ。そういう事で、こいつの正体が分かるか、見事過去に送り返すまでここで預かってくれないか?」

「はぁ?なんでですか、今の話だと昔の知り合い結構いるんでしょ。彼の両親は?」

「母親は死亡、父親は認知症を患って今じゃ施設暮らしだ。」

「だったら弟さんがいるでしょうが、」

「それがな、」

「弟の家で世話になるくらいなら野宿します。幸い、今は地球温暖化で暑いようですから。」

「温暖化ね、まぁその信憑はともかく、断ると。」

「実際こいつはしばらく弟の家で暮らしていたんだ。弟はこいつと違ってできた人間でな、面倒全部を見るつもりでいたんだが、」

「そりゃ奥さんからすれば、邪魔者だよね、糞ニートのゲームするしかないような見かけヤンキーを引き取れって言われてもね。」

「いや、それがな、嫁さんも歓迎しているんだ、がよ。」

「何か問題でも?」

「いや、こいつの弟の嫁な。昔こいつが好きで告白した相手なんだ、しかもフラて、その直後に行方不明だ、向うは20年も経ってんだ、色んな蟠りもあったが、遠の昔に乗り越えちゃいるが、こいつからすればな。」

「うわー、」

「しかも夫婦は円満。再来月にも第二子が出産予定。こう見えてこいつナイーブなんだよ。」

「分かりますか!初恋の相手だったんですよ!それがフラれてイラついて、戻ってくれば、弟とくっついて、弟に『健侍さん』って一方俺には憐みの目で、家でゲームしてても何も言わないってどれだけ辛いか、弟のメッセージ一つで笑顔になるのに、

俺は気を使われるばかりで戻れるわけないでしょ!」

「そ、それは、でもだな。」

烈火は同情してしまうが、きららの目線が気になる。

今この家に暮らしているのはトケン所長の烈火とそのメンバーの美森きらら、不良のような風貌で軽い言動の勇騎をきららは明確に敵視している。

「しかもこいつの部屋は若い二人の愛の巣の真下の部屋だ。毎晩音を聞かされて、しかも昨日、隠してたエロ本を見つかった。」

きららはゴミを見るような眼で、もだえる勇騎を見つめ、心の中で唾を吐きかける。

「電子書籍や、ネットという手段を選べなかった、悲しいね、昭和生まれは。片手しか使えなくて、大変だろう。」

「灯、下品。こんなゴミ、この家に置けばより一層ゴミ屋敷に輪がかかるわ」

「麗華さん、人の家をゴミ屋敷呼ばわりしないでください。」

「気安く下の名前で呼ばないで、五代様と呼びなさい。このゴミ。」

「言ってくれますね。とは言え、分かりました。流石にそれは居心地が悪いかと、それに正体のわからない彼をおいていてはそのバカップ、もとい、弟さん夫婦に危害が加わるとも限らない。」

烈火はソファから立ち上がり、勇騎からスマホを取り上げ、目線を合わす。

「つまりはこいつが向う側の住民だと?」

「正直その可能性が高いでしょう、記憶と容姿を食らってなりすます化物、またはドッペルゲンガーのようなものとも限らない。」

「俺が偽物だってことですか?」

「そうじゃないという保証は、自己の証明をどうするつもりだ?」

「俺の魂が俺だと言っています。なんだったら拳で証明して見せましょうか。」

「何それ馬鹿じゃないの?」

「いいね、その暑苦しいの、さすがは昭和。」

「こんなの生まれた年代が問題ではない。ただの脳筋の馬鹿よ。」

笑う灯に、関わり合いになりたくない麗華。

「メンタル最強よりもフィジカル最強。つまりそれ最強です。」

「……預かるって言ったの、前言撤回しようかな。」

「男に二言はない、ですよね。烈火さん。」

勇騎は力強く烈火の両肩に手を置く。

「暑苦しいな。」

「いいじゃないですか、先輩の気だるげな感じには、これくらいの方がちょうどいいかもですよ。それに嫌ならさっさとタイムマシーン(笑)を見つけて放り込むってことで。」

他人事と笑いながら、麗華にもたれかかり、横にあった雑誌を手に取る

「まぁ、男ではなく、裏世界の住民であった方が幾分かマシですわ。さっさと切り刻めるように剣の手入れをしておかないと、」

「……烈火に近寄るな」

きららは手にしたクマの頭部を引っ張り首元から綿が飛び出さんばかりに勇騎を警戒する。

「ありがとうございます。皆さん歓迎してくれて、」

そう言って勇騎は頭を深々下げる

「当然空気も読めないっと、難儀だね」

「わざとです。」

勇騎の笑顔に全員がイラッと来る

「そういう事でよろしく頼むは、こいつの生活費は経費で付けといてくれ、お前らの管轄だって証明が取れたら調査費で落としてやるよ。」

「あ、ちょっとそうじゃなかったらこっちもちってことですか。それはいくらなんでも」

「経費で落ちるんならPS4買ってください。あとPSVRも警察の裏ルートで手に入りますかね?」

はぁと全員溜息をつく、これから先思いやれると。


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