子供の世界4
警察署
待合室
「あの、すみません、保田刑事をお願いできますか、あの、私、市井勇騎と言います。
夜勤ですか。ご苦労様です。あのよければ仕事明けに一緒に朝焼けでも見に行きませんか。」
「お前の自転車でか?免許取って出直してこい、この馬鹿が」
後ろから保田警部が勇騎の頭をどつく
「いったいな、コームシッコウボウガイの現行犯ですよ、美人なお姉さん」
「そりゃお前だ、馬鹿が、いいから来い」
「それじゃーお姉さんまたねー。……今の若者ってこういうノリなんでしょ」
「警察署でやるバカがお前が初めてだろうな、それにあいつは既婚者だ。
不貞行為でしょっ引くぞ」
「まぁ、美人さんですから、男が放っておくわけないでしょうね。
ちなみに保田警部は独身ですよね。」
「……当たっちゃいるが、そう断言されると不快だな。」
「まずはそのボロコート新調しましょう、昭和の頑固刑事でございと言わんばかりですよ。」
「気に入っているからいいんだよ、だいたい刑事は見かけじゃねぇ。ほらこん中だ入れ!」
「取調室、かつ丼か、一度食べてみたかったんですよね。」
「こんな時間に出前はやってねぇよ、それにただ飯食らえるわけじゃねぇぞ、」
「そのお茶らけた態度、わざとだとしても不快ね。市井勇騎。」
扉を開けると椅子に座ったきららとその横に麗華と屈強な男が二人
「あぁ、確か麗華さん。ぴっちりスーツに黒タイツ、よくお似合いですっ」
勇騎の顔面の真横をどこから出したか、ナイフがかすめる。」
「その口は今から使ってもらうから潰さないでおいてあげる。そこに座りなさい。」
「椅子じゃなくて?」
麗華はその場に勇騎を座らせると、逃げられないように後ろに男二人を立たせ、移動させてきた椅子に座すと、そのヒールの先で、勇騎の顎を上げさせ、これまたどこから出したか分からない鞭をしならせ、勇騎を威圧する。
「あの、僕どちらかと言えばSですけど、」
「奇遇ね、私もそうなの、私はね、そいいう自称SのM野郎をいたぶるのが大好きなの。」
「あまり、ふざけてる感じじゃ、ない?」
「悪い頭でも理解してくれて助かるわ。答えなさい、丸2日どこにいたのか」
「は?」
「人が寝てる間に急にいなくなって、どれだけ心配したと思ってるの!」
先ほどまで麗華に管理責任を問い詰められ、目を赤くした、きららが激高し、勇騎に迫る。
きららの感情たっぷりの怒声の中で、勇騎も自分の状況を理解していった。
そして怒りを出し切ったのか、きららは鼻水が出そうな鼻をひくつかせ、小さな声で無事でよかったと呟くと、後を麗華に任せ、一旦部屋から出ていった。
「どうやら、今日は日曜日、俺は丸一日、いなくなっていたようですね。」
「二日よ。」
「いいえ、一日です、土曜日の夕方までは記憶にあります。そして今日、日曜日の夕闇の頃から記憶があります。ですから一日です。僕はその一日の認識がない。この時代に来たみたいに、何の意識もなく、丸一日が消えている。」
「どちらでもいいわ、そんな事、兎に角、これであなたには逃亡の危険があると理解しました。そして、きららにはあなたを管理する力もないことを、烈火も何を考えているのか」
「俺の事はいいですけど、きららさんの事、悪く言うのはやめてもらえませんか?」
「事実を言ったまでよ、何よその眼。」
「その眼って」
「目が笑ってないわよ。残念だけど、作り笑顔は通用しないわ、一丁前に怒る前にまずはいう事があるんじゃないの」
「迷惑をかけてすみませんでした。でも、謝りたいのはあなたじゃない、きららさんです。」
「まぁいいわ、取り合えず、事情を話しなさい。聞いてやるだけ聞いてあげるわ。」
勇騎は麗華に自らの主観の経験を話す、そして逃亡の可能性はないことを伝える、が、
「それが事実だとして、それはあなたが裏世界に関わりがある証拠のようなものじゃない。あなたはその眼であなたのチャンネルに会う裏世界の景色を見た。
あなた自身はともかく、少なくともあなたは裏世界に魅入られている。それを放置するほど私は甘くはないわ。烈火が不在なのはいいことね。あなたに救いの道はないわ。」
「どうしてそこまでして俺を監禁したいんですか?」
「私は仕事を全うしているだけ。あなたは自分の危険性を軽んじている。
裏世界は人の心を蝕み、場合よっては命を蝕む。それはウイルスのように広がり、周りを巻き込んでいく、本人がどうかが問題じゃない、結果が重要。」
「俺が周りを不幸にすると、確かにそれは間違っていないでしょうが、」
「そういう事。だから、」
「でも、もう少しだけ待ってもらえませんか、」
「何故?烈火が戻ってくるまでの時間稼ぎのつもりなら、」
「あなたに対して烈火さんがどういう優位性を持つか分かりませんが、そうじゃありません。今、俺の所に呪いのお守りが届いているです。」
「聞いているわ、だから何、それが偽物だと証明されたのでしょう。」
「きららさんが調べてくれてたどり着きそうなんです。それを無下にしないでください。」
「関係ないわ。そんな子供たちのいたずらの噂話。」
「そのいたずらで悩み、他人に呪いを押し付けた子供の心の傷を理解できますか。
全てを明らかにして、この馬鹿げたイジメじみた愉快犯を、」
「だからそんな事は、子供の」
「子供の事に大人が首を突っ込むな、」
「な、あなた誰に者を」
「それにこんな事をする子供を、放置しろっているんですか、他人を不幸にして喜んでいる、事の大小を比べれば大人のあなたにとっては取るに足らない事なのかもしれません、でもだからと言って見逃せというんですか、それがあなたの大人の正義なのでしょう」
「言ってくれるわね。」
「そんなに俺が怖いですか、そんなに心配なら首に爆弾でも何もつければいいでしょ!」