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鳥の絆、願いの叶う石に導かれ



私は旅人だ。

あてのない、旅をしている。


私は暑さにやられ、少し休憩をしていた。

夏真っ盛り。木陰にいてもじっとりと汗をかいた。それでもじっとしていれば幾分かましだった。

すると、目の前に若い少女がふらふらと現れ、空を見上げながら何かを探しているようだった。

空は一面真っ青。一体何を探しているのか、私は気になり始めた。

「お嬢さん、何か探し物ですか?」

少女は私の声に驚いて振り返ると、ええ、と一言発した。そしてまた、ソワソワと空を見上げるのであった。よく見ると、胸に何か抱えている。それは、手紙のようなものに見えた。

「手紙を、出したいのかい?」

ようやく私と会話する気になったのか、少女はこちらに向き直った。

「美しい鳥さんが定期的にここに来るのよ。その子にこれを渡して、届けてもらっているの。」

ほう、と私は納得した。伝書鳩のようなものだろうか。少女は誰かと文通しているようだった。しかもその落ち着きのない感じから、好意を寄せているように感じた。

「手紙の相手に出会ったことは?」

「ないわ。それは、会ってみたいけれど。」

そう言うと少女は恥ずかしそうに、手紙をぎゅっと胸に抑え込む。

「なら、是非会って見るといい。ほら、ちょうど鳥さんも来たようだ。」

その鳥は鷹くらいの大きさで、嘴が大きく、体はカラフルな色で、尻尾の長い鳥であった。一度見たら決して忘れることのない、摩訶不思議な容姿であった。私は少女がまだ見ぬ彼と会うことはもちろんだったが、その鳥がどこから来ているのかが、気になったのだ。


「さぁ、手紙を渡したら、鳥さんについていこう。」

え、と驚く少女をよそに、私は少女の手を取り、鳥のあとを追った。鳥はその様を理解したのか、ゆっくり優雅に飛んでいた。

途中、木の上で休憩をして、また私達の汗が引く頃飛び立った。なんて空気の読める鳥なのだろう。その合間合間に、少女は文通のきっかけを話してくれた。


「ある日、私の家の近くで羽を怪我して飛べなくなっている鳥さんを見つけたの。私は介抱して、飛べるようになった鳥さんの足に、お守りとしてリボンを巻いてあげたわ。そうしたら後日、鳥さんの足に手紙が巻かれて、また戻って来たのよ。そうして私は、鳥さんの飼い主さんと文通するようになったの。彼の字はとても綺麗で、丁寧だった。歳も近いし、性格も似ていて、それから手紙を書くのがすごく楽しみになったのよ。もう、一年近く続いているの。」

そう話す少女は、とても楽しそうだった。そんな彼と今から対面する少女は、一体どんな心情だろうか。気付けば私までワクワクしていた。


辿り着いた先は、予想だにしない場所だった。大きな街まで来ると、鳥は人ごみの上をどんどん飛んでいき、中心にあるお城の下で止まったのだ。そして私達が追いつくと、鳥は高く舞いあがり、一番上の窓から中に入っていった。まさか、飼い主はこの城の住人なのだろうか。ドキドキしながら見上げて待つ私達。

すると、その窓から少年が顔を出した。キョロキョロと外を見回している。私は少女の手を取り、大きく振って見せた。少年はそれに気付くと、照れながらニコリとし、大声で叫んだ。

「ちょっと、待ってて!」


それから二人は城の中庭で会い、初めは戸惑いながら会話を交わしていたが、その後意気投合して楽しそうにしていた。私はそれを見て安心し、微笑ましい気持ちになったので、長居は無用と、城を後にした。

城を出ようとした私のところに少女が走り寄ってきて、息を切らしながら、私に渡したい物がある、と言ってきたのだ。

「これ、お礼に。願いを叶える石なの。私は願いを叶えたから、もう必要ないわ。あなたにあげる。」

驚いたことに、ちょっと話しただけで二人は結婚することになったようだ。少年は次期国王に決まっていて、少女はその妃になるのだという!


少しのきっかけで、人生はあっという間に変わっていく。私は、少女のその背中を押せたことが誇らしかった。あの時の少女の嬉しそうな笑顔が忘れられない。

二人が幸せになる未来を願いながら、私は願いを叶える石を首にかけると、自然と笑顔になった。

そしてまた、長く続く道を、あてもなく歩き出した。

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