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『長浜ラーメンを探し求めて!!』

『長浜ラーメン』それは……


『長浜ラーメンを探し求めて!!』



「あれ~おかしいな」 


 俺は、駅前にバイクを停めラーメン屋を探す。

が、”長浜ラーメン”がなかなか見当たらない。



 ソロツーリングの醍醐味は、ズバリ ”出会い”である。

(人だけではなく、モノとの出会いも含めて偶然の出会いが楽しい)


ネットで下調べをしてしまっては、旅の楽しさも半減してしまう。

確かに口コミや評判をあらかじめ調べれば、簡単においしい店にたどり着けるだろう。

だけれども、それになんの価値があるというのだろうか?


 失敗を恐れ無難に人生を過ごしている俺にとって、ソロツーリングだけは別格である。


下手をして、たとえ”まずい店”に当たってもイイと思っている

と云うか、それこそが俺の望む旅の姿だ……。


うまいものを食うのは確かに魅力だが、それだけでは旅として些か面白みに欠ける。

『思い出に残る旅』といったものは、

むしろ失敗をやらかした時の方が、はるかに感慨深く記憶に残るものなのだ。


だから俺はソロツーリングではネット・スマホを使わない主義なのだが……。



「おかしい」


さすがに首をかしげてしまう。

街中にラーメン屋ののぼりが全然見当たらない。

途中で何件か目にしたけれど、チェーン店だ。


「しかたがない」


 というわけで、俺は道路標識を頼りに駅前へとバイクをはしらせて来た。

駅に行けば、さすがに”長浜ラーメン”のラーメンマップとかあるだろうと思ったのだ。

観光客と、案内のボランティアガイドの姿がちらほら見える。


バイクを近くにあった駐輪場にとめ、駅のエスカレータを登る。


「観光地ならば、必ずあるハズだよな」



                  ※  ※  ※



「おかしいなあ~」

俺は、首を傾げた。


 案内所に行ってみたのだが、不思議とラーメンマップは無かった。

名物なのだろうか? ”焼き鯖そうめん”とかいう、そーめん屋のマップがあるのに解せぬ。

他のチラシも結構ある。というか、やたら多い。

年間の行事の予定も、大きな掲示板に大々的に宣伝されている。


ふむふむ


盆梅ぼんばい展、馬酔木あせび

長浜曳山まつり

大通寺夏中法要

ゆかた祭り

花火大会

長浜出世祭り

アートイン・長浜

着物大園遊会

日本の祭りinながはま

etc.


 一年を通して、結構なイベントをやっているようだ。

駅に案内のボランティアが居るというだけでも、観光地として賑わって居るのがわかる。



 少々人見知りのけがある俺だが、ここは意を決して聞いてみることにした。

これも旅のスパイスだ。


というわけで、現地の観光ボランティアのおじさんに尋ねてみた


「あの~、すみませ~ん」


「はいはい、いかがしました?」

よかった、親切そうなおじさんだ。


「長浜ラーメンを食べに来たんですけれど」


いささか苦笑いされた。

人見知りなんだからいたわってくれよ。


「ラーメンかぁ、学生さん?」


「はい」


「そっか~、近場だとラーメン◯◯か長浜ラーメン、それと麺屋××、あと▲△かな?」


 一応、近くのラーメン屋を何件か教えてもらったのだが……少し気になる。

穴場の店は郊外の方にあるのだろうか?


 確かに、活気があって好い町だと思うが。

長浜ラーメンの聖地なのに、『ラーメンMAP』が無いとは……些か不親切では無いのか?

俺はバイクだし、アクセスが不便で少々遠くても食べに行ってみたいのだが……。


とは云えそれほど社交的ではない俺は、それ以上の情報をおじさんからは聞き出せなかった。

折悪しく観光客がたくさん改札から出てきたからである。


「ありがとうございます」


とりあえず礼を言い、再び駅前広場へと降りて行った。




<出会いの像の前>



「お兄さん、どうしたの? ツーリング? 観光?」



 いきなり声をかけられた。まさか、逆ナンか?

なんでツーリングだと判ったのだろうと思ったが、おれは、どう見てもライダーの格好だ。

デニム地のシャツとジーンズに薄手のジャンパーを羽織った、バイク乗りのスタイル。

この暑いさなか、ジャンパーを羽織っていれば判るよな。


考え事をしていると……。


「なんだか困っているんじゃないかと思って」


 そうか、そりゃ駅前で観光マップを広げて首をかしげていればそう思うわな。

恥ずかしいぜ。


「ああ、地元の人?」


 突然声をかけられチョット戸惑ったものの、俺は何とか声を絞り出す。

(女の子に声をかけられる経験なんて、中学校以来だよ)


 モテなかったのではない、うちの高校は進学校だったからな。

そのおかげで志望する大学に現役で合格できたんだ。


声をかけてくれた女の子は、高校生かな?

化粧は薄く素朴な感じだが、笑顔がかわいい……というか、えらく美人だ。

長い黒髪に白いワンピース、清楚なお嬢様って感じだ。

えらくレベル高いな長浜!!


「うん、そうよ」


「長浜ラーメンの旨い店知らない?」


ドキドキする胸を抑え、さりげなく言葉を続けた。

(静まれ俺の心臓!!)



「ラーメン? いいよ! 何が食べたいの、醤油? 塩? 鶏ガラ? それともトンコツ?」


「え? 博多ラーメンて、豚骨じゃなかったの?」


「長浜に九州の”博多ラーメン”を求められてもな~。一応あるけれど」


苦笑せざるを得ないといった表情で、”あはは”と笑う女の子。



そう言われて、俺ははじめて気がついた……。


(やらかした)


 思わず顔が赤くなる。

彼女の笑顔の所為ももちろんあるけれども、大学生にもなって俺は何をしているんだろう?


博多は九州だ。



「えへへ、お兄さんみたいに間違って『長浜ラーメン』探す人って結構いるよ!」


女の子はフォローしてくれるが、俺はますます恥じ入ってしまう。


「いいじゃん旅の恥はかき捨て、いい思い出になったでしょ」


「イヤ、黒歴史だから……」

少しばかり落ち込む。


「バイクに乗っているくせに気が小さいな~。よし、おいしい長浜”の”ラーメン屋に連れて行ってあげるから機嫌直しなよ」


「え?!」


「知る人ぞ知る、長浜”の”ラーメン屋だよん!」






次回。

『長浜らぁ~めん』の秘密が、明らかになります。

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