食物都市チャイボ
あるところに、チャイボという街がありました。
チャイボの人々はみんな食事が大好きです。
一日三食の食事だけでは足りず、いつもお菓子を持ち歩くのが習慣になっています。
食べるのはもちろん、作るのも大好きなので、料理人を育てる学校がいくつもあります。
その学校を卒業する者はみな、他の街へ仕事をしに街を出ます。
ある者はお金持ちの家にお仕えに。
またある者は同じく他の街で料理を教えたりしています。
立派な料理人を送り出すかわりに、チャイボの街は他の街から食料をたくさんもらいます。
そしてまた料理を作り、食べて生活しています。
次第に、もらっている食料だけでは物足りなさを感じてきたチャイボの人々。
野菜くらいなら自分たちで育てられないかと畑を耕してみることにしました。
しかし、一刻も早く食事をしたいチャイボの人々にとって、農業はあまりにも時間のかかる仕事でした。
早く育つようにと肥料を多く使いすぎてしまい、田畑は全てだめになってしまったのです。
他の街からもらう食材の量を増やしてもらおうと決めましたが、農作業をしていないチャイボでは、他の街へ送れるものは、立派な料理人と、食器くらいのものでした。
他の街から料理人になりたい人間を集めて育てても足りなかったので、食器をたくさん作って売ることにしました。
食事好きの街のチャイボで作られた食器という宣伝で、食器はたくさん売れました。
あまりにも売れすぎてしまい、今度は食器を作る材料が足りなくなってしまいました。
しかたなく、売り物の中にこっそり自分たちが使っていた食器を、少しずつ混ぜて売って、足りない分をごまかしました。
おかげで、十分な食料の量が確保できるようになりました。
その頃には、街で働く料理人は誰一人残っておらず、自分たちが食事をするための食器も、食料を確保するために売ってしまい、人々の手元には、ただ調理されるのを待っている食材だけが残っていました。
食べ物だけであふれた街、チャイボ。
チャイボの人々は、食べることは大好きですが、料理だけはひときわ苦手なのでした。