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境界線の向こう側  作者: 柚子
9/74

【9】

町を歩いていると様々なお店がある。しかし、どのお店を見ても女性らしいデザインや色使いが少なく機能性重視みたいだ。生死を伴う冒険者の装備は納得できるが、普段お家で使うには少々味気ない。


女性が毎日使う小物入れ用のポーチや巾着を扱う露店がないことに気づいた。

露店で大量の生地を買うことは無理だが布地の端切れは安く売られている。


洋子は数種類の端切れを買い自分でポーチや巾着袋を作った。リボンで縁取ったり刺繍をしたり、ボタンやビーズを付けたりして可愛く飾った。


露店を新規で出すのは課税されたり場所代が発生するので避けたい。

双龍の出会いをしたお店【ローザンヌ魔法のお店】の店主に、スペースの一角に置いて欲しいと頼むことにした。


「あらヨウコ、久しぶりね」

店主は洋子の名を正しく発音できるらしい。

『ローザさん、この品々をここで売らせて欲しいんです』

持参したポーチや巾着袋を見せた。

「いいわね。魔法ではなくヨウコが針と糸で縫ったから温かみのある品々に仕上がってるわ。みんなにナイショで置いてあげる。“五色を纏う黒魔女”さん」

『ありがとう!もぉ~なんですか?その“五色を纏う黒魔女”って?』

ローザさんは洋子に紅茶の入った器を手渡してくれた。

「古い古い言い伝えよ。

〈混沌した世界を導く時空の旅人現る(あらわ)。別名“五色を纏う黒魔女”と呼ばれし者也〉ってあるの」

>>どうしよう?天空*城ラピュタの大ばば様の台詞に聞こえちゃうよー!


ローザさんは紅茶をひとくち飲むと、

「黒魔女の意味はね、闇魔法を操る黒髪の乙女だと言われているのよ?」

と、囁き声で言った。

洋子はずっと気になっていたことを尋ねた。

『ローザさん、一つ教えて下さい。この世界の人達で黒髪の方は少ない?』

「そうね、この世界には黒髪の人はいないわ。もしいるとしたら、自ら染めているわ」

>>だから黒髪の人を見なかったんだ。

『五色って何?』

「五色とは魔法属性の風・火・土・光・水の事よ?ふふふ。ごめんなさいね、ヨウコの雰囲気が似ているのよ」

『いえ、貴重なお話を聞けて楽しかったです。』




店内から何か強い気を感じる。


《紅蓮、瑠璃、感じる?》

[あぁ、近づいてみろよ]

[手に取ってみてね]


それは一本の剣だった。刃の部分は30㎝くらい。柄と鞘には紋様が描かれており濃紺の艶やかな生地で覆われている。柄にある魔石は透明で、

《綺麗…まるで星瞬く神秘な夜ね》

[お会いできるのを永い間お待ちしておりました。星夜(セイヤ)と申します]


《ぅぇええええっ!?》


予想していたとは言え、驚かないほうがおかしい。紅蓮は呆れたため息を、瑠璃は高らかな笑い声を上げた。

[この世は相対するものが]

[バランスを保ち存在する理]

[森羅万象の隠と陽]

[男と女、左と右、白と黒]

[星夜には伴侶となる]

[対の存在がいるはず]


[ 私は闇夜を司る者。相対する朝陽を司る者がおります]

《私は佐藤洋子です。よろしくね。星夜、伴侶を捜し出そう》




『ローザさん、この剣を下さい』

「ヨーコはWeatherを持つ者。持ち主に還るだけ。次に来るときは手作りのジャム頂戴ね?」

『ありがとう』

ニッコリ微笑むローザンヌこそ魔女みたいだと、頭の片隅を過ぎった。




剣を手で持ち歩くなんて無理なので、剣を収めるホルダーを買いに行った。冒険者が使用する店が集まっており、店構えや品揃えが同じように見える。

魔導器用のホルダーなので魔導器を扱うお店【ゲイル】がいいとローザさんから聞いていた。初依頼に迷ったお店だ。


「いらっしゃいま…」

店員が剣に釘付けになっていた。暫く間があって、

「魔導器ですね?素敵な剣っ!手入れですか?」

『いえ、携帯するホルダーが欲しいんです』

もう一本、対の刀を持つつもりだと伝えると軽くて丈夫なベルトタイプのホルダーを数種類見せて貰った。


結局、左右どちらも使えるタイプがいいと判断して剣を右側に刀を左側に装備するタイプを選んだ。

「当店は手入れも行っております。ぜひっ!またのお越しをお待ちしてます」





数日後、トイが私の剣を見て、目をまんまる見開いていた。

「ヨーコ、その剣は魔導器だろ?滅多に手に入らない代物じゃないか。どうしたんだよ、それ?」

>>上手く説明できそうもない。けど数少ない友達に嘘は嫌だ。

『ひとことでは説明できないの』

と、回答を避けちゃった。でも、

『ひとめ見て魔導器だとわかるトイも凄いね?』

「そりゃ 日頃見慣れてるからな。伊達に国の代表パーティ“暁月”に所属してねぇよ。詮索しないかわりに一度“暁月”に遊びに来いよ」


『ありがとう。トイ、話せる時がきたら「わかってるさ。ヨーコは俺の前では気を遣わなくていい。なぁ?」

ポンッと優しく頭に手を置いたトイのぬくもりは、洋子の心の奥底まで届いた。



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