【72】
現在、父ミカエルはラファエル達には褒美を与えて、自分はちゃっかり冠婚葬祭の為だと特別有給休暇を取得して森の隠れ家にいる。
緑茶を飲みつつ、洋子手作りのアベカワ餅と水羊羹を美味しそうに食べている姿は、元の世界で見慣れている普段の父だった。
〈この世界で私は大天使として君臨している。地球で徘徊中に、当時異世界渡りとして地球に来た母さんと出逢ったんだよ。私も母さんも互いに一目惚れだった。
ソロモンの娘で悪魔だと知っていたが逸る気持ちを芽生えた気持ちを抑える事は出来なかった。私達は大恋愛の末、周囲の反対や妨害を跳ね除けて結婚したんだよ。
地球では天使と悪魔が子を宿すと人間になる。だが、この世界では異端者としてどうなるかわからなかったのだ。だからこそ子供達を地球で育てようとしたんだ。〉
父は珍しく深刻な表情で話した。
〈初めて授かった愛しい息子は出生直後、重い病にかかった。陽介を助けたくて地球からこの世界に来ると、母さんの血筋が出て悪魔となった。母さんの兄が現魔王だから心配なく身を預けた。地球では亡くなったことにしてな〉
緑茶を飲み干して、いつものように洋子を優しい眼差しで見つめた。
〈突然、洋ちゃんがこの世界に来たのがわかって驚いたのなんの!母さんなんて毎日会えなくなるって泣き通しだったよ。
凪の思念が暴走して五色の龍達に影響が出るのを成仏させて止めるなんて芸当、洋ちゃん以外誰も出来ない。人間としての強さと弱さを兼ね備えた洋ちゃんにこの世界を委ねたんだよ?〉
『お父さん…』
〈私が天界、陽介が魔界、洋ちゃんが地上、母さんが地球を統べる事で理のバランスが保てる。ただ貴洋だけは人間だから短命なのが寂しくて堪らん。あのクソ真面目は地球での子孫繁栄の要だから、早く可愛い彼女と巡り合って欲しいものだな?〉
父はおはぎを頬張り至福の表情を浮かべた。
〈洋ちゃんはパパには連絡くれなかったじゃないか?母さんや貴洋とは話した癖に私を蔑ろにするから拗ねてみたんだ。そしたらラファエルが涙目で飛び出しちゃってさ?あいつ可愛いよね?〉
洋子はヤレヤレと肩を竦めて、
『ダメよ、お父さん?ラファエルさんに手を出しちゃ!』
〈母さん以外の女性には興味ないっ!〉
『お、お父さん。冗談だってば!ラファエルさんは男性でしょ?』
〈洋ちゃん、甘いなぁ〜愛に性別は無関係だぞ?〉
偉大なる存在大天使ミカエル様は緑茶のお代わりを美味しそうに飲んでいた。
今まで成り行きを見守っていたトイがスッと父の横に膝を曲げて騎士の一礼をした。
「ミカエル様いえ佐藤洋子さんのお父様。洋子さんを未来永劫幸せにすることを、夫、刀威射狗は誓います。娘さんを私に下さい」
父は目を細めた。トイの肩にポンッと両手を置いて言った。
〈洋ちゃんは昔から頑張り屋さんでね?私達にも愚痴は言わず唇を噛み締めてジッと堪え忍ぶ、慎ましい女性だった。
大人になると仕事に情熱を注ぐだけの毎日を流されまいと懸命に生きていた。だけど君に出逢って変わった。
女性として幸せになりたいと君の目を見て、君の声を聞いて、君の手を取り、君と歩んだ。
もう君の伴侶だ。君の番だよ?我が娘を宜しく頼むよ〉
「ありがとうございますっ!」
『お父さん、ありがとう!』
3人で涙を流しながら抱きしめ合った。
やがて森が光に包まれた時、空を一周する大きな大きな虹がかかった。父は笑顔で和菓子のお土産を手に天へ戻って行った。
ーーーーー
洋子が大切にしているものがある。新郎新婦の親族が総結して撮った一枚の写真だ。
洋子を囲うように初めて親子5人が揃った集合写真を見ていたら、洋子の周りに小さな天使の微笑みが5人。きっとトイと洋子の間に生まれる未来の子供達だ。
写真を嬉しそうに眺める洋子の傍らにトイが見守っている。優しく手を撫でながら囁いた。
「結婚式って幸せの連続だったな?」
『うん。私ね、結婚式初めてだったの!』
前夫とは学生同士だからと挙式はしなかった。
「じゃあ、最初で最後だな?」
トイは洋子を抱くと寝室へとキスを道標に導いていく。
二人仲良くベッドに横たわると、真面目な顔でトイは告げた。
「ヨウコ、俺達の子どもが欲しい」
『トイ…私もっ!』
寄せては返す波のように、
二人だけの愛の海で戯れる。
満ちては陰る月のように、
二人だけの愛の楽園へ翔ぶ。
「…ヨウコ…愛してる…ずっと…」
『トイ…愛してるぅうっ…っあぁ…ん』
二人の愛を紡いだ。
二人で愛を結んだ。
二人は愛を契った。
そして新しい命が宿る。
未来の光は確かに繋がっていくーー
《私は五色を纏う黒魔女洋子。闇魔法を操り時空の狭間を統べる者。だけど一人の女性、一人の妻、一人の母である。私一人では何も出来ない。愛する家族がいるから守りたい人達がいるから、私は夢幻の力を無限の力を発揮することが出来る。
この世界『ALIVE』で…》
ーーーーー完。
初めまして。ご愛読頂きまして誠にありがとうございます。
一年程費やして執筆しようと試みた挑戦は、閲覧数やブックマークやポイント評価という思いがけない応援が嬉しくて、無我夢中に書き連ねた作品になりました。
これからも宜しくお願い致します。




