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境界線の向こう側  作者: 柚子
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【6】

この世界は「氷雪の月」「花風の月」「火舞の月」「水流の月」「恵土の月」が各60日一周300日で一年と数える。


洋子は5日間連続で働いたので明日まで休んで勉強する予定だ。


ギルド鳳凰の翼にある本棚の横の机を陣取り、内容をスケッチブックに書き写した。運良く色鉛筆とラベルを持っていたので詳細を確認できるよう案引きをつけて色を塗っていく。

薬草採取方法や効能、食べられる植物危険な植物で一冊、人里に住む魔獣の生態や属性や対処方法、魔獣と獣の違い等で一冊。


夕方、キリのいいところで終了した。テスト勉強した充実感に似ていた。仕事や家事とはまた別の疲労感だった。



翌日。ひと段落ついたところでギルドを出て気分転換に露店をアチコチ見ていた。


とある店先に魔石や杖を売っていた。欲しいけど贅沢は出来ないと素通りしようとした。


ふと置いてある魔石を使ったアクセに目を奪われ、歩みを止めて魅入ってしまった。


2種類のブレスレットだった。

一方は金色に紅い石がついている。もう一方は銀色に青い石がついている。紋様みたいな細工が綺麗で思わず手に取った。


『素敵…どちらか一つだなんて決められないなぁ』


右手に金色、左手に銀色を着けてみた。どちらも洋子の手首にしっくり馴染んだ。買えないのに名残惜しい。


無言で成り行きを見守っていた全身黒服の女性店主が言った。

「呼ばれましたね、お嬢さん」


慌てて外そうとしても抜けなかった。

『いやっ、あの、外そうとしてるんですが?』


その様子に微笑む店主はキラキラした目をしていて悪戯っ子みたいだった。

「この腕輪は2つセットなんですよ。持ち主を選ぶので皆弾かれてしまう。だがお嬢さんは躊躇うことなく手に取った。有り金寄越せとは言わないから、ぜひ受け取って下され」


さすがに無料では後ろめたい。リュックの中から、コンビニで買っていた箱に入ったチョコレートを出した。

『シャイン国ではカカオは貴重だと知りました。良かったら受け取って下さい』


店主は両手で受け取ってニッコリ笑った。



ギルドから宿舎【ヤドリギ】へ帰宅途中、散歩しようとゆっくり歩いていた。


隣【ホテルシャイン】は冒険者ではなく旅行で訪れる人が対象の格式高い宿舎施設で、境界を兼ねている一本の大きな木【聖樹】がある。

聖樹を中心に大人が約10人が輪になって手を繋げるほど逞しい。

立ち止まって見ていたら、時間を忘れてしまいそうになるので今まで側を通るだけだった。


今日は枝葉が揺れる様を見たり、そよぐ風と夕日を浴びたいと根元まで近づいた。


太い幹にそっと手を触れた途端、視界が緑に覆われていた 。


戸惑いはあるものの不思議と怖いとか恐ろしいなど負の気持ちにはならなかったので様子見していた。



耳からではなく頭に直接声が聞こえた。男性と女性ふたりの声が重なり合い響いている。



[[異世界から来た娘よ]]



《私を呼ぶのは誰?》

[我は金朱の龍、紅蓮(グレン)

[私は蒼銀の龍、瑠璃(ルリ)



………!!!



地から天へ登るように絡み合う二頭の龍が現れた。一方は鮮やかな金の鱗の真紅龍で、もう一方は煌めく銀の鱗の蒼黒龍。

ド迫力な自己紹介でフリーズしてしまう私。



[我に真名を与えたのはお前だ]

[私に真名を決めたのは貴女よ]

《真名?初めて触れた時の印象があなたたちの真名となったのね?》


“紅蓮の焔みたい”

“瑠璃色の涙みたい”


《沈黙という了承でいい?紅蓮と瑠璃ね。私は佐藤洋子。どうぞよろしく』


[何かあれば名を呼べば応える]

[何かあれば名を呼ぶから返事してね]

[[洋子、よろしく]]


洋子が目を覚ますと、聖樹の根元にもたれて眠っていた。


《あれ!?紅蓮、瑠璃、夢?》

[ククク…夢の中でも逢える]

[夢ではなく現実よ?ふふふ…]

テレパシーみたいに想いを込めて言葉を発する感じで会話できた。


ステータスを見ると、装備に【双龍の腕環】と追記してあった。

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