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境界線の向こう側  作者: 柚子
58/74

【57】

洋子の任務は、手のひらにある小さな瓶に証拠となる印を付ける事だ。

安易な考えでは見破られてしまう。

ディアボロスの息がかかった者や、ミゲルの手下も城に大勢いる。


[洋子、その中身は媚薬の効果を強く秘めているが永遠に痺れが治らず半身不随になる猛毒だ]

《最低ね、口移しは厳禁だと言われなかったわ》

[万が一を考えると]

《直接手を降した者は死で黙秘と責任を?》


それより、毎晩オズ皇子の夜の営みは続いているのが気になる。日本で産まれ育った洋子には一夫多妻制が理解できないのだ。

防御結界をしているので淫らな声や振動は聞こえないが、一人でラブホにいるような感覚でイマイチ落ち着かない。


自室から廊下を歩いて詰所へ行くと、側室①アンナが窓の外を眺めていた。


『アンナ様、紅茶のお代わり飲みますか?』

無言のまま首を横に振るアンナ。

「ジュリは後悔しないの?」

『何をですか?』


「平凡な姫としての幸せより側室になったこと」


ジュリとして応えねば。

『ええ。私の家はオズ皇子の制裁を機に暴落しました。並大抵ならぬ苦労でした。後ろ指差され罵声を浴びて、名を隠して必死に生きてきました。

オズ皇子は悪くありません。お立場上当然の成り行きです。だから添い遂げる覚悟ですわ。でも!』

ジュリは満面の笑みを向けた。

『アンナ様はまだお若い。素敵な恋愛こそ女を磨く唯一の方法ですわ』

「ジュリはオズ皇子をお慕いしてるのね?私は実家を安泰させるただの餌、ただの糧。羨ましいですわ」

寂寞な表情は16才とは思えないほど、哀愁漂う雰囲気を帯びている。


『アンナ様、紅茶をどうぞお飲みになってね?失礼します』

再び廊下を歩きながら、オズ皇子が毎晩アマテラスをお召しになれば解決しそうだと思った。



今宵は独身最後の夜。

オズ皇子は自室で明日の打ち合わせをしていたら、剣より光の使者サンクチュアリーが出現した。

[オズ皇子、五色を纏う黒魔女より伝言がございます]


「ーーわかった。アリー、伝言感謝する」

[はい。コレを御婚姻御祝いとしてお受け下さいませ]



御婚姻の儀、当日。

純白の衣装を着た二人が神殿にて式を挙げた。

厳粛な空気の中、互いに王冠を頭に乗せて、金剛石を散りばめたブーケとマントを羽織る。

天龍が空から光のシャワーを放ち、二人が後光を差した神のように見える。光の雫は祝福の輝き。精霊達が踊るように舞を披露している。


「「おめでとうございます」」


大歓声の中、二人の姿が消えた。お披露目のため城のバルコニーへ転移したのだ。


民衆に笑顔で手を振る二人。バルコニー全体を覆うように光の粒子がキラキラ瞬いて聖樹の花びらが芳しく薫る。


「「おめでとうございます」」


シャイン国は希望に満ち溢れていた。

利発な少年が成熟した男性へ、可愛い少女が可憐な女性へ、まるで蛹が蝶へ変貌を遂げたかのような神秘を二人は魅せた。


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