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境界線の向こう側  作者: 柚子
55/74

【54】

城内の一室に案内された。


以前使用した部屋の真下の部屋だ。ちなみに容姿は銀髪に藍色の瞳に変幻した状態である。


設定は確か落ちぶれた貴族クリスティーヌ家の長女ジュリ。オズ皇子に恨みを持っていると有名な一族らしい。実際は病死したが巷では未だ行方不明。真実を知る者は看取ったオズ皇子だけだという。


唐突に部屋の扉が開いた。

足音を鳴らして不機嫌なオズ皇子が騎士を数人引き連れてやって来た。


さぁ、余興の始まりだ。洋子は片膝をついて一礼した。


「本日からお前を側室に迎えよう」

『オズ皇子、如何なさいましたか?御冗談は程々になさって下さいませ』

「いや。俺は本気だが?落ちぶれた貴族でもお前みたいに勝気で美しい女なら話は別だが?」

『私は、既に身分は剥奪された町娘です』


オズ皇子は洋子の間際まで近づき、

「ふん!媚びない女は嫌いじゃない。だが、ツレない女を組み伏せるのも一興だろ?」

と、洋子の顎を指で持ち上げた。

「俺の命令には誰も逆らえん」


洋子は慈愛に満ちた女性独特の花が咲いたような微笑みを浮かべた。

『オズ皇子、貴方が望むならば私は従うまで。私に御寵愛下さるのですか?』

オズ皇子は返事の代わりに激しく唇を奪った。


………ガタッ!!


濃厚なキスの場面に騎士の一人が鉾を落とした。

「お、恐れながら、もも申し上げます。オズ皇子、御戯れが過ぎます。火のない処に煙は立たないと申します」

騎士のミゲルが震えながらも声をかけるとオズ皇子は自分の唇をペロリと音を立てて、妖しく舐めた。

ムッとしながらマントを翻して立ち上がった際、洋子に流し目を向けた。

「お前の言う通りだミゲル。この女は側室の部屋に案内させろ。夜伽が楽しみだ」


頭を下げたままの洋子に、

「ご側室様、お部屋にご案内致します」

と、ミゲルは洋子を立たせた。


「さぁ、ここだ。お風呂やトイレは右側のカーテン奥だ。夜具はその棚にあるから今のうちに干して置くといい」

『ご親切にありがとうございます』

「何かあれば階段横の詰所に声をかければいい」

『はい。お世話になります』

キャラ設定上、廊下に出てミゲルを見送った。

布団やシーツを干しながら、洋子は田舎から出てきた元貴族の娘を演じていた。



御婚姻の儀まであと一ヶ月。今のうちに芽を潰しにかかるだろう。クリスティーヌ家が動けば反対派は接触を試みるだろう。



オズ皇子は側室が3人いる。アマテラスの顔を立てるため、婚約前に7人解雇したという。この世界では一週間は7日ではなく5日である。

>>と、いうことは一晩で二人?若い頃はお盛んだったのねー!


洋子はオバちゃんモードになっていた思考回路を修復し、詰所に挨拶した。

『皆様、ジュリと申します。22才です』

>>8つもサバを読むなんて無理があるわっ!

「へええぇ!貴女、オバちゃんね!」

側室①アンナ16才。

>>って、若っ!!いつからオズ皇子の御相手してるの?

「みすぼらしい装飾品ね?貴女の出身は?」

側室②マチルダ19才。

>>龍達にも協力して貰い、魔導器も変幻させてるからよ?

「貴女の噂、知ってるわ!彼の方に家の不正を暴かれたのよね?」

側室③セーラ18才。

>>アマテラスを敵視しているらしい。さすが詳しい!


「今夜は貴女が御相手だから私は早めに寝て体力温存しなきゃ」

「貴女のお話聞きたいわ!暴落後苦労されたのよね?」

「さぁ、お菓子があるわ!お茶会しましょ?」

女4人集まれば噂話を含む女子会トーク。同じ立場だからこそ話せることもある。アマテラスには無縁だろうと思った。

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