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境界線の向こう側  作者: 柚子
52/74

【52】

シヴァは護衛依頼が終わると、直ぐウェンディ国の隠れ家に帰ったのは、脱け殻のようなトイを見ていられなかったからだ。トイはプロ意識かプライドか遠征中はボロを出さなかったが、花鳥風月の家に戻ると自室から一歩も出なかった。


花鳥風月のパーティは、護衛依頼が最後の依頼だった。実は解散ならぬ休止しようと話していたのだ。トーマはシャイン国の専属魔導師に、ダニエルはギルド鳳凰の翼の講義師に、アルは師匠のパーティから勧誘を受けていた。家はダニエルが引継ぎ、ハウエルやルナは今まで通り暮らしていく。皆は準備で多忙だったので、トイは孤独と空虚な感情に身を委ねていた。


頭では理解できた。洋子は魔界の皇子と闘う訳じゃない。ただ気がかりの原因が魔界にあり赴くだけだと。

シヴァの魔力をフルに保つために森で待機させていたことは話してくれたが、目の前で攫われるような成り行きには、憤りより心配で心配で仕方ない。


「あのジャジャ馬め。帰ったらヤりまくるからな。抱き潰して離さないからな!」

悪態つきながら酒で憂さを晴らす。

「ヨウコ、早く逢いたい」


『私もよ、トイ』


「また空耳か」と、酒を煽るトイ。

『トイ、ただいま』


トイは息を飲んだ。酒を放り出して洋子を抱く。

「ヨウコ、お帰り」

悪態そっちのけで優しく甘く口づけをする。

「ヨウコ…会いたかった…声が…聞きたかった……触れて……感じたかっ……」

唇を吸い舌を絡めながら言葉にするので途切れがちになる。


「ヨウコ…愛してる」


トイは洋子が心身共に無傷かどうか心配していたのだ。今は元気な姿で戻っただけでひと安心。浮気しているかどうか関係ない。洋子の表情を見て接して触れられたら問題ない。例え心変わりしても受け入れるだろう。微かに臭う魔族の皇子や獣達の残り香に嫉妬しても…


『森の隠れ家に帰ろ?』

「あぁ。先ずは一緒にお風呂な?」

『ええっ?』

>>普段は恥ずかしいので一緒に入らないのに。

「ヨウコ?反省してるんだろ?」

>>ヤバい。いつスイッチ押したのかな?

「さて、どの男の胸に縋ったのかな、ヨウコちゃん?」

>>げっ!?男女の情ではないのに?

『トイ、これには深ぁい訳が…』

「ヨウコ?お風呂で追及するわ〜行くぞ?」


遮られたことに言い訳は通じないと観念した洋子は黙ってトイの胸に身体を預けた。トイは素直な洋子に内心うっとりしつつ、ギュッと抱き上げてお風呂へ向かった。


後日、シヴァは、トイは満面の笑み、洋子は死刑台に昇る囚人のようだったと皆に話していた。


お風呂から寝室に移動しながら皮肉るトイ。

「ヨウコちゃん、長旅お疲れ!」

『ぁううぅ〜、ちゃん付け止めて?』

「ヤだ。ふんっ!ヨウコちゃんは逞しい獅子の方が良いんだよな?精悍な豹の方が良いんだよな?」

『トイ?ヤキモチしてるのってLuciferじゃないの?』

「はぁあああ?ヤキモチ違うし。ムシャクシャしてるだけだからなっ。ただヨウコは聖獣使いだからなぁ〜」

『称号から消えてたよ?』

「ったく!“森の守護者”に“聖獣使い”が含まれてるんだよ。無知とは恐ろしい」

『………』


仲直りのキスをうなじに残すトイは、尾で洋子を包み込みながら背筋を撫でていき、妖艶なしぐさで煽ってゆく。

「ヨウコ、シよ?」

『っぁあん…私も空耳かな?ジャジャ馬とかヤりまくるとか抱き潰してとか?ゴチャゴチャ聞こ…』

トイは激しく唇を塞ぎ洋子を優しくベッドの中に閉じ込めた。寄り添いながら愛を語り伝え合う。


愛の海に溺れた。

愛の頂を駆けた。

愛の空へ翔んだ。


トイは言い聞かせるように、寝顔の洋子に甘く囁いた。

「ヨウコ、他の奴に抱かれるくらいなら死を選ぶってことくらいわかってる。だからこそ心配なんだ。その場凌ぎで抱かれるなんてしないし考えもしないだろ?頼むからずっと俺と一緒に生きてくれ。死を選ばず生を選べ」

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