【48】
爽やかな好青年は、高らかに笑いながら馬車に座るレジェンド級の美男子に酷似した容姿に変貌した。
「洋子って、メチャメチャ魔力あるんだな。一目見てわかるなんて凄いじゃーねぇか」
『ルシア様とお呼びしても?』
「Luciferと呼んでくれ。さぁ、馬車に乗って行こうか?」
『Lucifer、何処へ行くのですか?』
「ええっ?魔界に決まってるし。洋子に手を出す気はない。でも…」
ルシアは結界内のトイを睨んだ。
「あの黒狗をどうにかしろよ?オレは雑食なんだ」
洋子はルシアを熱く見た。
『トイを食べていいのは私だけです』
再び爆笑するルシアは、洋子の服を黒いドレスに変えた。
「じゃあ、洋子とオレはライバルだな」
馬車にいた偽物は式みたいだ。馬に変幻すると思いきや、漆黒の豹と黄金の獅子になった。
「黒狗達に手を出さない代わりに?」
ルシアは魅惑的な微笑みを浮かべて、洋子に流し目を向けた。
『Lucifer様と魔界へ参ります』
「ヨウコッ!!」
トイが結界内から叫んでいる。
洋子はシヴァに後を頼んで、防御魔方陣術が自動的に解除するよう設定した。
ルシアは黒豹に乗り、洋子は獅子に乗った。
〈黒魔女よ、しっかり掴まれ。異空間を渡るぞ〉
《うん。よろしくね》
一瞬でルシアと洋子の姿は消え去った。
結界が解けた瞬間、砂漠に影を落とす存在は空から舞い降りて来た。
ーー白鷹に変幻したシヴァだ。
〈黒狗、よく堪えたな〉
静かに悔し涙を流すトイにシヴァは声をかけた。
〈洋子からの命令だから怒るなよ?〉
再び変幻したシヴァは洋子の容姿になった。
〈洋子がナイルとチェルには記憶を一部上書きしたらしい〉
シヴァが洋子として、護衛依頼を継続させることになる。
ーーーーー
魔界は自然美溢れる場所だ。人族では耐えられない気温の変化や有毒地帯があり、魔族には暮らしやすい環境と言える。
ルシアの住処は魔鏡とも呼ばれる湖の中央が出入口らしい。ルシアは洋子の右肩を抱き、沈むように中へ深く堕ちてゆく…
「洋子にはルシアではなくLuciferと呼んで欲しいのはな?」
高貴な力ある魔族には性別がない。時と場合により男性にも女性にも変化できると言い、[ルシア]の時は女性で[Lucifer]の時は男性。産まれた時が真の性別となるので真名は[Lucifer]と教えてくれた。
洋子の耳には日本語には聞こえにくい。英語だと偽りなく発音できるようだ。
「洋子の発音は心地良い。これは伴侶を見つける鍵なんだ。魔族は己の力が唯一の身分だ。一番力を有する者が王になる。だから我が父が魔王として君臨している。両性を持つ魔族は伴侶を持たなければ血は絶える」
足が地に着いた。
結界が解かれて、そびえ立つ扉が現れて自動的に開いた。洋館というより、沖縄の首里城を黒色に置き換えたような建物だった。表の守護獣は洋子が乗った黄金の獅子「ゼウス」裏の守護獣はルシアが乗った黒豹「ハデス」だった。洋子は頭の片隅でギリシャ神話はあまり知らないと愚痴っていた。
ルシアは居間へ案内して、竹で作ったソファに座った。洋子の森の隠れ家と似た雰囲気で、正直居心地良さそうだった。
「なぁ、洋子?オレの伴侶になれ」




