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境界線の向こう側  作者: 柚子
47/74

【47】

ウォーター国からシャイン国までの護衛をする人達はシャイン国へ赴き4年間寮生活となる若者2名で、まだ15歳だという。


皆でギルドの待合室で待機していた。今回花鳥風月が指名されたのは、ベテランパーティであり、女性がいる事だった。女性の冒険者は少なくないが、ウォーター国からシャイン国までより安全に、且つ不慣れな旅路で同性がいたら過ごしやすいだろうと考えた親心は理解できた。


国内ならば一部転移魔方陣が描かれた場所はある。しかし国を跨ぐとなると維持や管理が難しい。自然災害を踏まえ、各国の国境の防御魔方陣術が施されているのだ。洋子の単独での転移は規格外とも言える。


「「おはようございます」」

まだ幼さが残る希望に満ちた笑顔がとても清々しい。洋子は眩しさに目を細めながら自分の年齢を痛感していた。

一人はナイル、一人はチェル。2人は幼馴染みで、物心付く前から互いに切磋琢磨するうち、村で首位を争うライバルになったという。


皆は連携を取りながら歩みを進めていく。洋子は一番近い位置、つまりナイルとチェルが並んで歩く一歩後ろにいたので、二人の会話が聞こえる距離だった。初めて目にするもの、初めて感じることを話す2人がやっぱり眩しかった。


ウォーター国の国境を越えて、サンド国に入った。ここで一泊する。公共の宿舎はリーズナブルな割に警備が整っている。二人が少しでも寛げるよう配慮したのだ。


眠る前、洋子はシヴァに話しかけた。

《シヴァ、森の様子はどう?》

〈いつも通りだ。洋子はどうだ?〉

《胸騒ぎは収まったけど、モヤモヤしたまま》

〈洋子の予感は侮れぬ。気をつけろよ?〉

《うん。ありがと、シヴァ》

〈お休み、洋子〉


翌朝、サンド国を1日で抜けようと、早起きして出発した。



………胸騒ぎがする。何だろう?



遠くで人影が見える。元凶はその奥にある馬車だろう。命に関わることではないと第六感が告げているが、厄介事に巻き込まれるのは間違いないだろう。


パーティの皆は洋子の合図に警戒し機敏に対応してくれる。ナイルとチェルは気付かずにいる。洋子はサッと前に出た。

やはり人だ。恐縮した表情が見えた。


「すみません。御礼は致します。馬車が故障して身動きとれません」

気さくに話しかけてきたのは、爽やかな好青年だ。馬車の中にはレジェンド級の美男子が気怠そうに座っていた。波打つ茶色の髪は艶やかに揺れている。透き通るような肌にサクランボのような唇、アメジストのような瞳。しかし…


洋子は膝を地に付けて一礼した。

『初めまして。佐藤洋子です。貴方様はルシア様とお見受けします』

噂名高い魔界の皇子だ。


「へええぇ!幻惑は効かないんだね」

「Lucifer様、黒魔女は私達と相見える存在。気合いが足りませんよ?初めまして洋子様。一瞬で見抜く洞察力、皆に結界をかけた守護力。そして自身は生身の身体で向き合う潔さ…素晴らしいですね。ぜひ魔界へお越し頂きたい」


笑顔で話す彼だったが、洋子は背筋がゾクゾクした。ここで疑問点は解決せねば。

『いえ、私は貴方様こそルシア様だと申し上げております。違いますか?』

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