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境界線の向こう側  作者: 柚子
46/74

【46】

この世界最北にあるウォーター国は水の街である。湖と海は観光地として不動の人気を誇る場所で、シャイン国と同様、治安は良いと噂されている。


洋子は到着して諸手続が完了すると、一番に聖樹に会いに来た。


《瑠璃、いつもと変わらない?》

[ええ。龍は距離や時間を厭わない存在。洋子が危惧しなくても大丈夫よ]

《よかった。頭では理解してるのよ?》

[ふふ。白羽は見張り役かい?]

《シヴァ?ええ。(うち)をね?そろそろ戻るわ》


実は聖樹は各国数本生えている。中でも最古の樹木には、根付いた大地の奥深くに、聖樹の力を宿す勾玉のようなものが存在する。

これは守護珠と呼ばれている。

昔から「守護珠が濁り邪気を纏えば魔族現る」という言い伝えがあった。不思議と洋子と龍が同時に気を送れば邪気を祓えると知り、順に浄化していた。今で各国全ての聖樹の守護珠に触れたことになり、洋子は安堵感に包まれた。


依頼は順調に進んだ。最後の依頼はウォーター国からシャイン国への護衛依頼だった。スケジュールに余裕があり、数日空いたので別行動することになった。

トーマとアルは依頼を受け、ダニエルはギルド主催の講習コーチに任命されていた。

洋子も個人依頼を受注しに行こうとホテルの部屋を出たら、廊下の壁にもたれているトイがいた。


「ヨウコ、どこか行くのか?」

『個人依頼を受けようかと思って』

サッと洋子の腕を掴み、トイの部屋に入った。

『えっ?どうし…「なぁ?依頼(しごと)優先?俺じゃなくて?」

強い眼差しは避けられない。熱く見つめられるだけでドキドキしてしまう。

『ト、トイが最優先』

洋子の回答に笑顔が溢れたトイは、ベッドに飛び込み、銃弾より熱いキスを顔中に浴びせた。

悪戯な瞳キラ☆キラさせて、

「このまま部屋でイチャイチャする?」

耳元で囁くトイに、

『二人でお出かけしたい』

「ホントに?依頼じゃなくて?鍛錬じゃなくて?」

『うん。一緒に海に行きたいな』

ギュッと抱きついてみた。

キョトンとしたトイを見て顔が綻んだ。



二人で知らない地を歩く。

同じ時間を過ごしている。

その事実が嬉しくて仕方ない。

初めて見て聞いて触れていき、

二人で共有した時間となる。

今日が明日に、今日が過去に。

やがて思い出となっていく…



湖に反射して揺れ動く夕日と、遥か彼方に輝く夕日を眺めていると、洋子は優しく抱き寄せられて、そのまま甘美な口づけを交わした。

『今日はありがと。楽しかった!』

「バカ。まだ終わってないしっ。ほら、部屋に帰ろう?」


結局、護衛依頼前日までトイと二人で楽しんだ。

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