【46】
この世界最北にあるウォーター国は水の街である。湖と海は観光地として不動の人気を誇る場所で、シャイン国と同様、治安は良いと噂されている。
洋子は到着して諸手続が完了すると、一番に聖樹に会いに来た。
《瑠璃、いつもと変わらない?》
[ええ。龍は距離や時間を厭わない存在。洋子が危惧しなくても大丈夫よ]
《よかった。頭では理解してるのよ?》
[ふふ。白羽は見張り役かい?]
《シヴァ?ええ。森をね?そろそろ戻るわ》
実は聖樹は各国数本生えている。中でも最古の樹木には、根付いた大地の奥深くに、聖樹の力を宿す勾玉のようなものが存在する。
これは守護珠と呼ばれている。
昔から「守護珠が濁り邪気を纏えば魔族現る」という言い伝えがあった。不思議と洋子と龍が同時に気を送れば邪気を祓えると知り、順に浄化していた。今で各国全ての聖樹の守護珠に触れたことになり、洋子は安堵感に包まれた。
依頼は順調に進んだ。最後の依頼はウォーター国からシャイン国への護衛依頼だった。スケジュールに余裕があり、数日空いたので別行動することになった。
トーマとアルは依頼を受け、ダニエルはギルド主催の講習コーチに任命されていた。
洋子も個人依頼を受注しに行こうとホテルの部屋を出たら、廊下の壁にもたれているトイがいた。
「ヨウコ、どこか行くのか?」
『個人依頼を受けようかと思って』
サッと洋子の腕を掴み、トイの部屋に入った。
『えっ?どうし…「なぁ?依頼優先?俺じゃなくて?」
強い眼差しは避けられない。熱く見つめられるだけでドキドキしてしまう。
『ト、トイが最優先』
洋子の回答に笑顔が溢れたトイは、ベッドに飛び込み、銃弾より熱いキスを顔中に浴びせた。
悪戯な瞳キラ☆キラさせて、
「このまま部屋でイチャイチャする?」
耳元で囁くトイに、
『二人でお出かけしたい』
「ホントに?依頼じゃなくて?鍛錬じゃなくて?」
『うん。一緒に海に行きたいな』
ギュッと抱きついてみた。
キョトンとしたトイを見て顔が綻んだ。
二人で知らない地を歩く。
同じ時間を過ごしている。
その事実が嬉しくて仕方ない。
初めて見て聞いて触れていき、
二人で共有した時間となる。
今日が明日に、今日が過去に。
やがて思い出となっていく…
湖に反射して揺れ動く夕日と、遥か彼方に輝く夕日を眺めていると、洋子は優しく抱き寄せられて、そのまま甘美な口づけを交わした。
『今日はありがと。楽しかった!』
「バカ。まだ終わってないしっ。ほら、部屋に帰ろう?」
結局、護衛依頼前日までトイと二人で楽しんだ。




