【43】
ギルド“鳳凰の翼”へ赴いた。スペクトルに報告して極秘指名依頼は終了だ。
「ヨーコにゃん、ありがとうございました」
洋子は黙ったまま首を横に振った。
『まだ終わっていません。炎蝶を強奪した実行犯は捕らえましたが、炎蝶を得ようとした依頼側は捕まえておりません』
スペクトルは洋子の瞳をジッと見たが小さな体を竦めた。
『私は闇魔法を操る者。催眠術は効きません』
「ヨーコにゃんには無駄にゃー」
スペクトルは洋子に真剣な眼差しを向けた。
「これはギルド鳳凰の翼に蔓延る因縁が今も続いているんだ。聞いてくれるかにゃん?」
その昔、各国に一つ世界に五つしかない初期に結成された由緒ある最古ファイア国のギルドが“鳳凰の翼”だ。当時ギルド内を掌握していた長は『エイミー・フライ』スペクトルの祖先である。
エイミーは自他共に認める美貌の持ち主で引く手数多な女性だった。自分が想いを寄せる相手はエイミーを想うという人も多かった。
しかし美貌も永久ではない。高嶺の花エイミーにも老いや衰えはやってくる。永遠の若さを求めて契りを交わしたのは魔族だった。
スペクトルの背中にある翼は魔族の血が流れている証だ。それを良く思わないギルド鳳凰の翼の幹部達はフライ家を排除したいのだという。
「幹部達は私が失脚するきっかけを探すだけではない。策略するんだにゃ」
洋子は歌うように言葉を紡いだのは平家物語の冒頭だった。
『祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず。ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ 』
スペクトルは洋子の言葉に聞き入っていた。
『これは私が以前居た場所の古の物語です。
祇園精舎の鐘の音には、すべてのものは常に変化し同じところにとどまることはないという響きがある。沙羅双樹の花の色は、盛んな者も必ず衰えるという道理を表している。思い上がって得意になっている人も、その栄華は長くは続かない。それはちょうど覚めやすいと言われている“春の夜の夢”のようである。勢いが盛んな者も最終的には滅んでしまう。まったくもって風の前にさらされて散っていく塵と同じである。
という意味です。エイミーさんも彼女を愛した魔族の方も幹部達も皆同じです。そしてペクにゃんと私もまた…
魔族の気配は闇魔石がペクにゃん自身から放っていた気と共鳴していたのですね。秘密は守ります。何かありましたら遣いを寄越して下さい』
洋子は一礼してギルド長の部屋を退室した。思案顔のスペクトルを残して…
洋子はアスランへ極秘指名依頼が完了したのでギルドカードを上書きして貰うと、報酬の全額が支払われていた。
ギルドカードを確認すると、装備の欄に【闇竜の紅玉】称号の欄に【魔蟲の友】と記されていたので、とても驚いた。




