表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界線の向こう側  作者: 柚子
38/74

【38】

洋子を自分の内に取り込み、高らかに笑う闇竜は嬉しそうだった。


〈儂の封印が解かれたあの夜。暴走を止めようと妖狐が飛び込んできた。少女はまだ力が解放される前だった。黒狗が少女を庇って息絶えた時、少女の怨みが覆い闇に染まった。もう儂の敵ではない。哀しみに嘆き悲しみを歎くことも無く一撃で黄泉へ送った。儂からの(はなむけ)のつもりだ。

儂の名は無い。莫大な力、膨大な力故に恐れられ祀られていただけ〉


自嘲気味な声は先程とは違い哀愁を帯びている。

〈儂を恨むか?蔑むか?少女の魂を継ぐ者よ〉


《恨み妬み怨み嫉み…人として当然抱く感情を持てる間は、まだ救いがある。少女は人のまま死ねた。短くも一生を終えた。引導を渡した貴方のおかげ。

闇の心は這うように沿うように纏うもの。誰もが持つ誰もが有する闇の心。私にもある感情で一部であり全部。闇は恐れるものじゃない。ゆらゆら揺られている夢の淵で漂う籠のようなもの。

さぁ、私を見て?触れて?導いて?》



闇竜に流れ込んでくる洋子の心情。

父のように気高く母のように慈悲深い。兄のように冷静沈着で姉のように天真爛漫だ。弟のように度胸があり妹のように愛敬がある。

全て兼ね備えているのに不足していたのは想い人。愛しい人がいるから鬼にも神にもなると微笑むのは天使か悪魔か。

人の心は表裏、人こそ奇異で奇想天外な発想をする不思議そのもの。



〈儂と共に歩むつもりか?〉

《ええ。貴方は玄丞(げんじょう)。私を助けて欲しいし、私は貴方を助けたい》

再び高らかに笑う闇竜。

〈良い名だ。気に入ったぞ、佐藤洋子。儂は這うように沿うように貴女の運命に寄り添っていこうぞ?〉

《ありがとう》



本は洋子の右眼に吸い込まれていき消滅した。


[洋子っ!!]

《闇竜と共に。名は玄丞。皆、よろしくね》


紅蓮[褒めるべきか?]

瑠璃[諌めるべきか?]

紫雲[称えるべきか?]

琥珀[呆れるべきか?]

桜翠[諭すべきか?]


五色の龍達の言葉に思わず笑うシヴァと闇竜。


「ヨウコォオオーーー!!」

シヴァは空を仰ぎながら、

[一番煩いのを忘れてたわ]

トイは必死の形相で飛ぶように走って来た。

「ヨウコのバカ。心配させやがって」


洋子は大人しくトイの胸に凭れて訊いた。

『ゴメンなさい。あの長距離の道で匂いを辿ってきたの?』

「ああ!もう逃がさない。絶対側に居るって言っただろ?」


〈げっ!?猪突猛進な黒狗まで出て来た!胡散臭い白梟だけじゃないのか?〉

[ヤるなら今だな]

「本気でシメルぞ]

〈ギャー!!コイツら嫌ぁい!〉

いつもより2トーン低い声で言った。

《な、か、よ、く、し、て、ね、?》

〈[「ーーーーーはい〉]」

異口同音に3声が聞こえた。



「俺を置いて行くなよ〜〜!」

実家でボッチ確定のトーマだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ