【36】
トイと洋子が結ばれた事実に、皆、お祭り騒ぎになった。二人の関係を見守って来たパーティの仲間達は焦れったいと、早く告白してしまえと、日々トイを推していたのだ。
昨夜、トーマが洋子の頬にキスしたのも、久し振りに会えたトイの気持ちを煽るため、わざとらしい。トーマが不敵な微笑みでトイをからかうのは仕方ないことかもしれない。
洋子プチ情報⑩一日中寝室に篭っていたのでお祭り騒ぎは知りません、はい。いつの間にか体はお風呂でさっぱりして、気がついたらご飯や果物を食べさせてくれたトイを二度と挑発しません。
翌朝、ダニエルは隠れ家の屋上のベンチに座っていた。鳥人族は空を見上げると結界が施されている時は肌で感じ取れる。ただ町や村など大規模な結界は目視できる。魔力が強いから隠し切れず魔方陣や魔力の色が現れてしまうのだ。
しかし隠れ家と森を覆う洋子の魔方陣は目に見えない。わからない。
[繊細かつ完璧な魔方陣は目に見えぬ。決して察知できぬ]
「シヴァ様。貴方様のお力ですか?」
[いや。洋子一人の力だ。洋子がこの森に入った瞬間、凪の結界は既に切れている]
『おはよう!シヴァ、ダニエル』
「ヨーコ、ハウエルも一度来たいんだってさ」
『大歓迎よ!ハウエルなら一人で飛んで来れる?』
ダニエルは呆れた顔で、
「絶対無理だからな、他国との境界線を容易く越えるのはヨーコだけだ」
洋子は勝ち誇った微笑みで、
『そのお言葉を撤回させてあげるわ』
シヴァとダニエルがヒソヒソ話している。
[洋子のマジはハンパないぞ!?]
「メチャメチャ怖いんですけどぉ!?」
『花鳥風月の家とここを繋げたいのよ。ダメ?』
洋子の無邪気な提案に、シヴァとダニエルはフリーズしてしまった。
『トイは花鳥風月の家を拠点としてるし、私は隠れ家に居たいし、遠距離恋愛なんてイヤだもん』
シヴァはニヤリとしながら、
[恋した洋子は無敵だな]
「“だもん”って!ヨーコが可愛くなってるぞ?」
[洋子は心の時計が止まっていたんだ。やっと動いたんだよ]
「恋する女ってスゴイなー」
『ふふふ。女は鬼にも神にもなるのよ?』
再びシヴァとダニエルはフリーズした。
洋子は寝室と居間の間に門を設置した。見た目は木製の扉があるだけの部屋だ。
普段はシャイン国の花鳥風月の家の納屋に繋げているが、状況に応じて場所を変えることも出来る。他の人達に悟られないように門を通過できるのは、洋子が指名した花鳥風月の仲間達だけだ。
今回はギルドを通して遠征したので、帰路はいつも通り辿ることになる。
「「「「ぅわぁああ〜!納屋だっ!」」」」
偶然、ジャガイモに似た野菜を取りに納屋にいたルナが立ったまま気絶しかけたのは、後日の笑い話だ。




