【35】
洋子は目を覚ました。いつものように起きようとしたら、背中越しに抱きしめられていることに気づいた。
身動きした洋子を逃がさないようギュッと引き寄せるトイが寝息を立てて眠っている。
ハッ!っと、走馬灯のように思い出した。
昨夜はトイと濃密な一夜を過ごしたのだ。
今はまだ夜明け前だからどう言えばいいんだろう?急に目が冴えたのだ。体の奥にある気怠さを残した感覚に、疼くような甘い余韻にドキドキした。
もう少し眠ろうとしてもトイの寝息が昨夜の甘い吐息を連想させ、赤裸々に強請ったり悦びに喘いだりしたことまで鮮明に思い出してしまった。
>>ぅわぁああ〜!恥ずかしいよぉ。
ククク…と低く色気ある声で笑うトイ。耳まで赤く染めた洋子の心情が手に取るようにわかるみたい。
「ヨウコ、こっち向けよ?」
>>ぁううぅ〜!無理ぃい〜!耳たぶを甘噛みしながら喋らないでよぉ?
「横顔も可愛いけど、は、や、く?」
>>ひゃあぁあ〜!強引に体を反転させられちゃったよぉお〜。
「ヨウコ、可愛い。艶姿もキレイ過ぎて理性ぶっ飛びそうだったわ、マジで」
髪先まで及ぶ愛撫に思わず甘い吐息が漏れた。
トイは嬉しそうに唇や舌で弄るのを止めない。背中を尾で支えてくれつつ、全身で愛を伝えるので、身悶えながらトイに縋る。愛しい人に伝えたいから。
>>約10年振りのピロトークに感度が良過ぎ。私ってば、どうしちゃったんだろ?
そんな洋子をトイは悪戯な少年みたいな顔で見つめた。
「ヨウコったら知らないの?獣人族は触れ合う度に感度が増すんだ。それが相手にもシンクロするんだ。」
>>ぅえええぇっ!?お互い感情がダダ漏れってこと?
マトモにトイの金色の瞳を見てしまう。男の色香を放つ甘い瞳を…
「ヨウコ、愛してる」
洋子は戯れ中ではなく、初めて言葉にした。
『トイが大好きっ。貴方を愛してる』
「ヨウコ…」
昨夜、トイは欲情に駆られて抱くのは嫌だと、じっくり甘く重なって溶けていきたいと、優しく優しく抱いてくれた。今、鈍い光を灯したトイの瞳は射るように熱い。見つめられるだけで火照っていく敏感な体にトイが気づかない筈はない。
「ヨウコから大好きだって言われたら、愛してるって聞いたら、俺…」
嬉し涙を溢れさせたトイの頬に唇を押し当てて、
『トイったらバカね。愛しい人となら痛くても平気なの』
「バカはヨウコだ。知らないからな?俺、止まんないから。抑えられないから」
『覚悟しろって言ったのはトイよ?』
トイは焦らすように瞼にふんわりキスを落とした。
そして朝が来る。
いつもより輝いて見える特別な朝。この世界で見る今までで一番素敵な朝陽が昇る。まるでスポットライトのように窓から射すように二人を照らしている光は眩しくて暖かい。
トイの愛撫に翻弄された洋子は眠っている。洋子をそっとバスタオルに包んで抱き上げ、お風呂に行くトイは、以前に比べて精悍な表情を浮かべていた。




