【33】
あれから啄木鳥食堂を出て買物をした。暫く隠れ家で寛ぐ予定で、武器の整備や調達も兼ねていた。アチコチ露店を見たりお店に入って商品を購入しながら、ゆっくりと歩みを進めた。
周りの視線はトーマへ釘付けだった。トーマや鈴木店長と同じ境遇の方は何人かいるみたい。でも晒されている感は否めない。英雄視というより好奇な視線に感じるのだ。
「藤原様、ようこそお出で下さいました」
>>重いっ、重圧に耐えられないよー。
トーマは何食わぬ顔で、杖に装置仕様する魔石を属性毎に見ている。
………!!!
小さいながらも良質な闇の魔石がある。
『この魔石は売り物ですか?』
思わず店員に問うと、
「お連れ様もお目が高い。光属性に相対する闇属性の魔石ですが取り扱いに難しく封印してございます。お売りできるのはこの封印に弾かれぬ方でございます」
洋子はサッと手に取り店員の前に差し出すと、
『この魔石を下さい』
「かっ、畏まりました」
何故だか小刻みに震えている。
『大丈夫ですか?』
店員の表情がフリーズしたままだ。そこへ、
「店員がはしたない真似を。この度は誠に申し訳ございません」
販売員独特の90度の一礼をしたのは店長みたい。他の店員とタイの色が違うのだ。
「お詫びとしてこの魔石をお受け取り下さい。闇属性を持つ黒魔女様。貴女様には容易くも闇属性を持たぬ者には強すぎる力なのです」
トーマはヤレヤレといった顔つきで、
「店長、闇の魔石を店頭に出していたのか?」
「いえ。普段は倉庫の奥に収めてあります。不思議ですね」
首を傾げた店長に肩に手を置くトーマ。
「店長、お疲れ様」
洋子が無意識に“喚んだと察したのだろう。
森の入り口に到達すると、一気に隠れ家まで転移した。畑には数多の作物が実り、聖樹の若木が植えられている。
「「「「良いところだー!」」」」
玄関を開けて部屋を案内した。
夕食はブイヤベース風のスープとパン、豚に似た魔獣の肉に醤油ベースの甘辛タレ焼きと果物だった。
洋子が作っている間に皆で温泉に入って貰った。
「「「「美味いっ!!」」」」
お酒も飲んでソファーで寛ぐトイとアル。梁の上で寛ぐシヴァとダニエル。トーマは果実酒を飲みながらポツリと言った。
「ヨウコの黒髪が羨ましいな。俺は髪も目も母譲りなんだ」
トーマは周りの人達から父との共通点を探すような目で見られていたに違いない。
『斗真はきっと拓磨さんの内面を引き継いでいるのね。芯の強さと寡黙さと配慮深さを。私のいた世界には魔法はなく魔導師は存在しない。拓磨さんは誇りを持って仕事していたはずだわ。今のトーマを見て、愛する妻と似た容姿をとてもお喜びになっていると思うよ?』
「敵わないな、ヨウコには」
椅子から立ち上がったトーマは洋子の側に来た。
「ありがとう」
素早く洋子の頬にキスをした。間近で見るトーマの瞳は寄せては返す波のように静かに揺れていた。
そのまま部屋から出て行くトーマの後ろ姿を見送ると、食卓を片付け始めた。




