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境界線の向こう側  作者: 柚子
32/74

【32】

突然、トイはサッと飛び退いた。

殺気溢れる姿は白銀の翼…

「シヴァ、何するんだよ?」

[遅いっ!]

ジロリと睨むシヴァの迫力は凄い。

「ふん!俺達は予めヨウコが春の宴が終わったら姿を消すとは知ってたが、あんなイリュージョン魅せるとは思わなくってさ!事後処理でバタついてたんだよ」


ーーそう。洋子の“一大決心”とは、さりげなく姿を消そうと思っていたのを、急遽魔法お披露目中に皆の前で姿を消したことが想定外だったのだ。


トーマが悪戯な微笑みを浮かべて、

「王族は騒ぐフリしてたが棒読みで演技が下手過ぎだし?パーティでの捜索から遠征に切り替えるまでがな、意外に時間かかったんだわ」

横からダニエルが真面目な顔を作って、

「ギルドは静観してたな。カイルさんが箝口令出してたとか何とか」

アルはムンクの叫びみたいなポーズで、

「黒魔女を探す者は祟られるとか呪い返しされるとか噂されてたなぁ〜」


『……………』

もう、何も聞くまい。人の噂も75日とは言うけれど果たして大丈夫だろうか?今度シャイン国へ行く時は変幻していこうと誓った。




皆を隠れ家に案内する前に腹ごしらえをしようと、啄木鳥食堂に来た。


「佐藤!藤原!お前達知り合いだったのか?」

>>藤原!?誰のこと?


「おいおい親父さん!?これからヨウコに種明かしするのにバラしてどうするよ?」

苦笑しながら軽く睨むのはトーマだ。鈴木店長はお玉片手に「悪りぃ悪りぃ」と軽いノリで謝った。


唖然とトーマの横顔を見つめる洋子を座敷へ案内する。靴を無意識に脱いで、座椅子に座ったのを確認してから口を開いた。


「俺は藤原斗真ふじわらとうま。父親は藤原拓磨ふじわらたくま。父がヨウコと同じ異世界渡りだ」

いや、それよりも、

『トーマ、先に注文しよ?』

相変わらずマイペースな洋子に皆は和んだ。




トイとダニエルは日替わり定食、トーマは中華丼、アルは牛丼、洋子はかつ丼を頼んだ。

美味しいご飯を食べてホッと緑茶を飲む頃にトーマは話し出した。


「父拓磨は29才の時この世界ウェンディ国に来た。元登山部の仲間達との親睦会で、地元の山を散策中に飛ばされたという。

拓磨を助けたのは俺の祖父だった。この地では異世界渡りは英雄視されており敵視する者は稀だからな。近年は異世界渡りがいなかった。拓磨の前は200年程遡るらしい。丁重に扱われたのは過去の話ではないんだ」

自嘲気味に笑ったトーマは、父を通して苦労したのだろう。

「父は魔術師だった祖父から魔法を習い一人前になる頃、母と結ばれ俺が産まれた。祖父が王族の専属魔術師だったから自然と俺も同じ道を選んだんだ」


トーマはゆっくり緑茶を飲んだ。

「ヨウコがマイ辞典を見せてくれた時、読めない字が沢山あった。あれは日本語だろう?頼みがあるんだ」

ある日本語を通訳して欲しいから着いて来て欲しいと言った。断る理由もなく承諾すると、トーマは明日実家に案内すると伝えた。


『斗真は私が異世界渡りだとわかったのはいつ?』

「最初にヨウコのギルドカードを読めなかったから。シールドを外せないのは俺より魔術師として上だからさ。そんな奴は希少だからな」

>>やっぱり屈指の実力者なんだ。すごいなぁ〜斗真は。

「ヨーコはいい匂いするから何者だろうかと色々考えたんだぞ?」

>>ダニエルは鳥人族だから目や鼻が効くのだろう。ってどんな匂いするの?

「ヨーコの感知スキルは本来人族には会得出来ないんだぞ?」

アルはわざと声を秘そめて話した。


『皆、黙っ「俺が秘密にするよう言ったんだ!」

トイが洋子の謝罪を遮った。

「ほら、皆気にしてねーから食後のデザートにしようぜ?」

アルが注文したアンミツを皆で食べた。

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