【31】
シヴァが白梟ならば黒狗は今どうしているのだろう?
洋子の胸の内を悟ったのか[そのうちわかる]と意味深に笑うシヴァ。こういう時は何も語らず何も教えてくれないので肩を竦めて諦めた。
あと半月も経てばパーティ“花鳥風月”の皆がやって来る。ギルドを通して連絡が取れるから焦りはないけれど、何が起こるかわからないのが遠征だ。皆の道中の無事を祈りつつ眠った。
翌朝、隠れ家の大改造を行った。
ダイニングキッチンを広げ、壁沿いにソファを二つ置いた。横にもう一つ部屋を増築して、3段ベッドを左右に置いて目隠しカーテンを付けた。個室は無理だがプライベートは確保したいだろうから。
実は森の朽ちた廃材を魔法で再利用したので住人達(主に獣達)から感謝の言葉とともに種やら作物やら御礼の品を貰った。廃材は獣達では処分できず、森は荒れてしまうという。
隠れ家の左側には頑丈な柵が囲う畑があり種や薬草を植えた。右側にある井戸を掃除して、隠れ家の中にも畑の水撒き用にも使えるように直した。
洋子プチ情報⑧お風呂は温泉でお肌の調子が良くピカピカです。
朝は散歩と鍛練、昼は依頼と畑仕事、夜は勉強と森の見回りを行う生活を送った。
洋子の母親の実家は農家だ。祖父母の畑仕事を手伝っていたし、大自然の厳しさも身を以て知っていた。だからこそ…
『身から錆びが落ちてゆく感じがする』
洋子は囁くような声で呟いた。
この世界では道理なのか森の不思議なのか定かではないが作物はスクスク育ち、仲間達が到着する頃には実っていた。疑問をシヴァに訊ねると、
[この森は大地の加護を受けているからな、一般の物差しでは測れないだろうさ。洋子が手にかけたものだから当然なんだがな。害を成す者もおらぬ]
と述べ、聖樹へ向かった。
シヴァは最近、森の見回りを供にしなくなった。きっと目には見えない疎通方法があり、異変を瞬時に察知し対応できるからだろう。
サザンさんの依頼後、ギルドに来た。隠れ家の整備も終わり畑も落ち着いたので依頼受注しようと掲示板を見ていた。
………!!
何だかドキドキする。
目立たないよう瞬時にギルド外へ出た。
遠くに人影が見える。
あれは、パーティ花鳥風月の仲間達だ!
逸る鼓動に首を傾げつつ、出迎えるために待っていた。
………黒狗だ!黒狗の気配がする。
トイの瞳に吸い込まれそうになる理由。トイに頭をポンッと触れられると安心する理由。トイの声が聞こえると嬉しくなる理由。
そうか。トイは黒狗の子孫なんだ。シヴァと打ち解けていたのも、初めて出逢った時から声をかけてくれたのも縁を感じていたんだ。
近づいてくる。皆が大きく手を振っている。洋子も大きく振り返した。
私も仲間に入れてくれたのも、絶えず気にかけてくれたのも血筋で感じていたんだ。
「「「「ヨーコ!久しぶり」」」」
洋子は皆を出迎える喜びに満ちていたので、思わず
『皆、お帰りなさい』
と言った。皆は洋子の言葉に笑いながら挨拶を交わした。
トーマ「ヨーコの笑顔見てホッとしたよ」
ダニエル「元気そうで何より」
アル「ルナが早く会いたいってさ」
最後にトイが耳元に囁いた。
「洋子、ただいま。目覚めたんだな?ずっと待ってた」




