【3】
やがて、しっかりした門構えの建物の前にやって来た。
「ここはギルドのひとつ“鳳凰の翼”だ。まずステータスの確認をしてギルドカードを作ってから出来そうな依頼を受ければ生活していけるはずだ」
………ステータス??
「あら?ライトさん、珍しいですね。ギルドへようこそ」
受付にいる水色の髪と瞳を持つ綺麗な細身の女性が挨拶した。
「アイリス、元気そうだな。ヨーコが働きたいんだとさ。ギルドカードを作ってやってくれ」
「わかりました。ヨーコ、初めまして。私は受付のアイリスよ」
アイリスさんは男性を一瞬で虜にしちゃうよう艶やかな微笑みを浮かべた。
「初めまして、か。やっぱりヨーコは遠くから来てこの街は来たことがなかったんだな」
アイリスさんは受付に絶えず居る。一度見たら名前と顔が一致するらしい。掌で椅子に座るよう促してから丁寧な説明が始まった。
「ギルドカードにはランクがあるの。下からE、D、C、B、A、S、SS、SSSがあるわ。ギルドカードを受付で提示し依頼を終了するまでは他の依頼は受けられないから、依頼が終わったら必ず受付に来るのよ?また自分のランクより高い依頼は受けられないのよ」
説明を聞きながら、以前沙織が夢中になっていたゲームを思い出していた。澄んだ水色の瞳で見つめられるとチュートリアルから登場する女神キャラを彷彿させる。
「依頼の中には一人では困難だけど、パーティを組んで行動を共にすれば危険度は低くなるし達成率は高くなるわ」
>>ダメだ。スマホの画面をタッチしたくなる〜。ウズウズ…
「パーティ募集も依頼の横に掲示してるの。初心者向けもあるわ。もし一人で不安なら見てみたらいいわ。まずヨーコのステータスを確認しないとね」
『ステータスってなんですか?』
聞き返した洋子を二人はギョッとした顔で見た。
「今までどうしてたんだ!?」
「今までどうしてたのよ!?」
語尾だけ若干違うけど見事にハモった。
「ステータスというのは生まれた時からわかる様々なレベルのことよ。ステータスで仕事の向き不向きがわかるから大抵の人は得意分野を深く追求してレベルアップするわね。さっ、実際に見た方が早いわ!心の中で“ステータス・オープン”と念じればいいわ」
『ステータス・オープン』
思わず言葉にしてしまい気恥ずかしい。ライトさんは呆れた顔で洋子を見た。
効果音や照明はなく何も変わらないので、内心首を傾げた。
………ぅわぁぁ。
視界の右上に液晶みたいな表示が文字通り“浮かんでいた”のだ。
* * * * * *
名前:ヨウコ・サトウ
職業:-------- Lv.1
装備:なし
HP(生命力) 1700/1700
MP(魔力) 1800/1800
スキル:感知、言語翻訳
魔法 :Weather
称号 :魔法陣術師、聖獣使い
* * * * * *
「HPは生命力、MPは魔力よ。HPは疲労すると減少しMPは魔法を使うと減少するから注意してね。ステータスは他人には読み取れないからギルドカードに転写させるようになったのよ」
>>もぉ~突っ込みどころ満載やわ!魔法?魔力?ゲームの次は深夜のアニメだし。妖しげな聖獣とかNGワードもチラホラ読めるし。職業は販売員だけど?
アイリスさんはシルバーのプレートをかざして転写していた。どんな仕組みか興味あるけど、魔法と言われそうなので黙っていた。
フリーズした私を見たライトさんが、スキルの項目を指でさわると詳しく読めること、ステータスを閉じる時は“ステータス・クローズ”と念じると目の前から消えることを優しく教えてくれた。
項目を指でタッチすると詳細が読めた。
【スキル】経験で得られる特技。数に限りはなく何種類も会得することが可能。何度も使用するとレベルが上がり稀にMAXで進化することがある。
【感知】五感の探知能力を上げて対象物の発見率を上げるスキル。
>>対象物ってことは人も物も?
【言語翻訳】あらゆる生命体との意思疎通できるスキル。
>>このスキルがあるから日本語じゃないのに理解できるのかも。
【魔法】魔力を使い発動させる。魔法は一人一つが理であり複数持つ者は殆どいない。
【Weather】気象天候を司り天地宇宙森羅万象と共にあり全属性を纏う術。
>>ウエザー?天気予報?お天気お姉さんには年齢が厳しいってば。属性?新ワード出てきたけどスルーしとこ。
【称号】経験が重なり会得できる特殊な肩書きの総称であり、個人により複数持つ人もいれば一つも持たない人もいる。
【魔方陣術師】あらゆる魔方陣の構造認識、描写発動、形成保存、技法維持、偽装転写防止、消滅削除や多重化無効化を統べる術師。
>>魔方陣?あのややこしい幾何学模様?あれ?私は魔方陣だなんてわからないし未経験だけどいいのかな?
【聖獣使い】魔力を有する伝記最上位の魔獣と通い合う者。
>>聖獣って動物?すでにキャパオーバーだ。無理ぃ。
洋子はぐったり椅子にもたれた。




