【24】
洋子はグッタリしていた。
まず浴室へ行き全身を洗うと、細長いベッドに横たわり揉みクチャ、いや全身マッサージを受けた。
火照った体を休めるという名目で、カウチに腰掛けると、孔雀みたいな羽で覆われた団扇みたいな扇子で風を浴びた。
その後、化粧をして髪を結い、深緑色のドレスを着て完成まで感覚で3時間は経過しただろう。
「ヨーコ様お似合いです」と、三人官女が口を揃えて言うと、
『ありがとう。でもお世辞は不要だし、敬語も「ヨーコ様?本心です。黒髪はどんな色のドレスをお召しでも映えますし、黒色の瞳は吸い込まれそうなほど綺麗です」
エスの勢いにのまれたのは洋子だった。
そして謁見の間でのマナーを習い、バテバテだったのだ。
………コンコンコン。
扉を叩く音にエムが応えた。
「ヨーコ、準備は整ったか?」
入室したトイは、
「ヨーコ、行くぞ?」
と言いつつスッと耳元に近付いて、
「綺麗だ」
と囁いた。
謁見の間へ行く間が長い。途中から一本道だからか誰にも会わなかった。
重厚な木製の扉が開くと、奥にステージのようなスペースがあり、その手前に絨毯が敷いてあり椅子が設けられていた。
洋子の右側にはライト、左側にはトイが並んだ。騎士団員の2人が扉の前に、壁沿いに2人、おそらく扉の外にも数人いるだろう。
奥の扉の鐘が鳴り響いた。
如何にも王様というビロードの白いマントに王冠姿の陛下に上品な金色のドレスの妃、オズ皇子を除いた3人の皇子達が後に続き玉座に座った。最後に洋子の推薦者としてオズ皇子が登場した。
「この場に来て臆せずにいるとはさすが噂名高い黒魔女だな」
深く一礼をすると椅子を勧められたので3人で座った。
始めに王が口を開いた。
「ヨーコ・サトー。この度は大義であった。春の宴で魔法を見せろ」
>>命令形は仕方ないよね。一番偉いんだもん。
『私の拙い魔法を王様自ら御覧頂けるとは恐れ多く歓喜の極みでございます』
「ヨーコ、コレを持つが良い」
妃は護衛を目で合図した。
差し出されたのは儀式で使用する聖樹の杖だった。
「貴女らしい杖がいいと思ったのよ」
『ありがとうございます』
洋子は膝をついて両手で受け取った。
再び鐘が鳴り響いた。
王族の方々が退室すると私達は謁見の間を辞した。
先程の部屋に戻ると思いきや、別の場所に誘導された。
「ヨーコ様をお連れしました」
護衛達は恭しく一礼して扉を閉めた。
「ヨーコ、お疲れさん」
オズ皇子が砕けた笑顔で迎えた。
「ほら、ボーッとしてないで座れよ?」
拍子抜けた洋子の視線の先には、厳粛な王と妃ではなく、プライベートで寛ぐオッちゃんオバちゃんがいたのだ。
「ヨーコ、晩餐会は明日だ。暫く休んでいろ」
と、王が労う。
「黒い瞳にドキドキしちゃうわ!素敵ね」
妃は可愛い口調に変わった。
「ヨーコ様ぁ〜!会いたかったですわぁ」
勢いよく抱きつくのは美しい茶色の髪に金色の瞳が印象的なリカちゃん人形のような愛らしい女性だった。




