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境界線の向こう側  作者: 柚子
12/74

【12】

洋子はオズ皇子の話に嘘偽りないと信じることができた。頭が状況に追いつけない。でも…

『皇子様、質問がございます』

首を縦に動かしたので続けさせて頂こう。


『私の他にこの地に渡った者はいますか?また私は元の世界へ帰れますか?』


長い沈黙の後、事実が告げられた。

「この世界の者がヨーコを召喚した訳ではない。狭間を越えてヨーコからこの地に渡ったんだ。元の世界へ帰る方法はおろか、別の場所へ移動させることもできない。

一方的にシャイン国から召喚した場合も同じだ。元の世界へ戻すなんてできないから、現在は“禁忌”に値する。

稀にヨーコが居た世界とは異なる別の者が渡ってくる時もあったらしい。何もできずスマンな」


一縷の望みは絶たれた。

目まぐるしく色んな感情が交差していく。


………これから、どうしたい?


『すぐに回答できません。きっと私じゃないとできないことがあるから、この地に存在していると思うんです』

内心洋子はWeather魔法の真意に繋がると思っている。

「わかった。ヨーコはHPやMPが並みの者より高いと報告を受けた。ヨーコの好きに思うまま生きるがいい。ただ国の存亡に関わる時には、何かしら協力を仰ぐかもしれぬ。

その場で保護するよりヨーコの生活する基盤を固めようとした気持ちを優先させたライトを怒らないでくれ」


『怒る?ライトには心の底から感謝しています。そして皇子様のご配慮も同様です。ありがとうございました』


[我の名はサンクチュアリー]

オズ皇子の右腰の剣から挨拶が聞こえた。

《サンクチュアリー、私は洋子。よろしくね》

『オズ皇子、サンクチュアリーは光属性ですね』

「ああ。サンクチュアリーの声は光から得る。私が呼ぶ時は日差しの反射するところで聞くがいい」

『承知しました。私からお伝えするときはサンクチュアリーを介します』


椅子から立ち上がり一礼すると、ライトと神殿跡から出て行った。



ライトはギルドまで送ってくれた。


「ヨーコ、今まで騙していて申し訳なかった。仕事したいって言ったあの時の横顔が輝いていたから、つい…」

『気にしないで。オズ皇子へ言った言葉は真実よ。私は監視されたり制限されると嫌な性格なの。もし保護されていたら双龍達に出会えなかったと思う。ライトには本当に感謝してるわ。ありがとう』


ライトに手を振りヤドリギへ歩いていたら、

「待てよ、ヨーコ!」

と、トイが声をかけてきた。


「ヨーコの剣と刀の主を見たい。俺のも見せるからさ」

ギルド講習会の場所へ足を運んだ。

トイは背中にある大剣を構えた。

[私は主の手足となる者]

洋子は無言で頷き、右に星夜左に虹陽を構えた。

[[私達は光と闇を司る主に従し者]]


互いに刃を交差させる。トイと洋子は仲間という契りだ。忠誠を尽くすと誓い合った。


トイはバーに私を誘った。


「ヨーコ、5日後に俺のパーティがシャインを出て隣国のサンドへ行く。20日から30日までの依頼だが一緒に来ないか?」

この時期を逃せば来年まで機会がない。短期間だし良さそう。


『私みたいなド素人でも構わないの?』

「Weatherを持つ者がド素人なわけ ないだろ?」

依頼内容は質の高い魔石と岩塩の採取だ。乱獲厳禁のため国専属のパーティが行うルールだ。


「ヨーコは空間魔法は使えないのか?」

『空間魔法?』

あの有名な未来型青いネコ型ロボットが使用する便利な“ポケット”のことかな?

「無属性魔法で魔法陣術者なら会得しているものらしいぞ?」

『依頼までに空間魔法を使えるようになればいいのね?』

トイはお酒の入った器を傾け一気に煽った後、ニヤリと笑った。



ーーーーー



洋子は部屋で静かに泣いた。


もう会えない。

両親に弟に友達に職場の仲間達に会えない。

もう帰れない。

自分の部屋にもあの公園にも。毎日通った駅にも、お気に入りのベンチにも行けない。

もう見れない。

夜明けも青空も夕暮れも星空も。

あの微笑みも後ろ姿も指先も。

もう知ることのない未来。

小説の続きもカフェの新メニューも、工事中の道もベランダに植えた花の色も知らないままに。


もう二度と…

悲しみの果てに眠ってしまった。



[悲しみが喜びを連れてくる]

[悲しみの次に幸せが訪れる]

[悲しみを知り嬉しさを知る]


《ありがとう。よかった。あなた達がいる。私は一人じゃない》


[悲劇のヒロインごっこは終わったのか?]

《うー。シヴァのバカ》

[空間魔法の“ボックス”教えんからな?]


《アインシュタインやピタゴラスはシヴァの足元にも及びません、はい》

[洋子、意味わからんぞ?]


無唱和でボックスの開閉をすることは一度で取得できた。

しかし、

《シヴァ?ボックスの規模じゃないよね?》


ボックスとはトランクみたいな規模で物を収納できる亜空間だと認識していた。

しかし目の前に広がるのは大型輸入家具屋の倉庫みたいだった。

出入口こそポケットくらいの大きさかと思いきや、あの有名な未来型青いネコ型ロボットが使用するどこで*ドアを4枚分横に立てかけたような広さだった。


[人前では使えんな。小さなドアを重ねるか、もう一つ作り分散させるか?]

シヴァのアドバイスを参考に別にもう一つボックスを作った。

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