表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/370

居候開始…?

「ね、ねえほんとに入れてもらっていいの? なんならボクそのへんに座って待ってるから……」

 家の前まで背負ってきた所で急にルトはそわそわしだして、僕に何度もそうやって確認してたなあ。

「どうしたの? 入るくらい構わないよ、手当てした途端によくなる訳でもないんだから気にしないで」

「う、うん……」

 ドアを開けると、いつも通り弟達が賑やかに走ってきて出迎えてくれました。一人一人紹介してもいいんですが……まあうちには十人くらいいると思ってください。

「にーちゃんおかえりー!」

「お土産ないー? 食べ物とかー」

「だれか連れて帰ってきてる! おみやげ?」

「ああはいはい、ちょっと怪我してる子がいるからみんなどいてねー」

 エイルの家にはね、ちょっと離れた弟が一人と妹が二人、結構離れた弟がたくさんいたんだよ。エイルが一番上。


「おっけ! これでよし」

「あとは痛みが引くまでじっとしててね、ルト」

「えっ、うんありがとう……でもそしたら日が暮れちゃうかも……」

 セリアと、リズっていう妹がその場で応急処置してくれたけど腫れがひどいみたいで、ルトは窓の外と両足を交互に見て困ってました。

「ごめんリズ、ボクこの時代の街の事わかんないからさ、とりあえず代わりにどこか宿とってきてもらえないかな……お金ならちょっとはあるからさ」

「えっ宿? そんなの私も使ったことないからとり方が……いいじゃんうちでご飯食べてうちで寝てっちゃえば」

「わ、悪いよそこまでしてもらっちゃ。別に一日くらい食べなくても平気だしそれなら道ばたとかで寝ちゃえば……」

 とにかく迷惑かけまいとしてるのが印象的でしたね。ルトはそんなつもりはなかったんでしょうけど言われて想像したらよけいにおいてあげなきゃって思って、声をかけようとしたら先に母さんが……。

「もう、どんな環境で育ってきたのあんたは。一晩子供が一人増えたってどうって事ないよ、こんなに沢山いるんだしね。素直に甘えとくのが一番だよ」

 優しそうなおばさんで、ほんとにいい人だった。結局一年もエイルの家にいたんだけど、ずっとよくしてくれたんだ。

 ルトからは、貰ったものの方が遥かに大きい。街の人達はきっとみんなそう思ってるよ。


 しばらくリビングでヒマしてたら、そのうち小さい弟たちの一人がいつの間にかボクを遠くからず~っと見てたんだ。

「…………髪、長い……」

「……? キミもだね。金色でまっすぐで、すっごくきれいにしてる」

「お前のは汚いね。ちゃんと手入れしないとだめなんだぞ」

「ええ、知らないよ……ボクの好きなようにさせてよ!」

「おれだってこんなもん好きで伸ばしてるんじゃねーよ!」

 アル、ほんとにヤな子だと思ったなぁ。ボクこうじゃなきゃダメなんだって言われるのが一番嫌いなんだもん。

 お互いに地雷を踏みあったんだね、その子とはすぐに取っ組み合いになったんですが……。

「あぃったたた……!」

 互いの髪が絡まってしまって、それどころじゃなくなってました。

「うわ待った、動くなよ! 絶対動くんじゃねーぞ! セリアお姉ちゃんとってくれよー!」

「しょうがないなあ。ごめんねルト、アルが酷い事言って。口は悪いけどこうやって家計の足しになるように伸ばしてくれてるんだよ」

 ボク、意味が分かってなかった。子供の髪の毛が高く売れるなんて全然知らなかったんだもん。やりたがる子はあんまりいないみたいだけど、そのアルだけは家のみんなに楽させたいと思ってそうしてたんだ。

「家計? あんまり余裕ないんだったらやっぱりボク食べていけないよ」

「大丈夫よ! 確かに生活は苦しいけど、別に今すぐどうこうって程でもないんだから。いい事できたと思って明日からちょっとだけ頑張れば済む話だってば」

「まあ、主に頑張るのはエイル兄ちゃんなんだけどね」

「はは……街の外で足痛めた子なんて放っておける訳ないだろ。というか分かってるならジュンも一緒に出歩いてくれてもいいのに」

 次男のジュンは皮肉屋さんでめったにエイルの行商も手伝わないんだけど、代わりにいつも街を走り回ってるから情報通だったんだ。街のたくさんの大人と知り合いで、その後すごく助けられる事になったんだ。


 そのまま日暮れ前になって、その日はちょっと早い夕食になりました。母さんが張り切ってて、まかないではあるけど普段より少しいい食事に気をよくした弟達は誰もルトがいるのに文句を言いませんでした。そしたらやっと観念したかな、ルトも出された分には手を付け始めたよね。美味しくないって言われるかと肝を冷やしたけど。

 ううん、すごくありがたかった。そりゃやっぱりあんまりいい材料買えないんだなってボクでも分かるくらいだったけど、何か食べられる事が一番嬉しいんだもん。美味しいのはもっと嬉しいってだけだから。

「……あれ? エイル、お父さんはいないの?」

「えーと、それは……」

 不思議だったよ。ボクはお父さんは許してくれるのかなってちょっと心配してたんだけど、エイルとセリアとリズと弟達とお母さんと、みんな集まってもお父さんだけいなかったんだもん。でもエイルが答える前に……。

「邪魔するぜぇ!」

 いきなりドアが蹴破られたんだ。銀色の胸鎧を着たおじさんたちが三人外に立ってた。

「セリア、みんなとルトを連れて二階に行ってて」

 城の下級兵士達です。急な事で泣き出す弟達を退散させて、僕はパン切り包丁を後ろ手に応対にあたりました。相手の要望を受け入れて帰って貰えるならそれが一番だと思っていましたが、そう上手くいくわけもないと家族みんなが分かっていましたから緊迫した空気が流れます。

「用件はなんですか? 弟達を泣き止ませなきゃいけないので手短にお願いしたいんですが」

「決まってるだろう! 待ってやってた税の催促だよ、もう二週間も過ぎてんだぞ」

 言うまでもないとは思いますが、僕らは滞納なんてしていませんでした。第一兵士達に直接渡すようなものでもありません。彼らは上の監督が届き渡らないのをいいことに剣を振りかざしては好き放題街を荒らし酒を浴びているんです。

「……ふざけるな! あれはお前達が期日を無視して巻き上げに来るのを追い返しただけだ!」

「ンだとお? 金が払えないンなら別の物で頂くしかねえな。……確かこの家には小娘が二人いたな……おいお前ら、連れ出してきちまえよ」

 上にいってたボクたちにも、この時の話はよく聞こえてた。向こうの事情はよく分かってなかったけどみんながイヤがってるのに兵士の人たちが無理やり入ってきて、多分こういう事が続いてるせいでお金に困ってるんだなって思ったら悪いのはあっちだって思ったの。

「また家族を奪っていくというなら、僕にも考えがありますよ」

 僕は包丁を構えて、今にも玄関口から飛び込んで来そうな二人の男と睨み合います。しかし、彼らに恐れはありませんでした。これまでにも似たような状況になった事があり、僕はその時斬れなかったからです。遠慮しがちで、甘くて……そんな僕の事を知っていた男はせせら笑い、叫びます。

「いけっ!」

 ここだよ。ボクが真ん中の兵士の人を殺したのは。

「うぅやあああぁぁ!!」

 突然、ズドンと激しい音を立てて二人の兵の奥の景色が赤く染まりました。何が起こったのか僕と二人の兵が知った時には、巨大なブーメランを振り下ろしながら窓から飛び降りて来たルトが縦に真っ二つとなった男の腰から剣を抜き取り二人の兵の間まで一足飛びに潜り込んでいる所でした。

「おじさんたち、ここはエイルたちの家だよ!」

 飛び降りてすぐ状況を見たら、もう中に入った二人がエイルに剣を出して詰め寄ってる所だった。でも急に後ろの仲間が殺されたから怯んでる。ボクは剣なんて下手くそだから一対一で構えあう所までなったら絶対勝てない、だから危ないって知ってても滑り込んだんだ。

「自分以外の縄張りに……っ!」

 ルトは一人を壁まで蹴り飛ばして、同じようにもう一人を反対側の壁まで蹴りつけた反動でそれを追い、瞬く間に喉笛を引き裂いてしまいました。

「勝手に入っていったら!!」

 僕は無我夢中で踏み出していました……本当はそんなことしたくない。でもやらなければ妹が連れていかれると思うと、ルトの行動に背中を押されるままに包丁を突き出してしまった。自分が手を汚すのを渋ったせいで何かを失うのはもう嫌だったんです。

「う、うわああぁ!」

 固く瞑った目を開けると、兵士の首元に包丁が突き刺さっていて、足の上に吹き出した血が滴り落ちてきていました。体が麻痺したように動かなくなったのをよく覚えています。

「……殺されたって文句は言えないんだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ