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新たなミミル 前

「そういう訳で俺は変わった……いや、元に戻ったんだ」

「……」

 シャルの変貌の理由を聞かされたミミルは、しばし呆然としていた。

 歳が離れているのは彼らが未来……「ルト・セレス」にとっての現代からやってきた為だという。

 ――どうするの? 目的が狂っちゃったじゃない。

 彼女の肩の上で小さな女性が頬杖をつき、溜め息を漏らす。

「大丈夫ですか? お義母さ……いえ、ミミルさん。顔が真っ蒼ですよ」

「蒼くもなるよ……あなたみたいな年上の男の人にそんな風に呼ばれる事になるかもなんて」

 床に座り込んだままうつむき、ミミルは自嘲気味に絞り出す。

「私が好きだったシャルは本当のシャルじゃなくて……そっち側の私はその事を知らないまま結婚して子供を作って死んで……それがルトで、今ではこんな年上のボーイフレンドを連れて私の前にいる……理解はしたけどごめん、納得するには時間かかりそう」

 一度にたくさんの事情を聞かされただけでなく、その内容が内容だ。まだ成人してもいない彼女が受け止めきれるものではなく、ミミルは内心嫉妬で狂いそうだった。

 しかし、その感情を表に出す勇気もなく、その場に長い沈黙が流れる。

 ――ずっと適当にあしらわれてたとは聞いてたけど、なるほどね。本当は快活な人なのにクールキャラが気に入りましたって言われたらそりゃ気を悪くするわ。

 ミミルが追っていたのは、ただの幻影だった。おまけに友達になりたかった可愛い女の子は自分の一人娘だという。

(私……ルトの事羨ましかった。こんな風に自分をはっきり曝け出して生きていけるのが……)

 しかし、ミミルはルトと比べられるのを恐れていた。自分は彼女と違って何も持っていない。何の面白みも……魅力もない。

(それが親子とあれば、当然並べて見られるよね。私、恥ずかしくて死んじゃうよ……)

 恋は実らないばかりか土台から崩れ去り、プレッシャーばかりがのしかかってくる。正直、このままシャル達に帰ってもらうのも選択肢のひとつだろう。

 しかし、自分はこの再会のためにこの世界で住んでいた家も友人も全て捨ててきてしまっていた。目立つ悪者である必要があった為に、わざわざこんな城を建てた。ひとりでこれから何をして生きるのか……それを考えるとミミルはいっそ城の窓から飛び降りてしまおうかとすら思った。

 ――ダメよ。あなたは生きるの。いいじゃない、この人達と一緒にいればそのうち楽しい事だってあるかもしれないわよ? 諦めるのはいつでもできるわ、頑張って。


「さ~て。思い悩んでるとこ悪いけど、ウチらの本題に入ってもいっかな?」

 床に寝転んでいるテオリアが待ちきれなくなってミミルを促すと、エイルとシャルも続く。

「そうでした。あなたはどうして時球を酷使したりしていたんですか? 町の人達に聞きましたよ、大規模ないたずらだけ繰り返して、目的が分からないから気味が悪いって」

「山を崩したり大雨を呼んだり、動物の群れを呼び出したり色々引っ掻き回してるらしいな。知らなかったかもしれないけど、その度に世界が不安定になってくんだ。事と次第によっちゃあ……!」

 それまで楽しそうにルトと戯れていたシャルは顔つきを周囲の氷のように一変させ、虚空から剣を召喚する。

「うん、分かる……悪いとは思っていたけどね。私も崩れるオルタナを見ていたから」

 ミミルはゆっくり立ち上がると、彼らを刺激しないよう静かに歩み寄り、口を開く。

「私がどういうミミルなのか、説明しなくちゃね……シャル達の事は風の噂で聞いたの。時間軸をかき乱す存在を止めたり、退治して回ってるんだってちょっとした有名人になっててね」

 彼らは旅立ちのあの日以来、いくつかの時代のゆがみを正してきた。たいてい、オルタナのような私欲のために時球を酷使する人物や団体を説得したり時には戦って殺したりして。

 そういう分岐が生まれる事で、彼らが来たその世界は正しく存続する事ができ、彼らが来なかったその世界は許容量が半減し早々に滅ぶ。

 完全にとはいかないが、時間軸全体から見て被害を軽減しているのである。

 そんな彼らの話は時代を越えて広まり、やがてこの世界で魔法の修行をしながら大人しく暮らしていたミミルの耳にも届いた。

「それで、時間軸に負担をかければシャル達がいつか来ると思って……私、会いたかったの。でもシャルは変わってしまっていたんだね……心も体も」

「……」

「オルタナには、戻りたくなかったから……あの後どうなっているのか知らないけど、私あの街では死んでいるのと同じだったから」

「あの後? ミミルはいつ頃こっちの世界に来たの?」

 ミミルの言葉に引っかかるものを見つけたルトが問う。

「ちょうどオルタナが別世界みたいになった崩壊の日、その真っ最中だよ。逃げ遅れて、ああ死ぬな、この街に居場所なんてなかったなって考えてたらアクアの声がして、気が付いたらこの町が遠くに見える穴みたいなのが目の前に空いてて……それから三年くらいこっち暮らしかな」

今回は短いですが。次は、アクアって何ぞ?ですな

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