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その日... 1

前回のお話

ユキがギルドマスターに勝った。

〈闇魔法〉で記憶を消せる受付嬢のレミリィにカリナが貴族と知っている人物の記憶を消す依頼をした。ギルドマスターが大切にしている魔核を報酬に。

街を出るため、旅に必要な物を大通りで買った。



 あれから数日経った。

 冒険者ギルドでギルドマスターとレミリィに依頼した領主関係者からカリナの記憶を消す事が無事成功し、晴れてカリナは自由に身となった。

 もちろん聞いただけでは不安なのでカリナに相談したところ、実際にカリナが伯爵の娘と知っている人物に接触する事になった。

 今回検証したのは門番。事後報告によると、カリナは領主の屋敷前を歩いてみたそうだが、何度も顔を会わせた門番は気づくことなく下心満載の視線を送られたそうだ。会話も少しだけしたそうだがカリナのことを一つも覚えていないらしい。他に何人か試しても同様の結果で、問題無さそうだという結果となった。


 向こうが約束を果たしたならばこちらも約束を守らなくてはならない。ユキは約束通りに不正資料をギルドマスターに手渡した。その時にレミリィが居なかったことのを不思議に思い、聞いてみるとレミリィは魔力の使い過ぎでダウンしているとギルドマスターが教えてくれた。ユキはギルドマスターに感謝の言葉をレミリィへ伝えておいてくれと伝言を頼むと、その後は特に用事は無いので冒険者ギルドを出た。


 消したい記憶を消せる〈闇魔法〉は怖い。


 ユキは一人の冒険者となったカリナに今後どうするのか聞いてみると、一緒にアルカイト王国へ来てくれるようだ。理由もこの街にいると奴等に会う回数が増えると記憶が戻ってしまう可能性があるから、決してユキ達のパーティが心配とかじゃないから、とツンデレっぽい台詞を頂きました。

 これでアルカイト王国行きのパーティーメンバーはユキ、スカー、シエル、ルティア、クク、カリナと決まった訳だが...随分と多種族なパーティーだ。加えて全員女性(一人は外見からして区別がつかない)、しかも容姿が優れているとなれば厄介事が向こうからどんどん来ると確定したも同然だった。


 今想像できるもので、実際に体験したのは主に男たちからの...

 ナンパ(ユキ以外)

 勧誘(ユキ以外)

 人を殺せそうな嫉妬の視線(ユキ限定)

 となる。

 きっと仮面を取れば彼女達と同様に接してくれるようになるだろう。それはとても、とーっても嫌なのでユキは絶対に外さない事を決意し、今日もダンジョンに潜る。


 そんな日々を送り、今日を迎えた。


 5の月の3日、風。護衛依頼がある日。今日はアルティアの街を出る日だった。



 ーーーーーーーーーーーーー



「ん~♪る~~るら~~~♪♪」


 まだ日が顔を出さない早朝に、ユキは好きだったアニソンを小声で歌う。空が黒から青へと変色していく様を見上げながら歩く足取りは軽い。


 見るからに上機嫌といった風で歩くユキは相も変わらずフード付きローブに不気味な笑顔の仮面で、時折フードと仮面の間から白銀の髪が覗かせる。見た目は何も変わっていない。が、ローブの下に着ている普段着は先日買ったばかりのショートパンツを履いている。魔物との戦闘で動けばヒラヒラと見えそうなスカートじゃないのは安心感をユキに与えてくれる。ユキが機嫌が良いのはそのためだ。


 そんなユキの斜め後ろではガチャ、ガチャ、と金属同士がぶつかり合う音を出しながら追従する金属鎧。その中のスライム、スカーも装備を新しくしていた。

 全身にはガチガチのフルプレートアーマー。さらに顔もスッポリ覆うヘルムを着けているので見た目から誰か判断出来ないだろう。唯一女性らしい体の線が出る滑らかな鎧で女性とは判断できる。そこにマントを羽織るとその姿は騎士のようだ。

 実際にスカーはユキを外敵から守るために周りを警戒して歩いているのでそうにしか見えない。全身鎧は見た目からして威圧感が凄いので男避けにできそうだ。


「上機嫌ですねー。でもわかりますよ~、冒険はいつでも心踊るし、新しい街や国を観て、知って、楽しんでですね。旅先での苦労といろんな人との出会いがあるから楽しいですよ。たぶんだけど」


 隣でククがソワソワしながら度々ユキに話しかける。妙に落ち着かない態度と憶測ばかりの話からククは遠出が初めてなのだろう。歌うのを止めたユキが顔を向ければ、キラキラとした瞳と視線が合った。


「おう、眩しい。ボクなんて道の途中でいるだろう魔物とか、盗賊とかの敵をどうしようかって考えちゃうよ」


「あー...Cランク冒険者が二人もいますし!私も斥候職として、何より猫人族の索敵能力を舐めちゃいけません。明るく考えましょうよ!ね?」


「魔物は売れる素材と食べられる肉はばっちし覚えましたし、盗賊は捕まえれば賞金と貯めていた財宝を貰えますからね。どっちともウマウマな相手ですよ!」


「......ユキって以外に逞しいですよね」


 返す言葉が見つからず、絞り出したようにククはそう返したのだった。


「あっ、それよりもカルネクト王国にケーキのように甘いのに冷たいスイーツが流行ってるらしいよ!何でも『あいすくり~む』と言うらしいです。他には...」


 これからの旅路の心配事は置いといて、ククは話題を王都で有名なスイーツや名物料理の話に変える。それは楽しみだとユキも乗り気の反応を見せるとククはそこから話を広げて会話を続けた。1名は聞き耳を立てるだけだったが、ユキとククの話は盛り上がり、カルネクト王国の王様が女性でとても美しいと話した所で目的地、南門前へと着いた。


 南関門の前には鐘が鳴るよりも早く動き出した商人や冒険者が確認できる。カルネクト王都行きであろう行商人達が列に並び、許可が降りた商人が門を潜り抜けていく。依頼主のネコミー商会は恐らく横に避けてある何台もの馬車のどれかだろう。

 だがその前にシエル、ルティア、カリナと合流する約束なのでユキ達は集合場所のリンルア神像前に行くとどうやらまだ来ていないようだ。ので暫く待つ。


「ユキさん~!」


 ククとスカーの二人と武器の不備確認をして時間を潰していると明るく元気で心が和む声がユキの耳に聞こえた。

 精度の上がった〈気配探知〉で気付きつつも、あえて気付かない振りをし、飛び込んでくる人物に驚いた表情で向かい打つ。当たる寸前に脇へ手を差し込むとそのまま1回転。元の位置で回転を止めるとそっと地面に足をつけた。


「ルティアちゃん、いきなり飛び込んできたら危ないよ?今は武器を持ってるからね。まぁいつでも受け止めて見せるけど」


「あ...うぇ?ああ!すいません!ちょっと興奮してたみたで、その、ごめんなさい」


 まさか抱き上げられて回されるとは思いもよらなかったのだろう。呆然としていたルティアは、直後頬を赤く染めて素直にユキへ謝った。


「だいじょーぶ、大丈夫。危ないとき以外はいつでも甘えて良いんだよ?前のように『ユキお姉ちゃん』って言ってみてもいいんだよ?」


「お姉ちゃんが泣いちゃいますし、その、...距離が縮まらないので会った頃のように呼ばせて下さい」


「そっか...なら仕方ないよね。うん、仕方ない...」


 『ユキお姉ちゃん』と呼ばれたあの日を思い出し、もう来ないことを悲しんだ。あれほど胸を熱くさせる言葉は兄弟のいなかったユキにとって生まれて初めてだったが、後に付いた言葉で理由も察せられる。


(きっと恋に恋をしている)


 ユキはルティアのピンチを2度助けたことにより、吊り橋効果も相まってユキが王子様的な何かに見える現象が起きているのだろう。


 世の鈍感な主人公とは違うのだよ!(ユキのドヤ顔)


 今は性別が女に変わってしまっているという悲劇により精神的にノーマルでも肉体的にはアウトとなり、必然的にユキはそう考え付いた。女同士でも良いのなら、ユキ的には清く正しい付き合いのもとそういう関係になっても...なったらとても嬉しい。


 これがもし男のまま転移出来ていれば!!(血の涙)


 悔やんでも仕方ないことなのだ。

 ルティアを妹のように可愛がり、本当の恋をして彼氏ができる。シスコンのシエルに認められるような男が現れたら「ルティアちゃんと付き合いたいなら、このボクを倒せなきゃ認められない!」と言って、ボコる。これが正しい流れだろう。

 そう思うとユキは次第に落ち着きを取り戻した。


「うん、ルティアちゃんのためにももっと強くならなきゃね」


「えっと、その、ありがとうございます?」


 すでにAランク冒険者並みの実力を持ったユキは更なる高みを目指す決意を改めて決めた。


「ちょっと急に走ったら危ないわよ!」


「...ん、カリナに同意。それと、ルティアから手を、離せ」


 そこに遅れてカリナとシエルがユキたちと合流すると、カリナはルティアに軽く注意を、シエルはユキを睨み付ける。

 脇に手を触れたままだったことに今更ながら気付き、慌てて手を離した。


「ああ!ごめん。ちょっと考え事をしていてね」


「...ふん」


「わっお姉ちゃんくすぐったいよ~!」


 苦笑いしながら即座に手を離すユキを警戒しつつ、シエルはルティアに後ろから抱き付いて頬を重ね、スリスリと頬擦りする。

 体で愛情表現する姉に、少し恥ずかしげに頬を赤らめつつ、嬉しそうに受け入れるルティア。


「おおお...眼福じゃ~...」


 癒される光景にユキは手を合わせてありがたそうにそう呟いた。


 そんな3人を隅に置いといたカリナはククに近づき、視界に入ってから気になる全身鎧姿について訪ねた。


「真っ先に気になったのだけど、あの人は誰?」


「何言ってるんですかカリナちゃん。あの人はスカーさんですよ」


「えっ!あの人がスカーさん!?」


 全身鎧の人がスカーと知り、驚いたカリナは思わずスカーを凝視した。しかし、スカーは我関せずといった態度で少しも動かないず、ユキを見つめたままだ。


「スカーさん、スカーさん!、スカーさーん!!」


「ダメですよカリナちゃん。なんかあれ装備すると性格が変わったかのように話さなくなるんです。寡黙な騎士様のようでカッコ良くないですか?」


「困りますわ。そうなると連携が...」


「ユキちゃんの指示には従うので大丈夫じゃないかな?もしもの時はルティアちゃんの護衛を任せればと思います」


「まぁそういうことでしたら...問題は無いわ。そしたら、持ち物の確認をしたいのですが...食糧はユキが用意すると言ってましたけど、大丈夫かしら?」


「大丈夫だ。問題ない」


 スカーの話題から旅で必要な食糧についての話題に変わる。服は各自で用意し、共同で使うものはユキがまとめ買いする予定となっていた。もちろんお金は出しあって。

 そこへ祈り飽きたユキがひょっこりと顔を出した。


「さらに食糧や水以外にも、簡易テント、魔導ランプ、使い捨てトイレ、毛布、虫除け香、タライ、食器類や調理器具等々~いろいろ揃えましたよ!」


 ドヤァっとした顔で、胸を張る。


「大体揃ってるわね。お金は足りたかしら?」


「もちですよ!」


「ならいいわ。そろそろ依頼主のところに行きましょう」


 忘れ物確認を終えるといよいよ護衛対象と仕事仲間となる冒険者パーティーとの顔合わせだ。ギルドから伝えられた場所に向かうと、2台の大きな馬車と垂れた猫耳が特徴の恰幅のいいおじさんが出迎えた。この人が依頼主のネコミー商会所属の人だろう。笑顔で話し掛けてきた。


「おお、これはこれはお美しい方々ですな。もしかして依頼を受けてくださった冒険者ですかな?」


「はい、護衛依頼を引き受けましたパーティーのリーダー、ククと申します。こちらがギルドからの受諾書です」


「ふむ、確認しました。これほど見目麗しい方々に守って貰えるとは...耳が上がりません。わたくし、ネコミー商会所属のトンガと申します。道中の護衛、よろしくお願いいたします」


「こちらこそ、道中はお任せください」


 この中で年齢の高い人にリーダーとし、ククが前に出て対応する。宿を真っ当に経営していただけあり、受け答えがしっかりとしている。依頼主、トンガからの反応も良く、終始嘘くささの感じない笑顔だ。


「一方はまだいらしておりませんが、先に顔合わせと紹介をしましょうか...実はわたくしには妻と娘がおりまして。それはもう愛(いと)しい妻と愛(あい)らしい娘でしてね?耳があがらないのですよ。紹介をします。ティリア、ローニャ、ちょっと来て下さい」


 トンガは妻子持ちだったようで、馬車の向こう側から二人呼び掛けに応じて来た。現れたのは白くて柔らかそうな髪を腰辺りまで伸ばした優しそうな女性と、同じ髪色をした五歳くらいの女の子。どちらもピンと立った猫耳が頭の上に付いている。

 トンガの横に立った。


「妻のティリアと娘のローニャです」


「ティリアと申します。夫と娘共々よろしくお願いします」


「ローニャです!よーしくです!」


 トンガの妻は優しい雰囲気の人で、儚げ、という言葉が似合いそうな人だ。娘のローニャは母の血を濃く継いでいるようであまりトンガには似ていない。


「パーティーリーダーのククです。よろしくお願いします」


「カリナです。よろしくお願いしますわ」


「...シエル、です。よろしく」


「る、ルティアです!よろしくお願いします!」


「......」


「すいません。この人はスカーであんまり喋んないんです。ボクはユキって言います。よろしくお願いします」


 驚いたことにトンガ夫妻は内心どうであれ顔色一つ変えずにユキとスカーに笑顔でよろしくと言ってくれた。流石は商人。

 ローニャは幼さゆえ怖がるかと思ったが、なんとユキに笑顔を向けてくれた。胸を射ぬかれた音がユキの脳内に響き、よろける。倒れそうになったがギリギリと踏ん張った。

 スカーも笑顔、というよりもキラキラとした瞳を向けられていた。どうやら王都の騎士と同じように見えているらしい。カチャカチャと音が聞こえるので動揺しているようだ。

 この人、良い人たち。確信。


 無事自己紹介も終わり、あとはもう一組のパーティーを待つだけだ。 

 


現在のユキのステータス


 名前 ユキ

 種族 吸血鬼

 年齢 16

 性別 女

 職業 闇夜の戦乙女

 Lv33


 HP 1920/1920

 MP 2120/2120


 STR 945

 DEF 387

 AGI 771

 DEX 480

 INT 926

 MDF 473


 〈特異スキル〉


 異世界言語翻訳

 吸血ノ聖姫

 詠唱破棄


 〈スキル〉


 剣術 Lv 5 

 槍術 Lv 2

 弓術 Lv 2 

 体術 Lv 5 

 投擲 Lv 5 ‘1UP’

 跳躍 Lv 4

 回避 Lv 5 ‘1UP’

 鑑定視 Lv 6 ‘1UP’ 

 気配探知 Lv 5

 魔力探知 Lv 3 ‘1UP’ 

 隠密 Lv 5 ‘1UP’

 隠蔽 Lv 6 ‘1UP’

 暗視 Lv 3 ‘1UP’ 

 再生 Lv 6 ‘1UP’ 

 魔力回復上昇 Lv 4 ‘1UP’ 

 腕力上昇 Lv 5 

 脚力上昇 Lv 3

 身体能力上昇 Lv 5

 衝撃吸収 Lv 4 ‘1UP’

 皮膚硬化 Lv 5  

 アイテムボックス Lv 5 ‘1UP’

 火魔法 Lv 4 ‘1UP’

 風魔法 Lv 2

 土魔法 Lv 3 ‘1UP’ 

 光魔法 Lv 3 ‘1UP’

 闇魔法 Lv 2

 

 〈 称号 〉


 はぐれ転移者

 吸血鬼の姫

 リンルア神の加護

 小鬼殺し

 ゴブリン王殺し

 諸刃の剣


 〈 装備 〉


 武器 - 風魔の剣


 防具 - 体 - 鋼鉄の胸当て

     

    外装 - 黒のローブ

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