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転職~

 ゴーン、ゴーン、ゴーン――


 鳴り響く鐘の音。空は雲一つ無い快晴で、爽やかな朝には誰もが気分が良くなるだろう。大通りにある店は開店の準備を始め、宿屋からは熟練の冒険者からなりたてのルーキーまでの冒険者が出てきて、今日も冒険者ギルドへ足を運ぶ。

 そんな人が混み合う時間帯に冒険者ギルドの出入口の横の壁に寄り掛かりながらユキはシエルとカリナを待っていた。


 鐘が鳴ってから数分後、人の波を眺めていたユキは人と人の間から空色の髪が目に入った。段々と冒険者ギルドに近付いてくると中に入らないで真っ直ぐとユキに近付いてきたのでユキは片手を挙げて挨拶をした。


「おはようございます!シエルさん」


「......おはよう」


「あれ?カリナさんは一緒じゃ無いんですか?」 


「...もうすぐ来る...と思う」


「そ、そうですか」


 ユキはシエルから視線を外して周りを見るとさっきと空気が変わっているのがわかった。訝しげにユキを見てた人達が視線をシエルに変えたのだ。口々に「麗氷の魔女だ」と言っているのが耳に入る。


「シエルさん、麗氷の魔女ってなんですか?」


「......私の2つ名。いつの間にか付いてた」


「うぉお~、かっこいいですね。ボクも欲しいです!」


「...ユキはまだまだ初心者。有名にならないと付かない」


「あんたはその格好でもう有名だけどね」


「あ、カリナさん。おはようございます」


 人の波から割って来たのはカリナだった。これで全員揃った事になるので、冒険者ギルドに入っていよいよ転職だ。自然と浮き足立つユキは先頭に切って扉を潜る。そんなユキに呆れながらも二人は続いて入っていった。


 中には依頼選びをしてる者、テーブルで道具を整えてる者、受付嬢に依頼受注の手続きをしてる者など人でごった返していた。

 入ってきたユキ達は一旦別れて行動する。シエルとカリナの二人は手頃な依頼を探しに。ユキは転職すべく受付の前に並んで順番を待つ為だ。仮にガゼル達が来ても同じ建物の中にいるので、絡まれたとしても大丈夫。安心して並べる。


「お、おはようございます。どういったご用件でしょうか?」


 予想よりも早くユキの番になった。いつも対応してくれてたレミリィでは無く狐系の獣人でユキを見たときに顔が引きつっていたが見なかったことする。


「転職したいんですけど」


「転職ですね。ギルドカードの提示と銀貨1枚いただきますが...はいお預かりします。後、ユキ様はLv 5に到達されてますか?」


「え?はい。Lv 5は越えてますね」


「ありがとうございます。それでは転職についてご説明しますね」


 ギルドカードと銀貨1枚を受け取るとギルドカードはすぐに返ってきた。確認だけだったのだろう。真剣な顔になると転職についての説明が始まる。


「転職は冒険者になるには必須な事です。職業はLv 5で一次職、Lv 25で二次職と以降はLv 25毎に上の職になります。ちなみに、最初に選んだ職業で上の職も大体決まります。選択は1回しか出来ませんので悔いの無いように選んで下さい。そして選んだ職業によりステータスの大幅な上昇やスキルが手に入ります。職業は現在確認されているのは『大賢者バールティス』様が到達したLv 100の五次職ですね。それ以上は現在確認されてません」


 うん?つまりは最初が肝心ってことかな?選んだ職の系統しか選べなくなると。よく考えて選ばなくちゃね。

 それにしても、よくそんなにレベルを上げられるもんだよね、その人。厳格なご老人の姿が思い浮かぶよ......あ、説明終わった。途中聞いてなかったけど大丈夫だよね?


「では奥の部屋で行いますのでこちらから入ってください」


 受付の横にある出入口から入り、一つの扉の前に連れてこられた。狐耳の受付嬢はそのまま仕事に戻ってしまい、ユキは一人で扉の奥に入る。


「いらっしゃい、これはまた珍しいお客だね。ああ、そこの椅子に座って。すぐ始めるからさ」


 部屋の中にはイスが2つ、机を挟んで置いてある。その内の一つにはローブを着た老婆が一人座っており、ユキに座るようにと指示を出すと懐から直径30cm位のガラス玉を取り出して机の上に置く。ユキは座った後、興味津々に見ていると老婆が皺を深くして微笑むと「始めるよ」と声を掛けた。


「よ、よろしくおねがいしみゃっ!します!」


「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。痛みも無く簡単に終わるらね。じゃあまずはこの【転職玉】の上に手を置きなさい」


「こ、こうですか?」


「そうさね。じゃあ、――――――――――...」


 老婆の口から詠唱が紡がれるとユキの体から極微量の魔力が吸いとられていく。透明だった玉は徐々に光だし、やがて集束するとユキの目の前に〈隠蔽〉で出てきたようなモノが表れた。


「そこに職業が書いてあるはずさね。自分がこれだと思うのに意識を集中すれば就けるよ」


「はい!」


 ユキはどんなものがあるのか、わくわくしながら見ると一つしか書かれていないことに軽くショックを受けたが、職業名を見た。


 ゴン!


「なんだい!?どうしたのさ!」


 老婆が慌てたようにユキを心配する。なぜなら突然机に頭を打ち付けたのだから。

 それほどまでにショックを受ける名前が書いてあったのだ。今も表示されている職業欄にはこう書かれていた。


 《吸血姫》...と。


 おかしい!おかしい!おかしいぃ!!

 そんな職業聞いたこともないよ!〈称号〉にあったやつじゃんか!!こんなところまででしゃばって来るなんて...リンルア神様?からの悪意を感じるよ。変更したくとも選択肢が一つしか無いし。

 これ、戦える職だよね?前衛なのか後衛なのか全ったくもって検討もつかないんだけど。ステータスが上がるどころか『姫』って付いてるせいで弱体化しそうなんだけど。

 くぅ...まぁ、いい。正直に言うと不安だ、けどステータスが上がると言っていたギルドの職員を信じよう。強くなれるなら無職よりかはマシだよね!

 い、いくよ!南無三!!


 ユキは暫く動きを停止したが、ガバッと起き出すと職業欄の『吸血姫』に意識を集中する。ボタンを押すような想像をしていると欄は光の玉となり、ユキの体の中に入っていった。

 すると、体の奥から力が湧き出すような感覚が走った。どうやら成功したようだ。ユキは弱体化していないことに胸を撫で下ろす。


「元気出しなよ。希望してた職業じゃなかったのは残念だったろうけど、その選んだ職業で頑張りゃ強くなれるさね」


「あ、はい。ありがとうございます」


 転職の老婆が慰めてもらい、幾分か元気が出たユキはお礼を言って部屋を後にした。

 カウンター横から出るとユキを待っていたのか、シエルとカリナが1枚の依頼の紙を手に持ちながらあれこれ話していた。ユキは急いで二人に駆け寄る。


「お待たせ~!」


「ん?あ、お帰り。無事に転職出来たみたいね。何になれたの?」


「え、え~っと。せ!戦士かな!前衛だから頑張るね!それで依頼は何を取ってきたの?」


「...ん、初心者におすすめ。ゴブリン討伐」


 シエルが持っていた紙をユキに渡した。ザッと目を通すと二人に了解の意を伝える。

 三人で受付に行き、パーティー登録と依頼書の手続きを済ませるとゴブリンのいるリクルの森へと足を運んだ。


 ユキは気付かなかったが、ユキの職業は世の中ではレア職と呼ばれいる職であり、丁度ユキが転職の説明を聞いていなかった部分だった。

 その時、受付嬢はこう言っていたのだ。稀にあるレア職は確認されてる中では最強職と呼ばれている、と。



現在のユキのステータス


 名前 ユキ

 種族 吸血鬼

 年齢 16

 性別 女

 職業 吸血姫

 Lv 15


 HP 800/800

 MP 820/820


 STR 401

 DEF 162

 AGI  365

 DEX 201

 INT  383

 MDF 189


 〈特異スキル〉


 異世界言語翻訳

 吸血ノ聖姫

 詠唱破棄


 〈スキル〉


 剣術 Lv 4 

 投擲 Lv 2

 跳躍 Lv 2

 鑑定視 Lv 4 

 気配探知 Lv 4 

 魔力探知 Lv 1 

 隠密 Lv 4 

 隠蔽 Lv 4

 暗視 Lv 1 

 再生 Lv 4 

 魔力回復上昇 Lv 1 

 腕力上昇 Lv 3 

 脚力上昇 Lv 3 

 衝撃吸収 Lv 2

 皮膚硬化 Lv 2 

 アイテムボックス Lv 3

 火魔法 Lv 2 

 土魔法 Lv 2 

 光魔法 Lv 2

 闇魔法 Lv 2

 

 〈 称号 〉


 はぐれ転移者

 吸血鬼の姫

 リンルア神の加護

 小鬼殺し


 〈 装備 〉


 武器 - 鉄の短剣


 防具 - 体 - 黒狼毛の胸当て

     

    外装 - 黒のローブ

お読みいただき、ありがとうございます。

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