シルファール家にご招待~
初依頼を達成したユキは、シエルとカリナと共に一旦ククの宿屋に行って夕飯はいらない事を伝えた後、住宅区に来ていた。ガゼル達が絡んできたあの一件で二人が再度ガゼルが襲ってくるかも知れないとパーティーを組んでくれることになり、改めて自己紹介することになった。
同じ様な家が建ち並ぶ道を進んでいくと1つだけおかしな場所が見えてくる。その家だけ白い薄い膜のようなのが張られているのだ。その家の前でシエルが足を止めると、右手を前につき出すと縦2m横1mほどに穴が開き、そこを通ってシエルとカリナは薄い膜の向こう側に行ってしまう。
どうやらこの家がシエルさんとルティアちゃんの家らしい。ユキは二人に続いて膜の内側に入っていった。
木製の扉の前に立ったシエルさんはドアノブの上にあるビー玉サイズの魔核に指を当てると魔核が光る。光るのが収まるとドアノブに手を掛け、扉を開いた。どうやらあの魔核は扉の鍵のようだ。指紋認証のようで結構ハイテクだなぁ、とユキは思っていると奥からパタパタと足音が聞こえてきた。
「お姉ちゃん、お帰りなさい!」
「ただいま、ルティア」
予想通りにルティアが出迎えに来ていた。シエルを見つけると笑顔で出迎える。料理をしていたのか、白のエプロンを着けた姿で来たルティアは可愛さがアップだ。
ルティアはシエルの後ろにいたユキとカリナを見ると驚いた表情の後、すぐに可愛らしい笑顔で迎えてくれた。
「ユキさんとカリナさん来てくれたんですね。嬉しいです!」
「夜遅くにごめんなさい、ルティアちゃん。ちょっとお邪魔するわね」
「ご飯を食べさせて貰える約束、楽しみにしてました!」
「覚えててくれたんですね♪あ、でも今作ってる量じゃ少し足りませんね......もう少し作ってきますので椅子に座って休んでいて下さい」
急に来たユキとカリナは当然だが二人の分は作られて無かった。追加で何か作ると言ったルティアは二人を居間に案内する。カリナは何回か来ていたので実際はユキの案内だった。
ちなみにシエルは着替えるらしく、自分の部屋に向かって別行動だ。
あ~、急に来ちゃったからな~。何か手土産でも持ってくればよかったよ。う~ん、〈アイテムボックス〉になにかいいの入ってないかな?
...あ!そうだ!あれがあるじゃないか!
「ルティアちゃん、急に来たお詫びにこれで何か作ってくれないかな?」
そう言うとユキは腰にある[アイテム袋]からおよそ3kgの肉の塊を取り出してルティアに渡した。
「はい?あ、わかりました。...?これってなんの肉ですか?」
「ん?デリシャスボアの肉だよ。まだ持ってたからね!」
何肉か聞いたルティアはユキに昨日みたいな反応をしたものの、腕の見せ所と思ったのか意気揚々とキッチンのあるであろう場所に向かった。
調理されればあの肉はどれだけ美味しくなるのだろうか、そうユキが思いを馳せながらカリナと一緒に二人を待った。
「あなた、よくあの肉を手に入れられたわね。店では最低でも銀貨10枚はするのに」
「え~っと、森で罠を仕掛けて掛かったのが偶然デリシャスボアだったんです。運が良かったんですよ」
一応、嘘をついてないよ?待ち伏せも罠だから。
だからその疑がい目を止めてくださいな!
「まぁ、いいわ。そう言う事にしとく。私も食べられるしね」
じとーっと見ていたカリナは一つ息を吐くと呆れたような顔で言う。
でも心なしか声を弾ませているように聞こえた。ご馳走なのは変わらないから彼女も楽しみなのだろう。
「...お待たせ」
シエルさんが着替えから帰ってきた。着ているのは髪の色と同じ様な薄い水色の簡素な服でこれはこれで似合っていたがそれよりも目を引くのはその容姿だ。ルティアは護りたくなるような可愛い容姿、シエルは可愛いから美しいになる途中段階って感じだ。
ただ身長ではユキとあまり変わらないのでお姉さんと見るよりも同級生に見えてしまうユキだった。この3人の中で一番年上に見えるのはカリナだろう。ふざけてお姉ちゃんと言うと睨まれてしまった。
「お料理できました!お待たせしてすいません」
そうこうしてる内に料理が出来上がり、テーブルの上に並べられていく。主食にパン、サラダにステーキ、白い湯気を立てるシチュー、など美味しそうな料理ばかりだ。
「おー!美味しそうだね♪」
「ひさびさにルティアの料理見たけど...すごいわね。私よりも美味しそうに作れてるわ」
「...ふふん♪」
シエルがどやぁ!と胸を張っていた。自慢の妹はすごいだろう!って感じだ。実際に10才でこんなに作れるのはすごい。
ゴクリッ......美味しそう。何から食べるかな。サラダから?シチューから?う~ん、迷うねぇ。
シエルさんとカリナさんはもう食べてるし、よし!シチューにしよう!ルティアちゃんにすごい見られてるしね。
仮面をずらして食べやすくした後、木のスプーンを手に取り、シチューを掬うと口に含んだ。
「...んむー!!ん~、くぅ!」
熱ッ!!ひはやへどひた~!ひゃまふのひゃれてた。ん?あ、治った。〈再生〉便利~♪
よしっと味は~美味しい!今まで食べたシチューの中で一番美味しいよ!野菜の旨みがよく出ているし、クリーミーな味でボク好みだ。野菜はとろとろで歯がなくても大丈夫なほどだよ!う~ま~い~!!
「味の方はどうですか?」
ユキが上機嫌で食べているとルティアが心配そうに聞いてきた。どうやら熱さに悶えた後、あまりの美味しさにパクパクと機械のように食べていたようだ。すぐに料理の感想をルティアに伝えた。
「すっごく美味しいよ!これならお店が出せるレベルだよね」
「...当たり前。ルティアの料理が世界一」
「シエルのは言い過ぎだけど、どれも本当に美味しいわよ?」
「あ、ありがとうございます!」
嬉しそうにお礼を言ったルティアはやっと料理に手を付けた。どうやら食べた感想が気になっていたよう
だ。
みんなでどんどん食べていき、テーブルの上にあった料理はすべて無くなる。デリシャスボアの肉もあんなにあったのにキレイに無くなっていた。味は...とても美味しかったです。それ以外ありません。
その後はお茶を飲みながら自己紹介を改めて行った。
「ルティア・シルファールです!ジョブは精霊使いです。よろしくお願いします!ユキさん」
「...シエル・シルファール。ジョブは魔導師。よろしく」
「カリナよ。ジョブは騎士。まぁよろしく」
ルティア、シエル、カリナの順で自己紹介していく。ここでユキは少し焦った。何故なら――
あれ?これってボク無職じゃない?
――である。これはゆゆしき事態だとユキは思った。無職=フリーターやニートという考えがユキにはあったからだ。この世界のl職業がどれだけ重要なのかは解らなかったが、自己紹介の時に使うくらいには重要なのだろう。ユキは3人に職業の必要性とどうやったら就けるのか聞いてみた。
何も職業に就いていないと聞いて、3人は驚きはしたもののいろいろと教えてくれた。
職業はその人が持ってるスキル、数ある中で適性があるかどうか、などで決まるらしい。
就く利点は職業ごとにステータス補正があったり、その職業のスキルが手に入れやすく、レベル上昇の補正があるらしい。職業に就いてるか就いてないかで大分変わるそうだ。
ではどうやったら就けるかと言うと冒険者ギルドで銀貨1枚を払うと出来るそうなので明日の朝に早速行くことになった。その後はシエルとカリナと一緒に依頼を受けるという流れで明日の予定は決まり、ルティアの淹れたお茶を飲みながら一休みする。
「あの~、ユキさんは何でお姉ちゃん達のパーティーに入ったんですか?」
ルティアがおずおず聞いてきた。それに応えたのはカリナだった。
「そう言えば話してなかったわね。あのガゼル達にユキが絡まれてたのよ。あいつら有名クランに属してるからって大きな顔してるけど、あいつら自体は大したこと無いくせにね」
ガゼルの名前が出たときにビクッとルティアが震えたように見えた。その反応を見たシエルは怒気が見えそうなほど怒りながらガゼルを罵っている。
「屑共、ルティアにも近付いた。殺す...」
「怖!ま、まぁあいつらの事は置いといて。明日どこの何時に集合すればいいの?」
「んー?朝の鐘が鳴る頃に冒険者ギルドの前辺りでいいんじゃないかしら」
「...ふぅ、それでいいと思う」
「わかりました。では明日よろしくお願いします!」
とりあえず明日の予定が決まったユキは少しした後宿に帰ることにした。去り際にルティアがまた来てくださいね!と言ってくれたのでお言葉に甘えてまた来ようとスキップしながらユキは帰路を上機嫌で歩いていった。
現在のユキのステータス
名前 ユキ
種族 吸血鬼
年齢 16
性別 女
Lv 15
HP 640/640
MP 480/480
STR 316
DEF 110
AGI 272
DEX 152
INT 286
MDF 125
〈特異スキル〉
異世界言語翻訳
吸血ノ聖姫
詠唱破棄 ‘詠唱速度上昇を統合’
〈スキル〉
剣術 Lv 4
投擲 Lv 2 ‘1up’
跳躍 Lv 2 ‘新’
鑑定視 Lv 4 ‘1up’
気配探知 Lv 4
魔力探知 Lv 1
隠密 Lv 4 ‘1up’
隠蔽 Lv 4
暗視 Lv 1
再生 Lv 4
魔力回復上昇 Lv 1
腕力上昇 Lv 3
脚力上昇 Lv 3 ‘1up’
衝撃吸収 Lv 2 ‘新’
皮膚硬化 Lv 2
アイテムボックス Lv 3
火魔法 Lv 2
土魔法 Lv 2
光魔法 Lv 2 ‘1up’
闇魔法 Lv 2
〈 称号 〉
はぐれ転移者
吸血鬼の姫
リンルア神の加護
小鬼殺し
〈 装備 〉
武器 - 鉄の短剣
防具 - 体 - 黒狼毛の胸当て
外装 - 黒のローブ