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依頼達成報告~


 今、ボクは厳ついおっさん達に囲まれています。てか卑怯でしょ!3人がかりで弱い者イジメなんて大人気ないよ!!


「はぁ、何か用ですか......」


 ユキは落胆したため息を吐くと目の前にいるガゼルを仮面越しに睨む。そんなユキの態度にガゼルは額に青筋を立てながら怒鳴り声を出した。


「っ!お前みたいなクソガキが冒険者になるから俺達冒険者が下に見られるんだろうが!!その上《竜の狂牙》に入ってるこの俺様を無視するとはなぁ!たっぷり思い知らせてやるよぉ!!」


 ガゼルの大声にギルド内に居る冒険者は声のした方を見ると、そこには昨日冒険者になっていたルーキーとガゼル達がいた。自然と注目が集まる。

 何故ならガゼルは新人にいろいろと難癖付けては罵声や時には暴力を行ってるからだ。そのせいで村から来た冒険者はその辛さから帰ってしまい、アルティアの冒険者が増えづらくなっているのが現状だ。

 冒険者ギルドから注意が入った筈なのだが、懲りてなかったらしい。助けに行こうにもその肝心のルーキーは黒のローブに不気味な仮面で近寄りがたく、結局は見守るだけだった。


「おい!おめえら!!このクソガキを押さえな!」


 その命令する一声に仲間と思われる二人がユキの肩と腕を押さえようと動く。

 が、ユキは冷静に相手の肩に伸ばした手を掴み、引っ張るとバランスを保つために一歩進んだ二人の間をすり抜ける。これで囲まれなくなったのでいつでも逃げれるがこれからずっと付き纏われるのは嫌だなと解決策を考えた。


 ふむ、どうしようか。他の冒険者は~傍観してるし、てか笑ってるね。冒険者ギルドの受付の人は~......ダメだ。頭を下げられただけでなにもしてこない。冒険者同士のいざこざは自分で解決しろってことかな?

 結論を言うなら...誰も頼れないってことだけはわかったよ!悲しい......


「おい!何でクソガキを容易く逃がしてんだ!!」


「すまねえ、子供だと思って油断しちまったんだ。次からは本気出す」


「それに以外と力が強いぞ。身体強化系のスキルを持ってるのかもしれねぇ」


 言い争いしてるなぁ。一人頭が回る人がいるけど、ああもう!名前がわからないなぁ~。こいつらなら罪悪感無さそうだから〈鑑定視〉使ってみよっと。

 え~っと?どれどれ。


 名前 パグ

 種族 人族

 性別 男

 年齢 32

 職業 シーフ

 Lv 14


 HP 315/320

 MP 70/70


 STR 122

 DEF 82

 AGI 165

 DEX 131

 INT  42

 MDF 36


〈 特異スキル 〉



〈 スキル 〉


 剣術 Lv 3

 回避 Lv 3

 隠密 Lv 2

 気配探知 Lv 2

 魔闘気 Lv 1

 罠発見 Lv 2

 

 〈 称号 〉



 〈 装備 〉


 武器‐鋼鉄の短剣


 装備‐体‐トロールの革鎧‐STR微上昇

    腕‐盗賊の手袋‐DEX微上昇



 名前 グルドイ

 種族 人間

 性別 男

 年齢 35

 職業 狩人

 Lv 14


 HP 225/230

 MP 112/168


 STR 106

 DEF 75

 AGI 124

 DEX 184

 INT  112

 MDF 52


 〈特異スキル〉


 鷹の目


 〈スキル〉


 弓術 Lv 3

 体術 Lv 1

 腕力上昇 Lv 2

 危険察知 Lv 3

 火魔法 Lv 2 


 〈 装備 〉


 武器‐リクルの木製弓


 装備‐体‐エルフの狩人服

   ‐装飾品‐命中の指輪‐DEX微上昇



 ん~?ガゼルよりも強くない?それとも同じくらいかな。殴り合いだったら勝てる自信がある!と思う。殴り合いなんてしたこと無いし。

 こうなると逃げるか、闘うかの2択だけど...幸いにも避けた場所は出入口近くだし、逃げようか。


 ジリジリと扉に近づいていく。あの3人組は言い争いをしていてユキの行動を見ていないようだった。走って逃げたい所だったが、依頼を終えてきた冒険者達が入ってきてるので誰かにぶつかる可能性がある。ユキは慎重に動いた。


 スースー...後25歩


「お前らが力負けするのが悪いんだろうが!!あんなガキに負けるんじゃあ、力が弱いんじゃねえのか!?」


「っ!そこまで言うこたぁねえだろう!それに俺は本気を出してなかったんだ!!俺が本気を出せばなぁ...」


「確かに負けたが、お前だって同じ結果になってたんじゃないのか?ガゼル。クソガキが逃げた時にお前も反応出来てなかったよな?」


「あぁ?俺のせいだと言いてぇのか?」


 スーッ...後15歩


「ああ、その通りだ。何ならそこにいるクソガキを...っていなくなってるぞ!?」


 あ、バレた。


「いたぞ!あそこだ!!」


 やっとユキがいなくなっていたことに気付いたおっさん達は周りを見渡して出入口近くにいるのを見つけると走り出した。

 もうほとんど出入口の近くにいたユキはガゼル達にどやぁ!っとドヤ顔を向けながら出入口に飛び込む。


 ボフッ!


 ......?おかしいなぁ?こんなところに壁なんかあったっけ?


「...どうしたの?」


 その声は聞いたことがあった。昨日聞いたばかりの声。ルティアちゃのお姉さん...シエルさんがボクを受け止めていた。

 それで今ボクはシエルさんに飛び込んだと言うことかな?うわぁ、恥ずかしい。


「ちょっとシエル、急に立ち止まんないでよ!ってあれ?あなたは確かユキだったよね?どうしたのよ」


 シエルさんの後ろから文句を言いながらボクを見たのはカリナさんだった。こんな状況で会うだなんて運が悪い、あのガゼル達が追い付いてしまう。急いで離れようと後ろに動くと普通に抜け出す事が出来た。


「すいません!ちょっと急いでたもので...うぁ」


 離れるともちろんガゼル達に近づく訳で、捕まってしまった。猫のように摘ままれて足が地面に着いていなかったがユキはジタバタと暴れ始める。だが離してくれない。


「2度も俺達から逃げようなんて、覚悟は出来てるんだろうなぁ!!」


 こめかみをピクピクさせながら怒鳴るガゼル。後ろから二人も追い付いたが一人が焦った声をあげた。


「が、ガゼルさん!ま、前に『麗氷の魔女』が!!」


 仲間の声が聞こえないのか、ガゼルは拳を振り上げる。ああ~殴られるのかな?っと思っていたユキは次の光景に唖然とした。


「ぎゃああぁあああ!!俺のうでがぁあ!!!」


 振り上げていた腕が凍っていたのだ。肘から指先まで厚さ5mm位の氷に覆われて、近くにいたユキまで冷気が襲い、寒くなる。こんなことになってもユキを離さないガゼルはある意味すごいだろう。


「クソガキがぁあああ!!!」


 あ、すごいよ母さん。今ねボク、飛んでるんだ~♪っく!あぅ!


 ガゼルはこうなった原因をユキと考えたようで、投げられ、壁に背中から激突した。ドン!っと痛そうな音がして壁に背を当てたままユキは座り込むとこっそり出入口を見る。

 そう、ユキはノーダメージだ。さっきので普通ならしばらく動けないだろう。だがユキは違う。スキルに〈皮膚硬化〉、〈衝撃吸収〉があり、ダメージが入らなかったのだ。痛みで言うなら、逆立ちに失敗して背中からマットに落ちる、位だ。堪えられなくもない。 しかし、ここですぐに立ち上がったらおかしいだろう。ランクGのルーキーが今ので何事も無く立ち上がるなんておかしいし、服装にもる効果で不気味だ。だからユキは気絶した振りをすることにした。


「あんのクソガキがぁ!殺してやる!!」


「おい、ガゼル!やったのはクソガキじゃない。『麗氷の魔女』だ」


「や、やばくないか!?逃げようぜ!!」


 怒りで周りの音が聞こえていないガゼルはユキを殺そうと近づこうとしたが、上げようとした足が動かなかった。疑問に思ったガゼルは足下を見ると床にあしが凍り付いて動けなくなっている。


「...何故、殴ろうとしたの?」


「ああ゛!ひょ、『麗氷の魔女』!ん、んなもん俺が気に食わねえからだ!!おめえには関係無いだろうが!!!早くこの魔法を解け!!」


 ガゼルはやっとシエルに気付く。怯んだ後、すぐに強気に言い放つがそんなガゼルをシエルは冷めた目で見下して魔法を解かなかった。誰が見てもシエルが優勢で、ガゼルは負け犬だ。ガゼルの仲間はガゼルの様にはなりたくないようで少し離れた場所で傍観していた。

 シエルとガゼルが言い合ってた間にカリナがユキの側まで来て心配そうな顔でユキを見た。


「あなた大丈夫?」


 ......どうしよう、話し掛けられてしまった。揺さぶられないのは体を気にしてかな?どちらにしてもマズイ状況なんだけど。ここは演技をしようか。


「げはぁ!くぁ...っ!ぐぅうう!...だ、大丈夫でっ...ごほっ!」


 体を起こして前屈みになり、口元あたりを押さえながら血を吐くかのようにに咳き込む。いかにも今起きましたよ、とも演出した。

 そんなユキの演技を近くで見たカリナは慌てたようすで腰のポーチから黄緑色の液体が入った瓶を取り出して、ユキの口元に持ってきた。


「え!えっと、これを飲んで。回復ポーションよ!」


「あ、あり...っごほ!、ます。ゴクッ...っっ!」 


 まずっ!!!

 苦い苦い苦い苦い苦い!!うぅうう!!吐いちゃダメだ!吐いちゃダメだ!吐いちゃダメだ!

 ...お肉食べたいよ~~!


 仮面の口にある穴から入れて飲んだ回復ポーションはすごく不味かった。たしかに体がポカポカと温かくなって効果はあるんのだろう。カリナさんのご好意に感謝しながらユキは立ち上がった。


 ふっ、ボクの演技力も捨てたもんじゃないね♪でも心が痛むよ...


「すいませんでした。あと回復ポーションをありがとうございます!それでこれ、値段はどれくらいですか?」


「うん?ああ、気にしなくてもいいわよ?困った時はお互い助けていかないとね...それにしてもあなた、嫌な奴に絡まれてたわね」


 そう言うとカリナは出入口の方を見る。ユキも釣られて見るとガゼルが氷に包まれていた。あれ死んじゃったよね!?っと思っていると、シエルの魔力が高まり、腕を横に振る。すると一瞬でガゼルを包んでいた氷が消えてしまった。意識は無いようで氷が無くなって倒れた後、ガゼルの仲間が慌てて肩で腕を担ぐとギルドの休憩所に行ってしまった。

 シエルはガゼル達を見向きしないでユキ達の所に歩いてくる。周りから「さすが『麗氷の魔女』だな」など口々に仲間と言い合っていた。


「...大丈夫?」


「あ、はい!大丈夫です!カリナさんから回復ポーションを頂いて完全回復しましたよ」


「大袈裟ね。これくらい普通よ」


 優しい人達に会えて嬉しがっているユキ。そんなユキとは反対にシエルとカリナはは真剣な面持ちで話し合っている。


「でもあいつしつこいからまた来ると思うわ。どうしましょうか」


「...私達でしばらく面倒を見る?ルティアを助けてくれたお礼」


「う~ん、まぁ私はいいわよ?見た目はあんなんだけど、悪い奴じゃ無さそうだし」


 話が勝手にどんどん進む。ユキは流されるままシエルとカリナのパーティーにお世話になることになってしまった。どうやらそこまでガゼルは粘着質らしかった。シエルの「...ルティアにも絡んできた。いつか殺す」っと言っていたのでその時は協力します!っと心で誓うユキだった。


 その後、二人も仕事帰りだそうで受付に一緒に行った。今回もレミリィさんの所で達成報告をする。(別にわざとじゃ無いよ?)


「依頼の品を持ってきました。薬草10束です。後借りてた資料、ありがとうございました」


「お帰りなさい、ユキさん。先程は申し訳ございません。ギルドでは冒険者同士の争いは基本不干渉なのです。本当に申し訳ございません」


「いえいえ、しかたないですよ。それよりも人を待たせているので依頼の確認をお願いします」


「あ、はい。では確認しますね。...薬草10束確認しました。ユキさん初依頼達成です。おめでとうこざいます。こちらが報酬になります」


 レミリィさんに銅貨2枚を貰い、数回話した後はシエルさん達と冒険者ギルドを出た。もう外は暗く、人通りも昼間より少ない。

 どうやらパーティーを組むにあたって自己紹介をしたいようだ。場所はシエルさん家。ルティアが夕飯を作って待っているかららしい。

 楽しみだな~っとユキは思いながら二人の後を着いていった。

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