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勇者達、召喚です~



 ― リクセンク王国 王宮 地下室 ―


 王宮の地下室から溢れんばかりの光が魔法陣から放たれる。それを固唾を飲んで見守る宮廷魔術師達は眩しそうに顔をしかめるが決して目を背けない。

 光が段々と輝きを失っていくと無人だった魔法陣の上に複数の人が倒れていた。その事に周りは喜び会うが一人が大声を上げる。


「喜ぶ前に大部屋に運び込め!国の未来がかかってるのだぞ!勇者様方を安静な場所に!」


 その言葉に宮廷魔術師達はあわてふためきながら担架で一人一人地下室から出していった。

 それを見守りながら宮廷魔術師団長、ハルテック・ファンドルークは今後の事に頭を悩ませる。これから勇者方が起きたときに説明と説得するのは自分の役割だったからだ。その時に上手く説得して味方になってもらわないとこの手で始末しないといけない。その事に憂鬱になり重い溜め息を吐いた。


 ハルテックは今回の勇者召喚に反対だった。

 そもそもの原因は魔族が攻めてきたことだ。数ではこちらが上だったが個々の身体能力が高い魔族に押され気味で後数年でいずれかの国が落とされてしまうだろう。そこで我が国の勇者召喚の術式により勇者様を呼べと各国から圧力が来たのだ。魔族が攻めて来る以前はお互い戦争をし合ったと言うのに......身勝手な話だな。

 だが1500年前に我が国が古代魔法の一つ、勇者召喚の復元に成功して呼んだ初代勇者はそれほどまでに強く、魔王すら倒したのだからそう思う気持ちは理解出来る。

 でも私は勝手に連れて来られて戦いを強いるのはおかしいと思うのだ。それには王も賛同してくれたが今回はせざるを得ない状況にある。

 なぜなら何処から漏れたのか、我が国の勇者召喚の重要機密が他国に渡りそれぞれの国が我先にと呼び出してしまったのだ。......込める魔力の量に比例して呼ばれる者の力が変わったりそもそも召喚されなかったりするのに、だ。つまりは〈リンルア神の加護〉や〈異世界言語翻訳〉などは異世界に渡る際にリンルア神様から授かるが、職業などは魔力量により変化する。才能がある者が来るかどうかだ。

 我が国はありったけの魔核で召喚した初代勇者以来、念のために魔核を貯めた為今回の結果になったが、他国はどうなったか情報が来ないためわからないがほとんどは失敗するだろう。魔核の利用方法は多種多様だから。

 私の考えではこの世界の問題を他世界の人間に頼るのはおかしいと考えてる、が勇者召喚をしなければ!と各国のみならず、国内の貴族共がこの案を押し切ったのだ。そのため王から勇者召喚の命令が出された。


 だから私は召喚した。仕方がないと自分に言い聞かせて。

 国内の貴族は腐ってる。もしも勇者様方が反対し暴れだした時にはハルテックが抑える、もしくは始末と言うふざけた命令を貴族連中はしてきたのだ。自分の子と同じくらいのあの子らに。本当に何でこんな状況になってしまったのだろうか。

 これならまだ隣の実力者主義のアルカルト王国の方がマシだ。戦い好きの脳筋がほとんどだが自分達の力で対応すると言ってるのだから。

 実際あの国は三姫騎士が攻めてきた成竜と肩を並べる程に強い上位魔族を撃退してる。リクセンク王国にも王宮騎士団長がその実力に届いているかどうかくらいなのだから戦力では完全に負けてる。勇者様方を鍛えるならこの国よりマシなアルカイト王国が最適だろうからそこに送るように王様に伝えよう。


 そう考えていたハルテックは気付いたように周りを見渡すと部屋には誰も居なかった。自分も早く出ようと思い、せめて最後にチラリと召喚魔法陣を見ると一瞬輝いたような気がして足を止めるが何も変化は無かった。気のせいかと薄暗い階段を上がっていった。




――――――――――――――――――――




「雲の上だぁ~♪ふわふわむきゅ~♪」


 そんな平和な寝言を言いながら寝返る。しかし、いつも寝ているベットとは違う感触に不思議に思いながら夢から現実へと意識を変えていく。


 あれ?私のベットってこんなにふかふかだっけ?それに手が横の壁につかない...おかしいな~?


「う~ん?広すぎないかな?」


 心の中で疑惑が膨れ上がる。

 不安に駆られた由香は体を起こし、目を開けて部屋を見ると、その光景に目を見開いて驚愕する。まだ私は夢の世界にいるのかな?と頬をつねるが夢じゃないとしか分からなかった。

 手で赤くなった頬を擦りながら由香は改めて部屋の中を見る。広い、とにかく広いと感じた。カーテンや扉、椅子や机に花の入った花瓶まで一目で高いと分かる物ばかりで売ったらいくらになるだろうと考えてしまう。今由香が寝ているベットはキングサイズを越える大きさで5人は寝れる程だ。

 そんな部屋に一人きりでどうなってるのか由香は混乱していたが教室であった事を思い出す。がそれでも今の状況は分からなかった。説明下さい!と心の中で絶叫しているとそれを見計らったようにメイドが入って来る。


「目が覚めましたか?お体の調子は大丈夫ですか?」


「だ、大丈夫ですが、ここって何処ですか?」


 人が来てくれた~!声に出して叫ばなくてよかったよ。でも何でコスプレしてるのかな?様になってるけどね。けど言葉は心配の言葉なのにこの人無表情でちょっと怖い。

 しか~し!情報を集めるチャンスを逃す訳にはいかないね!とりあえず...ここ何処?


「それを含め、宮廷魔術師団長のハルテック様よりご説明があります。勇者様方が起き次第お連れしろとの事ですので広間にご案内します」


「......分かりました」


 由香はしばらく考えたがここは指示に従う事にした。何もわからないこの場所で変に暴れたり抵抗したりした時に何をされるか、最悪の場面も想像した方が良いだろうと身震いする。最低でも指示に従えば殺されることは無いと願いたい。

 とりあえず由香はベットから出るとメイドの元に向かった。その後、メイドが先を歩いて先導するのを由香は大人しく付いていった。


 この部屋は言うまでもなくリクセンク王国の王宮の客室で、2 - Bのクラスメイトは一旦運び込まれていた。他国の使者や重鎮などが泊まれるように客室が存在するのだが数が無駄に多い。今回はそれが役に立って38人全員一人部屋に寝かせることができた。

 そして初代勇者の時は召喚して一時間後に起きたと記されていたので各々にメイドを一人付けておき、起きた時には広間へと通すように命令が出ていた。


 続々と広間に集まるクラスメイトは100人は座れるだろう長方形の机と人数分の椅子が置かれ、すでに何人かは座っていた。

 由香は幼馴染み達を探すがまだ来ていないみたいで居ないことに肩を落とす。


「いないな~ゆっくんと大雅、まぁ来るの待てばいいか」


「由香様、こちらのお席にどうぞ」


「あ、はい」


 メイドのターナさん(来る途中聞いた)に引いてもらった席に座る。どうやら男女に別れているらしく対面には男子が周りをキョロキョロしたり、後ろに控えてるメイドに鼻の下を伸ばしたりしていて女子から冷たい視線を向けられていた。ゆっくんはあんなことしないよね?

 そう思考していると隣に座っていた人、委員長の菊島さんが話し掛けてきた。


「春木さん、体の調子は大丈夫ですか?」


「え、うん!今のところ何も無いけど、菊島さんは大丈夫なの?」


「私も大丈夫です......ところで春木さんはここが何処だと思いますか?」


 お互いの体調が悪くないのが分かった所で菊島さんが本題を切り出してきた。

 由香は少しの間考え込むと自分の考えを話し出した。


「たぶん外国のお城かな?家具とかヨーロッパに有りそうだし、一目で高級品だって分かる物ばかりだからね。それにあのメイドさんコスプレかと思ったけど、様になってて本物だと考えると、いるとしたらヨーロッパ辺りかなと。でも宮廷魔術師団長ってのがわかりませんね」


 どうやってここまで連れてきたのかは不明だけどこんな大きな城はまず日本には無い。あったら目立つからね。


「私も春木さんと同じ意見です。テレビで言うドッキリを期待したい所なのですが、雰囲気が少々重苦しいので違いますよね」


「ふふっ、そうだね。でも以外に菊島さんってテレビとか見るんだ~」


「最新の情報を得るのに見てますよ?」


「いやそういうのじゃ無くて!お笑い番組とかクイズ番組とか見ないのかな?」


「そうですね、動物番組なら見ますが」


「あ~!良いですよね。猫とか犬とか、カワイイよね~」


 話していく内にお互いの好みが一致してお友達になれた私達は下の名前を呼び会えるようになった。前までは考えられなかったことだ。二人で今後の事を話したりして元気が出てきた頃に大雅が広間に入ってきた。話をしたかったがその後ろにゆったりとしたローブを着た人も一緒に入ってきて行けなかった。どうやらあの人が宮廷魔術師団長?って言う人らしい。以外に若い。

 でも入ってきた時に扉が閉まってしまう。何処をどう見てもゆっくんが居なかった。聞きたかったが次の言葉に驚いて固まってしまう。


「ようこそ勇者様方、リクセンク王国へ。どうか我々人族を救っていただきたい」


 そこから始まった説明は予想を遥かに越えるものだった。まずこの世界が地球ではなく剣と魔法の世界だと言うこと。私達は攻めてきた魔族を押し返して魔王を討って欲しいとのことだった。その事に宮廷魔術師団長のハンテックさんは申し訳無さそうに謝っている。

 そんな身勝手な理由で私達は連れてこられたのかと怒りが込み上げてくる。周りのクラスメイトは罵声を宮廷魔術師団長のハンテックさんに浴びせていたが時間が経って誰も言葉を喋らなくなった。こんなことを言っても何も変わらないと、わかってはいるんだ。みんなの顔には諦めが浮かんで来ている。

 その時、凛とした声が響いた。それはさっきまで話をしていたl菊島〈きくしま〉 l零〈れい〉ちゃんだ。


「一つ、お伺いしたい事が有ります......私達は元の世界に帰れるのですか」


「還すことは出来るが魔核をまた集めるのに十数年はかかる。しかし魔物の魔核や魔族の高い魔力を秘めた魔核を集めればそれだけ早く帰れるだろう。勇者様方は魔王を倒す程の力も身に付けられる」


 その言葉に大抵の者は安堵の息を吐いた。自分達のいた世界に帰れるのだから。

 それに勇者として呼ばれて自分も出来るかもしれないと考える者がほとんどだった。ゲームや漫画などでそうなりたいと思う男子は多く、魔王を倒せばいいんですよね!とヤル気満々な人までいる始末だ。

 ハンテックは喜び、王に伝えてきますと言い残して広間から出ようとしたところを由香が呼び止めどうしても聞きたいことをあったのだ。


「すいません!ここに男の子が一人足りないのですが、今何処にいますか?」


「...それは本当ですか?」


 ハンテックは真剣な顔で由香に問い返してきてそれに肯定すると調べてきますと早足でその場を去っていった。そのハンテックの反応で答えが大体予想できてしまった由香は目の前が真っ暗になりその場で倒れてしまう。

 その行動から想像出来るのは――


 

 幸はいないと言うことだった...




―――――――――――――――――――――




 次に目が覚めるとベットの中に由香は寝かされていた。どうやら失神してしまったようで太陽は沈んだのか部屋は真っ暗で月明かりで辛うじて見える程度だ。その月明かりが赤く、嫌でも異世界だと実感させられる。

 聞かされたことに涙腺が緩んで涙が出そうになるが隣から聞き慣れたもう一人の幼馴染みの声が聞こえて涙を引っ込める。


「大丈夫か?由香」


「私は大丈夫だけどゆっくんが...うぅ」


「その事についてハンテックさんから調べた結果を聞いたんだ」


 大雅と話せた事は嬉しかったがここにいないもう一人を思い出させ、また泣きそうになるが大雅の言葉に掴みがかる勢いで大雅に詰め寄った。


「ゆっくんはどうだったの!?」


「まぁ落ち着け、気持ちはわかる。えっと、調べた結果だがこの世界にいるのは間違いないそうだ。何でも他の勇者召喚と偶然重なって転移する場所がおかしくなったらしい。この事は初めてだったから今捜索してるそうだ」


 その事に由香は胸を撫で下ろす。もう会えないわけではないと安堵して。

 その後、二人で話した後に由香はまた眠くなり、大雅にからかわれながら眠りについた。

 寝たことを確認した大雅は踵を返して部屋を出る。罪悪感に胸を痛ませながら。実は由香には言ってないことがある。確かにこの世界に転移されてるが安全な場所かどうかわからないのだ。しかもこの世界には魔物までいる危険な世界、幸が生きてるかどうかも確率は低いかもしれない。

 だが真実を言えば由香の心が持たないし、死んだことを確認した訳でも無いから希望を言ったのだ。早く強くなって3人また揃うんだと大雅は決意を新たに部屋を出た。


 その日から一ヶ月間、ギルドカードをそれぞれが作って貰い、それぞれに合った訓練をした。大雅と由香は人一倍努力をして大雅は剣と光魔法を、由香は神聖魔法と言う回復に特化した魔法と風の魔法を鍛えて実力は勇者達の中でも上位になった。

 あれから幸はまだ見つかっていない。捜索はまだ続いてるが成果はこれといって無かった。だが二人は幸が生きていることを信じて今日も強くなる努力をする。


 戦い方を覚えた勇者たちはレベルと実戦経験を上げる為に勇者一同はカルネクト王国に向かった。

 お読みいただき、ありがとうございます!


 勇者達のことをそろそろ書かないとな~と思ったので書きました。勇者達のステータスはまた今度書きます。


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