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ものぐさな賢者Ⅱ  作者: 黒湖クロコ
師匠編
25/26

8-2話

 ヘキサ兄に相談した所、ロベルトの採用はすぐに本決まりになった。……いや、本当に、ロベルトの意見聞いてあげてと思ったけれど、ロベルトもペルーラとの遠距離恋愛にため息をついていたそうなので、丁度良かったらしい。そもそもロベルトは特に仕事が好きというわけではなく、仕事の後の一杯が好きだそうで……。

 あまりにド田舎過ぎてお酒を手に入れるにもかなり離れているけど大丈夫だろうかと心配したが、獣人ならではの体力で、走って町との往復ができるので、まとめ買いしてペルーラが管理するという事になったそうだ。改めて思うけど、獣人の体力凄い。私の獣人の血は一体どこへ行ってしまったのだろか。


 ただ流石に私の家にロベルトを呼ぶのはどうだという話になり、村に一軒家を借りる事になった。ペルーラと恋人関係だし、私は混ぜモノでアユムは対象外年齢だから問題ないと思ったが、アスタが全力で拒否した。年頃の娘と男が同棲するのは、例え従業員でも禁止だそうだ。それでいくと、ディノは――と言いかけたが、ディノの方がアスタに全面賛成をして、私の方を見て『余計な事を言わないで!!』と口パクで伝えてきたので、黙っておいた。たぶんここは、沈黙は金なりの場面なのだろう。

 更にヘキサ兄も同意見でアスタ案を押したので、結局そういう事となった。恋人の時間を邪魔するほど野暮でもないので、それで丁度良かったのかもしれない。


 エナメルの妹情報は、アリス先輩がかなり多く持っていた。流石、図書館員を見守る館長だ。付け焼刃な私とは違う。

「……幼女が好きな玩具ってなんだろ」

 どうやらエナメルの妹は同じハーフエルフだが、エルフ族の血が強く出た為、成長が遅いらしい。すでに成人に近い姿エナメルに対して、妹はまだ五歳程度の姿だそうだ。年齢差は五歳という事なので、妹さんはかなり成長が遅い気がするが、エルフ族としては普通らしい。

 一般的に魔力が大きい種族だと、エルフ族と魔族が上げられる。魔族は成人までは魔力の大きな人間に近いスピードで成長してその後ほぼ止まってしまうが、エルフは幼少期から成長がゆっくりなのだ。その話を聞くと私もエルフ族寄りの成長なのかなと思うが、こればかりは分からない。

 そして五歳の妹さんは、知能こそそれなりにあるが精神的にまだ幼いと言っていた。手土産を持っていくならお菓子か子供が好きそうなものを選ぶべきだけど……分からない。本気で何がいいのか分からない。


 手土産の茶菓子はは手作りのパウンドケーキに決めたが、妹さんを懐柔――もとい、スムーズな会話を促すためには、もう一つ彼女専用の手土産が欲しいところだ。

「先生、この人形なんていいんじゃないか?」

「えー、ボクはこっちがいいと思う」

 ディノが持ってきた人形は布製の女の子の人形だ。対してアユムが持ってきたのは、ガラス玉の入った玩具の宝石箱だった。

 とりあえず一人では決められないと分かっていたので、手土産選びには精神年齢の近そうな二人について来てもらった。ついでに二人にもそれぞれ一つづつ何か買っていいと伝えてある。ちなみにその結果二人が選んだのは、ディノは魔力を流せば水が出る仕掛けの魔道具、アユムは玩具の剣だった。……この姿を見ると、本当に人形やおもちゃの宝石を手土産にして喜ばれるのだろうかと悩む。


「うーん。姿は五歳だけど、まんま五歳というわけじゃないし……」

 私は例外すぎるのでアレだけど、でも私の様に知能だけが先に発達すると、逆にごっこ遊びとかが恥ずかしくなったりして結局遊べない可能性もなきにしもあらずだ。できれば今回は様子見の無難なものが良いだろうけど……それは一体どんなものなのか。

「なら、本にしたら? そのエルフの女の子の兄ちゃんが図書館で働いてるなら、興味はあるだろ」

「確かに。絵本なら、文字の習得が遅れてても絵を楽しめるか」

 文字の勉強にもなるし、悪い選択ではない。


 とりあえずディノ達におもちゃを買ってやり、私達は本屋へ移動した。

 私が良くいく本屋は、学生時代からの付き合いなので、混ぜモノの私が行っても特に何も言われない。子連れで中に入ってもチラッと一瞥するだけで、店長は普通にレジで本を読んでいた。とっつきやすいタイプではないけれど、本を選ぶ時に立ち読みをしても急かされたりもしないので、結構いい距離間を保ってくれる店長だと思う。

 児童書が置かれた場所は、幼児向けの絵本もそれなりに置いてあった。

「あっ、これ。懐かしい。エストのおすすめ絵本だ」

 幼少期に体の弱かったエストは、外で遊べなかった分、色々な本を読んでいた。その趣味が高じて、最終的に妙な同人作家となった上で、更に長く多くの人に読まれる事になる『混ぜモノさん』を発行したので、いいのか悪いのか判別つけがたいけれど。

 ただエストは健康になった後も本が好きだったらしく、文通をしている時に、私は色々お勧めの本を教えて貰っていた。


「それ綺麗な表紙だけど、どんな話なの?」

「寂しがり屋の氷の魔女を救う話」

「へ? 魔女を救う?」

 基本童話は、お姫様が助けられる話が多いけれど、これは珍しく悪役を救うという話だった。前世の知識にある雪の女王を改変したような話だ。物語は氷の鏡のかけらが心臓に突き刺さってしまった少年を氷の魔女が連れ去ってしまったことから始まる。そんな少年を救うために幼馴染の少女が立ち上がり追いかけるのだ。

 でも氷の魔女も少年を殺そうとして連れ去ったのではなかった。鏡のかけらを抜かなければ少年が春の暑さにすら耐えられない為、魔女はあえて万年雪のある自分の城へと連れ去ったのだ。でも見目が恐ろしい氷の魔女は善意の行いも悪意に取られてしまい、村人も可愛らしい幼馴染の少女が正しいと氷の魔女に武器を向ける。

 そんな中、魔女の優しさに気が付いた少年は魔女を庇い、少女の放った矢に射られてしまう。しかし偶然にも心臓に突き刺さった鏡にぶつかり、鏡は粉々に砕けちった。その後少年の言葉で魔女が悪い人ではないと分かり、魔女は賢者として村人達と仲良くなったという話だ。

 ……さらりとディノに説明してみたが、ストーリーだけを取り出すと、村人の手のひら返しが酷いし、コレどう考えても少年をめぐる魔女と幼馴染の三角関係勃発案件のように思えてしまうが、とりあえず見た目で判断するのは良くないよというのは伝わる。正義というのは立場を変えれば変わるという教訓的なもので、児童書ながら結構深い気がする。

 


「これにする。挿絵も綺麗だし」

 私的にはお姫様系の話よりは、こちらの方が好みだ。女の子が好む内容かどうかは分からないけれど、悪くはない選択だと思う。

 レジに持っていくと、店長が本を受け取った。

「おまけ入れときますから」

「へ?」

「前にチラッと、クロスワードとか、迷路とか、ナンプレとか、そういう本があればいいのにと言っていましたよね。知り合いが作ったので、やってみて感想を教えてください」

「はぁ。どうも」

 余り記憶にはないけれど、どう考えても私の前世の知識から出てきたような言葉だし、何かの会話の弾みに伝えたのだろう。


 本はあるけれど、パズル系の本というのは存在してないようだったので、私的には嬉しい。……やる時間があるかどうかはさておきだけれど、頭の体操にはとてもいいと思うのだ。本を読むのがあまり好きではなくても、パズル系の本ならば好きと言う人もいるし、本の活性化につながって欲しい。

「……混ぜモノも氷の魔女みたいなものだよな」

「まあ、嫌われているのは同じだと思う」

 見た目が醜いのとはちょっと違うけれど。でも自分とは違う、よく分からないモノだから余計に怖いという点は同じかもしれない。

「でも本当は混ぜモノは悪くないし、ちゃんと知ってもらえれば、こうやって感謝もされるんだよな……。なあ、先生。その本ってうちにもある?」

「ある」

 ディノは混ぜモノではないけれど、混ぜモノだと勘違いされて迫害されていた経験がある。

 混ぜモノは私自身の事でもあるので、ソレが全く悪くないと言いきることはできないけれど、第三者の立場に立つとディノが悪い子だったとは思えない。


 彼はこれから勉強も頑張らなければいけないけれど、それよりもまずは、自己肯定できるようになっていかないといけないと思う。あの虐待は彼が悪かったわけではなく、考え方が違っただけだと思えなければいけない。その為には色々な考え方を学ぶのも大切だし、私は彼が考えたことを肯定して手助けをしていった方が良いだろう。最低限の知識を身に付ければ学校に入れるのだ。勉強の事は学校で覚えればいい。

 だから私は、彼が好きに学べる環境をつくる必要があると思う。

 それはアユムも同じだ。魔力のないアユムは魔術師にはなれないし、ウイング魔法学校にも通えない。だからこそ、それが悪いことではなく、別の生き方を選べる選択肢であると知っていく必要がある。どうしていくのが一番いいのか、子育ての知識が全くない私には分からない部分も多いけれど、あずかった限り、私は彼らがちゃんと独り立ちできるように心を砕くべきだろう。


「なら、その本貸しくれる? 辞書で調べながら読んでみる」

「分かった。読み聞かせて欲しい時はいつでも言って」

「でも、先生、忙しいだろ?」

「私が先生でいいなら、そこは遠慮する必要ない」

 私以外にも魔法に詳しい人はいる。理論だったらぶっちぎりでアスタだし、教え方ならヘキサ兄とかアリス先輩だろうし。

 それでもディノが私を選ぶというならば、私ができる範囲でやろうと思う。


「よ、よろしくお願いします!!」

「ボクも!!」

 二人の元気な返事を聞きながら、忙しすぎる毎日だけど、何処に重点を置いて働くのが一番いいのか、一度見直そうと考えた。

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