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オスフィア学園編7

 僕は、溢れる涙が止まらなかった。人を思って泣くことがこんなに苦しいことだと知らなかった。一番に大切な人で、命を助けてくれた恩人の寿命を知って、何も出来ないことがこんなにも苦しいことだと知らなかった。

 苦しくて、苦しくて堪らなかった。お願いだから、これ以上……魔法を使わないで欲しい。これ以上、ルート兄様を苦しめないで欲しい。せめて、二十年だけは生きて欲しい。

 どんなに彼の寿命を伸ばす研究をすることをして、その研究を成功させたとしても彼は絶対に魔法を使うことはない。

 ミレイさんの事件でも、そうだった。彼女の存在を忘れないためかはわからないけど、彼女につけられた傷の跡を彼の回復魔法の技術があれば消せるのに消そうとしなかった。

 そんなノハルお父様のことだ、自分の運命に抗わずにその運命を受け入れることくらいは僕にはわかるし、お父様の側にいた皆もわかっているだろう。


 だから、僕らもこの運命を受け入れるしかないんだと言うことを、僕は受け入れることは出来ず……僕は保健室のベッドから降りて、保健室から飛び出した。

 そんな僕を追っかけようとするカエデさんを制したノハルお父様の声がした。そんな声は、大きく響き渡っていたけれど……その声は微かに震えていた。


 だけど、今は見てはいけないような気がした。

 今、ノハルお父様の表情を見てしまえば、僕は彼にとって望まぬ行動をしてしまいそうな気がしたから……僕は後ろ髪を引かれながらも、屋上へと向かって走った。

 僕は、屋上へとついたと同時に涙腺が壊れたように、保健室にいた時以上に僕は泣いた。堪えていた泣き声も、大きな声を出して泣いた。


 大好きだった。

 どんな人より、大切で、失いたくなかった。

 ノハルお父様の体の調子を調べている魔法なんて、使わなければ良かった。


 死期より後、五年や二十年もあるのに……後、五年……後、二十年しか生きられないと後ろ向きに考えてしまう。

 もう、どうしたらいいかなんてわからない。


「ノハルお父様……」

「ユキメくん!」


 と、静かに呟くと誰かに僕の名前を呼ばれた。だから、呼ばれた方向へと振り返るとそこには、悲しそうな顔をしたサクラさんがいた。僕は思わず、後ろへと一歩下がるとサクラさんはめげずに僕の近くにより、僕のことを抱きしめた。


「…………ユキメくんは覚えてないだろうけど、私ね、ユキメくんに入学式の時、助けて貰ったんだ!!

不良に捕まっていた私を、たまたま通りかかったユキメが助けてくれたの!

そのおかげで、入学式そうそうに遅刻しなくてすんだわ。ユキメくんは入学代表生徒だったから、すぐにわかったの……。

……でも、ユキメくんになかなか近づくことは出来なかったわ……。そんな私を見かねて、モカは貴方に勝負をしかけに行ったの。勝負に勝ったら、どうにか私に逢って貰えるように頼むために……でも、ユキメくんはその勝負を受けもしなかった。

その理由は、『貧血になりやすいから』だった。モカは、嘘だって思ったみたいだけど……私は、本当なんだろうなって思ったし、そんな状態なのに私を助けてくれたんだって、凄く嬉しかった……。

その時、初めて気づいたの……。私は、ユキメくんに一目惚れしたんだって……。だから、こんな時に言うのはずるいかもしれないけど、私は貴方のことが好きです!

貴方の側にいたいです。時間がかかってもいいから、貴方の側にずっと、いたいんです!

お友達からで良いから、お願いします!」


 と、サクラさんは僕に頬っぺたを赤くしながら、告白してくれた……。

 初めてだった。女の子にこんな僕を想った告白をされたのは、初めてのことだった。そんな彼女を知りたいと思ったし、好きになりたいと思った。

 ミレイさんがノハルお父様にやったことを、他の女性がやるとは限らないとここで初めて気づいた。


「…………友達からなら、いいよ、サクラさん」


 と、彼女に向けてそう言った後に、ニコニコと笑った。そんな僕が笑顔を見せたと同時に彼女の頬っぺたは林檎のように赤く染まった。

 彼女のおかげで、気づけた。僕の想いをノハルお父様に伝えよう。伝えないで、後悔するよりは、伝えて後悔した方が良いに決まっている。

 ノハルお父様に、伝えに行くよりも僕は彼女に感謝の言葉を伝えないといけないね……。


「僕を好きになってくれてありがとう、サクラ。僕が君への気持ちがどんな気持ちなのか僕にはまだ、わからないから……友達からでよろしくお願いします」


 と、サクラさんと呼んでいた僕はサクラを呼び捨てにして、僕はそう言ってから、ノハルお父様に僕の想いを伝えるべく……保健室へと向かったのだった。




 僕は、貧血にならないように気をつけながら、走って数分後に保健室の前のドアへとついた。僕は、覚悟を決めて保健室のドアを開いて、もう誰も入れないように部屋の中から、鍵を閉めた。

 と、同時に僕は衝撃的なことを聞いてしまった。


「言い訳はしないわ、確かに私は、前世でも現世でも罪を犯したんだもの。でもね、これだけは言わせて……私は貴方の母だったわ。生け贄だった貴方を受け入れることが出来なかった。ごめんなさい、一番辛かったのは貴方なのに……。それなのに、私は二度目の人生でも同じ罪を犯してしまった。

だから、せめて言わせて……前世の分まで、自由に生きて……貴方はじゅうぶんに恩返ししたわ。だから、今度こそ自由に生きて欲しいの!」


 と、ルート兄様とカルト兄様の母親が言っていた。ノハルお父様から前世の記憶のことについて聞いていたけど……まさか、ルート兄様とカルト兄様のお母様の前世が、ノハルお父様のお母様だったなんて驚きの展開で、声が出なかった。


「僕は……貴女が嫌いです。大嫌いです」

「それでも構わないわ。そう思わせるほど、追いつめたのは私だもの……」

「でも、僕を産んでくださったことだけは、感謝しています。ありがとうございます。死ぬ前に、前世の母にそう言えて良かった」

「のはる……。そう言ってくれてありがとう。母親らしいこと、出来なくてごめんなさい。私も死ぬ前に貴方に謝ることが出来て良かったわ」


 と、彼女は涙声になりながらそう言って、保健室から出て行ってしまった。そんな彼女と入れ違いに僕は、彼らの目の前に現れて、僕は勇気を振りしぼって、ノハルお父様にこう言った。


「僕もノハルお父様に生きて欲しいです。アルファーセル学園は僕が継ぎます。だから、ノハルお父様にはアドバイスをして欲しいんです!

だから、理事長をやめて……僕が試験を受かるまで、誰かを代理に立てて下さい。それに僕は、ノハルお父様に僕の子供に名前をつけて欲しいんです!

運命に抗えとは言いません。せめて、魔法を使うのはやめて下さい。せめて、二十年は生きて下さい。お願いします!」


 どうか……僕の思いが……ノハルお父様に、届きますように……と考えながら、頭を九十度に下げたのだった。






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