ノハル、アートお兄様に報告致します?!
相変わらずのアートお兄さんの王子様スマイルに、僕の目が思わず眩しいと錯覚してしまいそうだな……。
ルートはルートで、目を見開きながら、口をパクパクさせているし……ラセルは苦笑いをしながら、硬直している。
「アートお兄様、ノハルはアートお兄様がお元気そうで、嬉しいです」
『ふふ……僕もノハルが元気そうで、とても嬉しいよ。報告石で連絡してくると言うことは、パルフェ家についての報告かな?』
そう眩しい王子様スマイルで、そう僕に聞いてきたのでコクリと頷いてから、アートお兄さんにこう言った。
「はい、まずは地域の人からの情報によりますと、急に領主に納める税金が増えたと聞きました。税を増やすことをサーバント国に報告していましたか?」
サーバント大陸では、税を増やす時はサーバントの王族に何故、税を増やすのかを『理由』と何%、増税をするのかを増税申請書に書いて提出して、サーバントの王族に増税が認められないと増税をすることが出来ないのだ。
僕の住んでいるアルファーセル大陸は、お父様が全てをまとめているので増税をするのか、しないのかを決めるのは基本的には銀狐族が決めている。
だけど、アルファーセル大陸では大きな災害などが起きない限りは増税をすることはないので、アルファーセルに住む人達からは反感を買うことがない。
でも、僕ら銀狐族は自然を元に戻す手伝いの出来る魔法を操ることが出来るので、よっぽどのことがない限りは増税をすることはないのだ。
『……そこまで、情報を集めてくるとは……ノハルは凄いね。パルフェ家からの増税申請書は来ていないし、許可もしていないよ』
「やはり……そうでしたか……。それとパルフェ家の領主は、監禁と児童虐待をしています。監禁は僕がこの目で確かに見て来たので、監禁をしていることは確かです。
児童虐待については、彼に無理に傷を見せるよう言わないで下さい。彼は相当、傷ついて……「いいよ、ノハル……。いつか、この傷を見せることになるなら……今、見せてしまった方が気が楽だから……」
そうルートは言ってから、制服を脱いだ。彼の上半身には数えきれないほどの鞭で叩かれた傷の跡。お腹には蹴られた後に出来るような傷が……。
『これは酷い……。
辛いのに良く頑張って見せてくれたね、ルート。君の勇気で僕達、サーバント大陸の王族も問題なく動けそうだ。……それからノハル、パルフェ家の情報をありがとう。すぐさま、パルフェ家の処分について、父上と相談して対処に当たる事にしよう。パルフェ家についてはサーバントの王族に任せてくれないか。
……アルティメット大陸との婚約破棄についても引き続き、僕らに任せてくれるかな? 話の流れ的に此方で行った方が問題が少なそうだからね』
そうアートお兄さんが言うとルートは彼の問いにコクリと頷いてから、こう言った。
「僕らの養子先ですが、アルファーセル領主、ロベル アルファーセルと決まりましたので、これを認めてもらえれば、僕は構いません」
『僕らとは、どう言うことかな?ノハル』
「今回、アートお兄様に報告の中でこの話が本題なのですが、この事件が起こったのはルルーク教の教えが原因だと僕は思っています。……否、ほぼ確定と言えるくらいの根拠はありますが……。
ルルーク教を信仰する人々は双子を不吉と思っています。ルートは双子でして、ルルーク教を信仰する領主夫婦ですから、悩みに悩み、精神状態が悪くなったのだと思われます」
『そうなんだ。でも、何故、アルファーセル領主であるロベルさんがルートくん達を養子にすることにしたの?』
アートお兄さんはいつもニコニコと笑っているのに、急に王族らしい真剣な表情になった。そんなアートお兄さんに僕はこう答えた。
「もう、僕はルートとカルトくんを傷つく所を見たくないからです。僕のお父様やお兄様なら……本当の子供のように、弟のように可愛がってくれると信じていますから。
僕は、大切な親友であるルートやカルトくんには幸せになって欲しいのです」
そうアートお兄さんに言うと、アートお兄さんはニコリと僕に笑いかけながら、こう言ってくれた。
『わかったよ。ルートくんとカルトくんのことについては君のお父様に任せることにする。
君やロベルさんに彼らのことを任せていれば、僕も安心だからね。そうか……彼が君の兄弟になるなら、僕の弟になるんだね~。
ルート、君も困ったことがあるのなら、遠慮をしないで僕のことを頼るといいよ。それと、今日か明日。パルフェ家に行くから、カルトを見つけ次第……君の家に行かせるから、一人使用人をサーバントの王宮に連れてきて欲しいのだけど』
そうアートお兄さんに頼まれたので、後ろに立つラセルのことを見ると……コクリと頷いていたので、僕はこう言った。
「ラセルをそちらに向かわせます」
『君の後ろにいる男の人だね。わかった。
あ、そうだ。ルートには自己紹介をまだしていなかったね。
僕はサーバント大陸の第一王子、ファル アート サーバントと言う。ノハルとは父親違いの兄弟だよ。ルートも気軽にお兄様と呼んでね。
それじゃ、ノハル、ルート。僕はパルフェ家についての問題に取り組むから、今日はこのぐらいにしよう。それじゃぁ……またね』
そう言ってから、報告石の通信をきった。僕はしばらく、報告石を見つめてから……ルートの方を見て、僕はこう言った。
「ルート、その傷……治してあげるけど……」
「うん……そうしてくれると嬉しい……」
僕は回復魔法を無詠唱でルートにかけた。みるみると痛々しい傷のあとが消えていき、僕は精神状態が不安定なルートを安心させるため、優しく包み込むように抱きしめた。
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「ノハル様、ルート様……今日は学校をお休みになって下さい。そんな調子で学校に行かれては私は心配です」
そう言って、ラセルは二人分の洋服を僕に渡してきた。そんなラセルに僕とルートはコクリと頷いて、ラセルが渡してきた洋服に着替えた。
普段ならラセルの言う事を八割の割合で、聞かない僕なのだけど……精神状態が不安定なルートを、まだ慣れていない環境に一人にしておく訳にはいかないからね。
今回は大人しくラセルの言う事を聞いておく事にする、……こんな状態のルートを学園に連れてって、ルーカ様と会わせる訳にもいかないし。
なんて考えながら僕が着替えている間に、ラセルも着替えて僕とルートの制服で魔法で綺麗にした後にたたんでから、すぐに学園に僕らが休むことを連絡していた。
その後にすぐに、僕らの朝食を作ってからラセルは、王宮へと向かっていった。
僕らは朝食を食べた後、ルートとともに僕の部屋へと向かい、ルートにアルファーセル大陸に関係する話をしながら一日を過ごした。
終始、ルートは笑顔だったのでアルファーセル家に養子になる事が嫌ではないんだと、改めて感じ取る事が出来て良かったけど……、無理して作り笑いを浮かべてないといいな。




