ノハル、がんばっちゃいますよ? 5
『あやかしの生け贄だと思われていた少年は、あやかしに幸せを祈られて転生しました!』を読んでくれている方々、ポイント評価、お気に入り登録してくださった方々、本当にありがとうございます!!これからも、ノハル達の活躍を温かく見守ってくれると嬉しいです。
「ノハル様……私はノハル様が怒ってらっしゃるところを初めて見ました。
ノハル様は人一倍、命の話になると敏感になることも、ノアだって知っていたはずです。貴方は気付いていないと思われていたようですが、常に側にいらっしゃったラセルさんは一番に気付いていたようです。
先程、ノハル様のノアに話していた話を聞いて改めて、命の尊さを知ることが出来ました。ありがとうございます、ノハル様」
僕はノーテルの話を聞き終わった後、狐の仮面を顔の横へとずらし、無言でソファーに座った。その後、ノーテルの方を向いてこう言った。
「そう……良かった。ノーテル、命がどれだけ尊いのかを忘れてはいけないよ。確かに僕ら、狐族は強いし、相当な出来事が起こらなくては死に至ることはないだろう。
しかし、人間と同じで心臓は一つだし、心臓を刺されてしまえば僕ら、狐族だって死に至る。狐族は自分の強さのあまり、そのことを忘れがちになっている。
だからね、ノーテル……君は絶対に命の尊さを忘れてはいけないよ。
僕だって潜入するから、たくさんの予防線だって張っている。……丸腰で行く訳じゃないし、夜遅くに行くのだって、姿を変えたのも自分を守るためなの。それだけはわかって欲しい。
……時にノーテル、僕の嫌いなことは『命の尊さ』をわからない人の他になんだと思う……?」
そうノーテルに問いかけると、ノーテルは僕の問いにどう答えるかを顎に手を当てながら、うーんと唸りつつ、真剣に考えながらこう言った。
「うーん……すみません、わかりません」
「ノーテル、良いんだよ。謝る必要はないから。この話は誰にもしたことはないし、ラセルはなんとなく気付いているだろうけどね。
ノーテル、僕は人の命を奪うような出来事は全て嫌いだ。世の中、生きたくてもね、生きられなかった人もいるんだよ……。それなのに、人の命を奪って良いと思うのかい?
生きたい、でも、生きられない。でも、死にたくない。もっと生きたい。と思っている人はたくさんいるのに……ね。
……ルートいるんだろう?入ってきて、僕の話を聞いてくれないか?」
そう僕が言うと、リビングのドアが開いた。ソファーの近くまで来て、ルートは僕の隣に座った。
「ルート……僕は前世の記憶があるんだ。短い人生だったよ。十三とか十四年くらいしか、生きることが出来なかったんだ。
……病気とか、そう言う理由とかじゃないんだ。僕はあやかしの生け贄として海へと身を捧げた。
でも、実際は生け贄だと思われていただけで、生け贄ではなかったんだ。
僕の前世はこの世界のように、魔法もないし……あやかしを見えるような人は昔いたようだけど、もういなかった。だから、海の王のことでも……勘違いが生まれてしまったんだ。
でも、海の王はとても優しいあやかしなんだ……。だからね、僕を……転生させてくれたんだ。
だから、僕はこの出来事が起きてから、命の尊さについての話について敏感になったんだ。
僕は戦争も嫌いだし、攻撃魔法もあまり使いたくない。だから、僕は結界と言う魔法が好きなんだ。攻撃魔法から物理攻撃からも人を護ってくれるからね。
でもね、何処の世界の理は矛盾している。人を護りたいのなら、ここの世界では魔物を倒さなければならない。
生きて行きたいのなら、動物から……命を頂いて……生きて行かなければならないのだから。
でも、その理を変えることは出来ない。変えてしまったら、この世界はきっと……壊れてしまうだろうから。」
僕は下を向きながら、ルートとノーテルにそう言った。僕はこの話を話終わった後、すぐに狐の仮面をつけ直した。
それから、僕は大人になったままだと言うことに気付いて、一旦、元の姿に戻ることにした。僕は無詠唱で化けの術を解除して元の姿へと戻る。
ルートはその様子を呆けたまま、眺めていて、僕が元の姿に戻った時と同時に、こう僕にルートは言った。
「……前世の記憶持ちか……。俺は信じるよ、だってお前は会ってから二日の俺の言葉を信じてくれた。それなのに、俺がお前のことを信じないのはそれこそ、矛盾しているからな。
それにノハルは人に嘘をつくような奴じゃないって俺は知っているし、ノハルが嘘をつくときは誰かを護る嘘なんだろうから。
ノハル……俺は、ノハルの心の中を読むことが出来ないから、ノハルがどれだけ苦しい思いをしてきたのかはわからない。
でもさ、話は聞くことは出来るからさ、苦しいことや悲しいことがあったなら……俺に話すだけでも気が楽になると思うから……時間がかかっても良いから、話してくれよ。
ノハル、俺に言ってくれたじゃないか。もう、ルートは一人じゃないよって。
だから俺も言う。ノハルも、もう、一人じゃないよ。俺がいるからね。頼ってくれよ、ノハル」
僕はルートがそう話終えた瞬間に、黒のマントを脱ぎ、狐の仮面を外して、造形した剣を床へ置いた。その後、隣に座るルートに勢い良く抱きついた。
「ルートぉ~…。僕もルートを一人になんかしないんだからね。よし、決めた。ルートを僕の家の養子にする。お父様ならきっと、いいよって言ってくれるもん」
「……ノハル……!!」
僕がそう言うと、ルートは僕の頭を優しく撫でてくれた。その時、魔力の歪みが感じ、その方向を見るとラセルがいた。ラセルはブァーと言う効果音が出そうなほどの大泣きをしていた。
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