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魔法技術体育館2

 ひたすら、僕は自分だけに向かってくるゴブリンの急所をついて、ゴブリンを倒し続けていました。

 相当な数のゴブリンを倒し続けているはずなのに、僕は汗一つもかいていないし、呼吸が早くなる事はありませんでした。そんな僕は自分自身に少しだけ恐怖感を抱きます。

 ……この力で大切な人達を傷つけるんじゃないかと思いと、僕は自分自身のこの力を使うのが怖くて怖くてたまりません。

 ですが……、この世界が魔法がなければ生きていけない世界なのは事実です。大切な人達を傷つけないように今まで、強くなろうと努力してきたのですから、少しは自分に自信を持たなければいけませんね。


 と、そう考えているうちに、隙が出来たのかはわからないが、後ろからゴブリンが近づいてきているのに、ゴブリンが剣を振り上げる音が聞こえるまで、僕は気づくことが出来ませんでしたが……。


『妖精の舞……。

《火炎舞曲》』


 僕は慌てて、ルートくんの声がする方へと振り返ると、ランディーネが扇をまるで自分の手のように扇を動かして舞を踊る。

 僕のことを背後から狙っていたゴブリンは、僕が振り返った時には《火》の妖精が舞う舞に見惚れていたらしく、ゴブリン達は一気に燃やされて、灰と化していました。

 この舞は、味方には一切効かないのですが、《火炎舞曲》を使った召喚士より弱い敵であれば、敵が《火炎舞曲》を見た瞬間に敵は灰と化してしまうと聞いたことがあります。


 と、僕はそう考えていると、《火炎舞曲》の魔法を使ってゴブリンを倒せたことにルートくんは安心したのか、魔法技術体育館の床に崩れ落ちるように座り込んでしまいました。


「ルートくん!大丈夫?!」


 僕は崩れ落ちるように座り込んだルートくんの側に駆け寄りました。

 取り敢えず妖精を戻させてしまった方がいいと考えて、ランディーネに目で僕は訴えると、ランディーネは何かを感じとったかのように、コクンと頷いて姿を消しました。


「うん……大丈夫だ。一気に魔力を使ったから…疲労感に襲われただけだから」


 僕は彼の話を聞いてから、彼を護っている《火》の結界を解除して僕はルートくんに抱きつきました。


「よかったー……ルートくん、生きてるよぅー……。心配したんだから!」


 僕が涙目でルートくんに抱きついていると、ルートくんはあわあわと慌てながらも僕の頭を撫でたり、僕の背中をポンポンと優しく叩いたりしながら、僕を安心させたいのかこう言いました。


「俺を勝手に殺すな!ちゃんと、生きてるから。……ゴブリンに殺られる程、俺は弱くはねーよ」


 そう言ってから、ルートくんはその後、

「あぁ~、こいつと友人として側にいるなら、もっと強くならないとなぁ~。また、こういう風になられたら困るし……」 なんてブツブツと呟いていながらも、ポケットからハンカチを取り出して、僕の目から流れる涙を丁寧にふいてくれました。


 僕はルートくんが生きていると言うことが確認が出来たので、ルートくんに抱きつくのをやめ、僕は立ち上がり、床に座り込むルートくんに手を差し出します。彼はにこりと笑いながら僕の手を取り立ち上がりました。

 ルートくんが立ち上がった瞬間に、魔法技術体育館に入ってきたのはノートル先生でした。


「……一年五組の皆さんがいないんです。どうしましょう?」


 そうオロオロとしながら僕らに話し掛けてきた、ノートル先生に違和感を覚えました。

 最初は気付かなかったけれど、微かに違う魔力の質の違いが………。


 僕は一つの答えに辿り着きました。

 魔法技術体育館に出ていく前にした普段のノートル先生がしなさそうなあのニヤリとした不気味な笑顔、その笑顔を見た時の僕のしっぽの逆立っているところを見ると……そこまで、逆立つようなほど嫌いな人は一人しかいません。


「学園長、貴女は何をやっているんです? ノートル先生に化けて」


 僕は怒りの感情を表情にあらわにして、僕は学園長にそう言いました。


「……あら? ばれてしまいましたか。この術は一番得意でしたのに……」


 ニヤリと学園長は不気味な笑顔でそう言いました。僕はその笑顔でしっぽが凄い勢いで逆立っています。


「……ノートル先生はそんな不気味な笑顔をしたりなんかしませんから」


 睨み付けながら、僕が言うと観念したかのようにハァと一回ため息をついて学園長は元の姿に戻し、茶化すように彼女はこう言いました。


「そう? 傷ついちゃうな~、お母様」


「…………息子の友達をわざと危険な目に合わせるような母親を『お母様』と呼ぶ息子が何処にいると思っているんです?」


「あら?そうなの~、知らなかったわ~? ノハルに『お母様』って呼ばれなくて、残念だわ♪」


「安心して下さい。貴女をお母様と、一生呼ぶつもりなんてありませんから。

一生、残念がっててください、ルートくんやお父様やお兄様を傷付けるような人とこれ以上、話すつもりなんてありませんから」


「お母様、ノハルに嫌われているようね♪

……大丈夫、私もこれ以上、ノハルと話すことなんてないから♪」


 そう言って学園長は魔法技術体育館から去って行きました。


『《解除》』


 学園長は帰り際、そう言って……。











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