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 ノハルにとっての魔法の認識はこうだ、――魔力を使った時点で、それは魔法ではないかと言う認識であり、本に書かれていることだけが魔法なのではないと考えている。

 つまりは、旧式方法は実験方法としてしか考えられてはおらず、魔力を使って細かい作業が出来ていることを人々は忘れてしまいがちだ。

ノハルの考えでは、旧式方法が発見されたと同時に“魔法”だと認められたのではないかと、ノハルはそう考えているのではないかと思う。

 ノハルが生前の時、旧式方法は研究者にとっては無くてはならない方法であり、その時は神々に魔法とは認められてはいたものの、古代魔法とは認められていなかった。

 しかし、それはノハルの生前の時の常識であり、その時代から何百年も経っている現在では、新式方法が研究者にとってはなくてはならない存在であり、旧式方法の存在は知ってはいても、旧式魔法を使える者や実際に実験に使用する人は少なくなってきていると考えて良いだろう。

 ――旧式方法の稀少価値が高くなってきていると言う理由から、神々は旧式方法を“古代魔法”と認めて、精霊の独特の魔力を構成している何重もの数式を認識出来るようになったのではないかと言うのが、何故「旧式方法は古代魔法」と言うもう一つの仮説を立てたノハルの考えである。


 先程言ったノハルの結論だけでは、ルートは理解が出来なかったのか、首を傾げて考えるような仕草をしていた。

 一方、ヒカリは確信はないようだけれど、ノハルが言いたいことを理解したのか、自信なさげだけれど、ヒカリはこう言った。

『つまりは、旧式方法の稀少価値が上がったから神々から古代魔法と認められ、精度が上がり、精霊の独特の魔力を構成している何重もの数式を認識出来るようになった……と、言う考えで宜しいのでしょうか、お祖父様』

 と、そんなヒカリの言葉に、ご名答!と言いたげに拍手を贈るノハル。

 ちなみにロフトに至っては、ノハルが話す研究内容を考えて、結論を予想することすらも、放棄をしてしまっている。

 そんなことよりだ、流石はノハルが育てただけはある、ヒカリのカリスマ性はノハルよりも劣るとは言え、カリスマ性の高いヒカリである、ノハルの思考と似たような部分があることは否定は出来ない。

 ノハルの息子であるユキメは研究さえ、得意であったのなら、もっと人一倍に勉強をするようになっていたかも知れない。

そしたら、ノハルに並ぶとまでは言えないが、アルファーセル学園をこの世界で一番の学園にすることだって容易く出来てしまっていただろう。

 それほどユキメの記憶力は優れていたのである、――彼は自分自身の中で自己的に限界を決め、本当はもっと高みを目指せることが出来たのに、努力はしつつも新しく何かをチャレンジすることをやめてしまったことで、ユキメは知らず知らずのうちに宝の持ち腐れをしていたのだ。


 それに対してヒカリは、知識を知ることに貪欲で、新しいことに興味をしめすたびに、そのことを貪欲に欲しがった。

 その結果、ヒカリはもっとも、ノハルに近い思考回路を手に入れたと言う訳である。

『うん。大体はあってるよ、ヒカリ。でも、それは「精霊の独特の魔力を構成している数式」についての認識した理由であって、もう一つの仮説があってこその成り立つ仮説なんだ。

仮説は仮説にすぎない、それを証明するのが僕ら研究者の役目であるが、神々が古代魔法と認めたと証明する方法は今のところは思い付かない。

新式方法では「精霊の独特の魔力を構成している数式」すらも見えないと言う仮説は、証明出来るだろうが、神々が古代魔法と認めたと言う仮説の面では想像して、理由の予想をするしかないんだよ。

人々は理由を求めるだろう、きっと精霊の独特の魔力を作り出すことは出来ても公にはしないだろう、――安全第一を考えて。

少なくともロスト父上やアートお兄様はそうしたはずだ、僕の生前を基準に考えているから、今はどうかはわからないけどね』

 と、ノハルは真剣な表情をしてそう言った。

 ノハルは人々が彼のように考えているとは、ノハルは期待はしていない。


 魔法は強い力があればあるほど良い訳ではない、その力をどのように使うかなど、強い力を持った先が重要なのである。

 強い力だと自惚れて、鍛練を怠れば、いつかは魔力は少なくても戦い方を工夫したり、鍛練を頑張っている人にいつかは実戦で負けてしまう。

 そう考えれば、利益や実力を最優先で考える王様なら、理由もわからないまま、公には適当な理由をつけて、「精霊の独特の魔力を作り方」を発表してもおかしくはないだろう。


 話は変わるが、だからノハルは攻撃魔法の研究をしない、ノハルは自分がその魔法の真髄まで辿り着いてしまうことがわかっていたから、未来に強い攻撃魔法を残したくなかった。

 もし、自分ではない誰かが攻撃魔法の真髄を見つけてしまい、悪用されてしまった時のために、攻撃魔法以外の真髄まで近づけようと、幼い頃からずっと研究をし続けた。

 その最中に見つけた、絶対零度魔法と言う新しい魔法、この魔法はノハル以外には使えない。だって、絶対零度魔法は構成がわかっても、攻撃魔法以外の魔法の真髄にもっとも近づけた人じゃないと、使うことは許されないのだから。

 つまりは、ノハルの成果を超えなければ、絶対零度魔法を発動させるなんて不可能。

 ノハルが絶対零度魔法を解析しようとした結果が、攻撃魔法嫌いの研究者、ノハル アルファーセルが唯一残した、彼以外に一度も発動することが不可能だった攻撃魔法と言う認識にされてしまったのだから。

 ノハルは絶対零度魔法については資料をあまり残さなかった、……いや、自らの意志で絶対零度魔法の資料を消し去った、地下の書庫に保管すると言う方法で、選ばれた者しか見せれないようにしたと言う認識の方が正しいだろうか。


 彼はただ、幸せになりたかっただけで、名誉なんていらなかった。――自分の大好きなアルファーセル大陸と言う故郷が、その地に住む人々が幸せになることが彼の幸せだったから。

 ノハルが認めた相手にしか、絶対零度魔法の知識は教えないと、彼は強く決意して、今も自分の近くに保管をしている。

 その場所は、ルートでさえも知ることは許されない、――彼が認めた、前世の記憶を持つ人間にしか知ることが許されないのだ。


 ノハルは考え事をやめて思い出したかのように、ルートに対して満面の笑みで微笑みながら、ノハルはこう言った。

『ああ。ルート、つい説明するのに夢中で忘れていたよ。――おかえりなさい、ルート。一ヶ月って言っていたのに早かったね』

 ノハルはルートに対してそう言うと、ルートは嬉しそうに笑いながら、こう言う。


『ただいま、ノハル』



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