海王は少年の幸せを祈る。
誤字を直しました。
20××年、この時代。あやかしや妖怪がいることを恐れられた時代だったと言われている。
海王町、其の名の通り海の王と言われているあやかしが祀ってあると言われている町の名前である。
そんな海王町は、百年に一度、海王に生け贄を捧げなければならないと言う掟が伝えられている。
この物語は生け贄の定めを持っていた少年、野口のはるの異世界転生(に近い)?してからの幸せな暮らしを満喫する、平凡で平凡な(多分?)何処か非凡な生活を描いた魔法世界物語である!
はじまり、はじまり。
※※※※
初めまして、野口のはると言います。今年で中学一年生です。
このたびは海王町の皆さんを守るために一週間後、海の王と呼ばれる海王様が住んでいると言われている海に身を捧げなければなりません。
「どうしてっ、どうして……。のはる君が海王様の生け贄にされなくては、いけないの………っ!」
近所に住む、唯一海王様の生け贄である僕に優しくしてくれるお姉さんは僕を思い、たくさんの大粒な涙を流し、完璧に施されてるお化粧が流れ落ちてしまうくらいに悲しんでくれています。
そんな近所のお姉さんのことが僕は、何故かはわからないけど苦手でしたし、僕は彼女のことが信じることが出来ませんでした。
そんな近所のお姉さんの泣いている様子を見ていると、僕の目から流れてくるはずの涙が流れてきませんでした。
こんなにも悲しいと思っているのに。
「海王印が僕の体に刻まれていたのが運のつきなのです、……お姉さん。
僕が今、この出来事から逃げてしまえば……、前の子が命で繋いでくれた世界を壊してしまうことになると思います。
だから僕は、この世界を継続するために……、前の子の決意を無駄にしないために、この身を海王様に捧げると決意したのです。
僕の代わりに海王印の本当の意味を貴方達で調べて下さい、これが僕の最後の望みなのです」
僕は彼女にそう言った後、三日自分の体を清めて四日かけて海王様の海へとたどり着きました。
海へと一歩踏み出し、
「ごめんなさい。お祖父さん、お祖母さん……。貴方達と最期に交わした約束を果たせませんでした」
そう言って僕は、一筋だけ涙を流して深く冷たい海へと入って行った。
※※※※※
苦しい、冷たい……。
息が出来ない……そう考えた時に勢い良く海水を飲み込んでしまったせいで、だんだん意識が……。
嗚呼、ボクハシンデシマウノカ………。
そう考えた時、完全に意識がなくなり、……あとは僕の体は海の底へと沈んで行くだけとなった。
※※※※※
「可哀想に…………、こんな過酷な未来から逃げ出せば良かったものの。
酷い仕打ちを受けたと言うのに、町人達を護るために己の命をあやかしに差し出すなど…………。
なんて筋の通った、優しすぎる子なのだ。……そんな子をこの年で人生の幕を閉じさせるなど、わしには出来ない。
……良かった、身体はもう手遅れのようだが、まだ魂は死んではおらぬようだな。……すまないな、優しい子よ。
ここの世界では死んでおる、君はここじゃない別の世界で幸せに暮らすがよい。……今度こそは……」
海王は少年を己の腕の中に包み込み、彼の魂をどこかへ飛ばした。
「次の人生では、少年が幸せで暮らして行けますようにわしは祈っておる」
と、そう言葉にした後、海王は心から少年の幸せを心から祈ったのであった。