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プロローグ・裏

「一人の少年を殺してほしい」


 我輩たちを呼びつけた男が、口を開いた。その内容は、普通の人間が聞けば、ショッキングな内容であろう。だが、我輩も、横に座る男(男であろう、たぶん)も、気にはしなかった。我輩たちは、結局のところ、常人ではない。否、ヒトではないからな。

 男が我輩たちの方に資料を投げ渡した。十歳の子供?

 

「たかが子供一人殺すくらい、君たちでりたまえよ。そんなくだらないことでワガハイの貴重な時間を無駄にしないでくれるかね?」


 横に座る男、否、蜥蜴が答えた。茶色の人間大の蜥蜴だ。何故このような存在がいるのか、長い間自問自答しても、答えは出ない。流石の我輩も諦めた。

 まあ、この意見には我輩も賛同じゃ。誰が好き好んで子供を殺すかよ。


「この少年、己の中に世界すら滅ぼしかねない魔力を内包している。我々が手にかけてもいいが、その魔力が暴発しかねない。我々の実験の成功例になる筈だったのだがね」


 サングラスで目を隠している男が言う。

 この“施設”は、人工的に魔道士を“製造”する施設であった。魔道士を無から生み出すなど、この世界では、出来ない。なので、身寄りのない子供を集めて、その子供たちを実験台として後天的に魔道士を生み出そうとしたのだ。何故、この国――日本――にそんな非道な施設があるのかは知らないがな。


「その時に対処できる存在を探したところ、お二人に辿り着いたのだよ。お願いする。報酬は出来うる限り、期待に添えるようにしよう」


 虫唾が走るな。我輩はこの“施設”を潰そうと思う。この蜥蜴はどう思うかな?


「では、やり方は我輩に任せてもらおう。あと、報酬は前払いで頼む」


「いいでしょう、何ですかな?」


「貴様らの命よ」


 サングラスで隠れているため、上手く表情は読み取れなかったが、おそらく驚愕に彩られていたことだろう。“施設”の職員が、懐に隠し持っていた銃を我輩に向けて撃ったが、貴様らの弾丸如きが、我輩に届くと思うのかのう?

 何故か我輩の体の周囲で止まっている弾丸を見て、呆気にとられているようだが、この程度で驚かれては、困るな。“魔道士”など、我輩の足元にも及ばない存在であることなど、承知で我輩を呼びつけたのであろう?

 少し、遊んでやるか。我輩は友人から教えられた糸を使う技を試してみた。我が友ほどの技術はないので、抵抗しようと思えば、抵抗できるだろうが、目の前に座った自称技術者だったか科学者だったかは抵抗できなかったようだ。

 座っていたソファーから急に立ち上がり、隠し持っていたオートマチック式拳銃で周りの職員を撃ち殺していった。

 最後には、己の所業を後悔したのか、側頭部に銃口を押し当て、引き金をひいた。まあ、ひかせたのは我輩じゃが、な。大輪の赤い花が咲いたが、我輩の興味は、もう、こいつらにはない。


「さて、行くか」


 この少年、どうするかな?


「ワガハイも付き合おう。少年をどうにかしたいのだろう? 貴様の魔術とワガハイの科学力。上手く組み合わせる事が出来れば、百人力よ」


 茶色の蜥蜴が我輩に付き合うなんて言いだしたのには驚いたな。何を考えているのだろうか?


「お前は、どちらかと言えば、こいつらの同類ではないのか?」


 死体の山が出来上がっていたが、この蜥蜴、汚物でも見るかのような目で、死体の山を見下ろしていた。


 

「ワガハイ、科学というのは、より人々を幸福へ導くためのモノだと考えているのよ。人体実験、ワガハイは喜んでするが、年端もいかない子供を人体実験に使うなど、科学者として認めるわけにはいかんな」


 案外、まともなのか?


「どうでもいいが、その一人称、やめてくれんか? キャラがカブる」


 

「貴様にも理由があるようだな。だが、そんな貴様にワガハイ、カッコイイセリフを送ってやろう。『だが断る』」


 断られてしまったのう。残念じゃ。


 屋上へと登り(もちろん、途中で邪魔者は処断したがな)、念話を送り、少年を待つ。我輩らが用意してやれる選択肢は二つ。少なくとも、この世界では何一つ変わることなく生を送ることは出来まい。まあ、ホントはどちらを選んでも少年は生き延びれるが、な。この世界で生きたいと願うなら、全てを失くした状態で生きねばならん。色々と変わって、最後には人格すら変わるじゃろう。後々の面倒までは、流石にみてやれないからな。面倒をみているのが、何人かいるからな。向こうからすれば、私の方が面倒をみているぞ、と言われそうじゃがなあ。 


 




 そして、少年が屋上までやって来た。


 そして、彼は叫んだ。生きたい、恋をしたい、夢を見たい、と。


 彼にいくつかの“枷”をつけて、我輩たちの力をもってして、異世界へと飛ばしてやった。まあ、プレゼントは遠からず彼の手に渡ればいいだろう。ああ、少年のこれからの人生に幸があればいいがな。


「ところで、貴様、別の世界でも出会うと言っていたな。どういう事じゃ?」


 流石の我輩も疑問に思うというものよ。

 

「何を言っている? ワガハイ、宇宙一の科学力を誇るリザード星の科学者よ? クローンの一つや二つ、否、百や二百、軽々と持っているわ。色々な世界、様々な次元、ありとあらゆる時間にワガハイがおるのよ」


 案外、世界から追放すべきはこやつであろうか? アレ、前も追放した気がするが、はて、オリジナルはどいつじゃろう? この世界から追放したところで、どのような世界、どのような次元でも生きていけると言うなら、追放したところで、無駄か。諦めよう。


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