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ぼくが空を仰ぐとき  作者: あざみ
9/11


 よく晴れた日の夜。雲はない。けれど、やっぱり星は見えない。


 学校は大会前の運動部が体育館を使っているらしく、まだ開いていた。だから、足は自然と図書館に向いた。


「あ、藍田君。こっちです」


 小畑さんもやっぱり図書室にいた。


 駆け寄り、体調を伺ってみる。そんなに悪そうには見えない。でも一応、


「大丈夫?」


「大丈夫です。失敗するかもしれないけど、やってみますね」


 渡り廊下に出て、空を見上げる。夏場で日が長いとはいえ、八時になると暗い。


 この空に、星が瞬く。


 ニュースになるだろうか。みんな感動するだろうか。


 小畑さんが、深く息を吸い込んだ。


「いきます」


 息を吐き、人差し指を空に向けた。


「……」


「……」


 星は、見えない。


「……うぅ」


 手を下ろし、今度は両手の手のひらを、空に向ける。


「……あと…………ちょっと……!」


     ぽん


 そんな音がした。ような気がした。


 空に、金平糖が浮かぶ。


 空じゃない。ぼくたちの目の前だった。


「あ、間違えちゃった!」


 すかさず、念のため持ってきていた懐中電灯を鞄から取り出し、それで金平糖を照らす。


「小畑さん、金平糖でいいから!」


「はい!」


 右手の手のひらをそのまま、左手の人差し指で金平糖を指す。


 金平糖が、宙に浮いて、輝いた瞬間だった。


「おい! あれなんだ?」


 渡り廊下の下から、男子生徒の声だった。まずい。誰かが金平糖に気づいた。小畑さんを止めなきゃ。


「小畑さん!」


 声を掛けると、金平糖がぱらぱらと地面に散らばっていった。


 右手を下ろし、左で宙を指差したまま、小畑さんが声を震わせ、言った。


「藍田くん……あれ」


 指差すほうを見る。そこには、空がある。星のない夜空……


 違う。


 星だった。流れ星。ひとつや二つじゃない。何百個という星が、夜空に流れていた。


「すご……あれ、小畑さんが?」


「いえいえ、あんな超上級魔法、使えませんよ!」


 偶然なのだろうか。


 それとも誰か別の……


 そんなことはどうでもいい。


「きれい……」


「本当に……」


 満天の星空。


 想像してたのと少し違う。でも想像よりずっときれいだった。


「藍田……くん」


「ん?」


「私、限界です……」


 小畑さんが、ぼくにもたれかかってきた。


「え?」


 小畑さんの体が熱い……これは


「熱がある!」


 あわてて小畑さんを支えて、学校を飛び出した。


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