表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくが空を仰ぐとき  作者: あざみ
7/11



 早くきたつもりだったのに、小畑さんはもう来ていた。


「早いね」


「えぇ、まぁ。はりきってますから!」


 元気に笑い、鞄からさっき借りた本を取り出した。


「えっと……場所を移動しましょうか。放課後は人が多いですし」


「うん。そうだね」


「こっちです」


 図書室の奥に進む。突き当りの壁を、小畑さんが力いっぱい押した。



 ぎぎぎ



 嫌な音を立てて、壁がへこむ。回転しているようだった。


 ほこりが舞う。その奥に、小さな部屋が見えた。


「ここ……」


「隠し部屋なんです。紫門《しもん》先生に教えてもらって」


「紫門先生?」


「司書の先生です」


 はじめて名前を知った。


「先生も昔、魔法を使おうとしてたみたいで、この本のことを教えてくれたのも先生なんです。私が魔法使えることを知ってるのも先生だけで」


「そうだったんだ」


「じゃあ、人が来る前に、入っちゃってください」


「うん」


 まっくらな部屋に、足を踏み入れた。

 ほこりっぽくて、カビのにおいがする。それなのに、夕焼けを見たときに抱く、懐かしさと似たような感情がわいてきた。


「妙に落ち着くでしょう、ここ」


「そうだね……なんだか、懐かしい」


「でしょう! 私もそうなんです。はじめてきたときに、あ、ここ懐かしいって思って。お気に入りな

んです」


 部屋の中には、小畑さんの私物と思われる、ノートや時計、懐中電灯、ぬいぐるみがあった。


「ドア閉めるので、懐中電灯、つけてもらってもいいですか?」


「うん」


 大きめの懐中電灯をともしたのと同時に、ドアが閉められる。随分薄暗くなる。


「えっと……」


「あ、懐中電灯」


「はい」


 ぼくから懐中電灯を受け取り、小さな机の上で例の本、『簡単魔道書~星~ 下』を開き、真剣に読

み始めた。


 そういえば、手伝いって、何をすればいいんだろう。


「ちょっと見ててくださいね」


「え?」


 ぬいぐるみを真上に放り投げ、両手を上に掲げた。


 ぬいぐるみが、空中に止まる。


 手を下ろすと、ぬいぐるみも一緒におりてきた。


「い、今のは?」


「空中浮遊の魔法なんですが、面白いでしょう」


 そういえば、どうやって魔法を習得しているんだろう。精神統一みたいなものなのだろうか。


 聞いてみたが、やはり精神統一や集中力がどうのと帰ってきたので、


「ぬいぐるみ、かわいいね」


 と、話をそらした。


「これ、入院していたとき、看護婦さんにもらったものなんです」


「入院?」


「高校に入学してか今月まで、入院してたんです。実を言うと、今も保健室登校なんですけど」


 だから放課後図書室に来るのが早いのか。


「大丈夫なの?」


「はい。魔法を勉強してるときは、体も楽だし」


「そっか」


 にっこり微笑んで、また本を読む。


 しばらくその場をうろつき、何分かごとに、懐中電灯の光が強くなっているかを確認した。


 今日は、だめだったようだ。


 閉館ぎりぎりに、隠し部屋から出て、それぞれの家に帰る。


 次の日も、その次の日も、放課後になると、隠し部屋に入って、小畑さんは魔法を習得するために頑

張って、ぼくは邪魔にならないように、そばでそれを見守って――


 少しずつ、懐中電灯の光が、強くなってきたかなというとき、突然小畑さんが図書室に来なくなった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ