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ぼくが空を仰ぐとき  作者: あざみ
5/11



 小畑さんと一緒に、人の増えてきた図書室を後にする。


「すみません、生徒証を」


 分厚い本を読んでいた司書の先生が、メガネを外しながら、ぼくと小畑さんの生徒証を取り出してくれた。


「これ、借ります」


「貸し出しね。ちょっとまって」


 パソコンで、本に付いたバーコードを読み取る。横においてあった印刷機が唸り、伝票を吐き出した。


 慣れた手つきで伝票を切り取り、片方を本に挟んだ。


「返却は二週間後ね」


「はい」


「藍田君は、本は借りないの?」


「あ、はい。ちょっと今日は……」


「そう、また来てね」


 きたときと同じように、会釈をして図書室を出た。


 出ると、そこには君島がいた。


「お、藍田」


「あぁ、君島」


「図書室は? もう用事すんだ?」


「うん」


「じゃあ教室に……あれ? 知り合い?」


「えー……うん。まあ」


「なるほど、そういうことか」


 君島がどんな想像をしているか、聞かなくてもわかる。


「言っとくけど、小畑さんとは付き合ってるとかそういうのじゃないぞ。ね、小畑さん」


「はい!」


「そんなかわいい女の子と並んで歩いて、よく言うよ」


「私が本を取れなくて、藍田くんに助けてもらっただけなんです」


 ぼくに向き直り、小畑さんがお辞儀をした。


「藍田くん、本当にありがとうございました。それじゃあ」


「うん、ばいばい」


 本を抱え、早足で渡り廊下を進んでいく小畑さんを見送り、姿が見えなくなってから歩き出した。


「藍田」


「なに」


「正直に言え。おれにだけは、本当のことを」


 あきれて、思わず笑ってしまった。


「笑うな!」


「本当のことも何も、本当にただ本を取ってあげただけなんだよ」


 不服そうな君島を置いて、渡り廊下を走った。




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